▼奥多摩・大岳山と御岳山の神さま
【本文】
奥多摩・大岳山の山の形は神官がかぶる冠のに似た特殊な形をし
ていて、遠くからでもひときわよく目立ちます。
明治時代の本、『武蔵通誌』(河田羆(かわだ・たけし:1842〜1920)
が1894〜1895(明治27〜28)年ごろに著した、巻20からなる私撰地
誌)の巻2「山岳編」に、「両総地方(千葉県)ニテ武蔵ノ鍋冠山ト
称シ、海路ノ目標トナス」とあります(『角川日本地名大辞典・東
京』)。
かつては遠く、東京湾で働く漁船のあて(目印)になっていたと
いいます。これは相模湾での相州(丹沢)大山と同じ役割を果たし
ていたんですね。
大岳山は、奈良金峰山と大峰山の関係と同じようにかつては御岳
山とは一対の山。御岳山の奧のもうひとつの霊山で直下に大岳神社
があります。
この神社は御岳神社とともに、747(天平19)年に行基が吉野金
峰山の蔵王権現をまつり、吉野の霊場のコピーをつくったのだそう
です。
中世以降、修験道が盛んになり御岳神社は、御岳蔵王権現、武州
金峰山などと呼ばれ、山岳信仰・修験道の道場になっていきました。
御岳神社のお使いは狼で、両神山の両神神社、三峰神社と同じよう
に大岳神社にも狼の狛犬が建っています。
しかし、安土桃山時代、御岳神社と大岳神社の同一信仰体はくず
れてしまったのだそうです。そのため、いまでは別々に蔵王権現(役
ノ行者が奈良金峰山で感得した菩薩)をまつっています。
修験道といえば天狗ばなしがつきもの。馬頭刈尾根つづら岩の南
には天狗の滝があり、また御岳神社奥の院には天狗をまつる祠、天
狗腰掛杉、天狗岩など事欠きません。
▼大岳山【データ】
【所在地】
・東京都奥多摩町と西多摩郡檜原村大字大岳との境。青梅線御獄駅
の南西6キロ。JR青梅線御獄駅からバス、滝本からケーブル、御
岳山駅から歩いて2時間15分で大岳山。二等三角点(高1266.5m)
がある。直下に大岳神社がある。地形図に山名と三角点の標高のみ
記載。三角点より東方向直線約200mに大岳神社がある。
【位置】
・二等三角点:北緯35度45分54.87秒、東経139度07分49.5秒
・点名:大岳
【地図】
・2万5千分の1地形図:「奥多摩湖(東京)」or「武蔵御岳(東京)」
(2図葉名と重なる)
▼【参考】
・『奥多摩風土記』大館勇吉著(武蔵野郷土史研究会)1975年(昭
和50)
・『角川日本地名大辞典13・東京都』北原進(角川書店)1978年(昭
和53年)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『武蔵通誌』(『武蔵通志』とも):河田羆(かわだ・たけし:18
42〜1920)が1894〜1895(明治27〜28)年頃に著した、巻20からなる
私撰地誌。
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