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【新・ふるさとの神々事典】(02)
【とよだ 時】

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▼仙人万人変神日本武尊

【説明略文】
日本武尊も仙人だそうです。「記紀」にも記載、『本朝
神仙伝』では日本の37仙のトップに選出。武尊が東征の
際、立ち寄った山は多い。奥秩父の雁坂峠で道に迷って
いたところ、白いオオカミが三峰神社まで案内してくれ
たという。そこでオオカミは「お犬さま」とあがめられ、
秩父周辺ではオオカミの狛犬がまつられています。

(御用とお急ぎでない方は【本文】もどうぞ)。

▼仙人万人変神日本武尊

【説明本文】
 日本武尊(やまとたけるのみこと)も神としてまつら
れています。『日本書紀』や『古事記』に、また『風土
記』(とくに『常陸国風土記』に詳しい)などに伝承さ
れる仙人です。日本の37人の仙人を選び出している平安
後期の本『本朝神仙伝』ではトップに選び出されていま
す。


 日本武尊が、第12代天皇とされている父の景行天皇(け
いこう)の命で、西方の賊の平定を果たして帰国すると、
こんどは東方「十二の国」の荒ぶる神や従わぬ地方の王
族の征討(蝦夷東征)を命じられます。「十二の国」と
は、伊勢、尾張、参河、遠江、駿河、甲斐、伊豆、相模、
武蔵、総(安房・上総・下総)、常陸、陸奥をいうのだそ
うです。


 まず伊勢神宮に参拝した日本武尊は、早速蝦夷東征に
出発するのでした。この東征で日本武尊が立ち寄った山
は多い。奥秩父の雁坂峠で道に迷っていたところに白い
オオカミがあらわれ、いまの三峰神社の場所まで案内し
てくれたという。このことにちなみ、オオカミは神の眷
属として「お犬さま」とあがめられ、秩父周辺ではオオ
カミの狛犬がまつられています。


 各地で活躍した武尊一行は、相模の国(神奈川県)に
入り、丹沢大山に行こうとしますが、山中で途中で飲み
水がなくなり、兵士たちもすっかり弱ってしまいます。
そこで武尊はそばにあった岩を踏みつけました。すると
岩についた足跡から水がわき出て、一行は助かったとい
う。その足跡が丹沢表尾根、二ノ塔南ろくにいまでも残
っています。このようにして、相模国から浦賀水道を渡
り、房総半島の鹿野山めざして北上します。


 房総の鹿野山にはこんな話が伝わっています。昔、房
総の高殿に住んでいた国王の阿久留王は、巨人ダイダラ
ボウを国神とし、平和に暮らしていました。ある時、相
武(さがむ)の国から逃れてきた国造が、「大和がわが
国を襲った。強大な大和国は、まつろわぬ国々を次々と
国を奪い人々を殺している」といいました。「なぜ安ら
かな国々を侵すのか」。「わからぬ…」。やがて大和武尊
の軍船が上総へ上陸し、家々を焼きながら進んできます。


 阿久留王たちは必死に抵抗しましたが、強大な大和の
軍勢は執ように攻め続け、とうとう鹿野山の国王一族を
討ち取り、ついにこの国も治めてしまったということで
す。その時の残虐さはいまでも伝説として残り、討たれ
た王は鬼とされて鹿野山周辺に伝えられています。文字
通り「勝てば官軍」なのですね。


 日本武尊の軍隊は、さらに茨城県筑波山から秩父両神
山を経て上州武尊山(2518m)に向かいます。この山で
も武尊の伝説は展開します。この山頂、沖武尊近くの川
場武尊や前武尊にも日本武尊の像があります。上州武尊
山を含んだ群馬県利根郡には16もの武尊神社があり、す
べて日本武尊を祭神としています。


 昔、武尊山に悪者がはびこり、村人を困らせているこ
とを聞いた日本武尊が討伐に出向きます。形勢不利とみ
た悪者の首領夫人は土出に逃げようと、山麓片品村の花
咲集落に下りましたがそこで息絶えます。その首領夫人
の霊魂により石に花が咲いたと伝える「花咲石明神」が、
いまでも花咲集落中心部にあります。


 また、武尊沢にある裏見ノ滝は「怨みノ滝」の意味で、
尊がこの山に陣を敷いたとき、妻が産気づき、看護の甲
斐なく母子ともに亡くなってしまいました。尊は悲しみ、
裏見ノ滝で身を清めようとしたところ、滝の音が急に大
きくなり妖気がただよいだしたという。これは妻の怨み
のあらわれとみた尊はよりあつくとむらったと伝えてい
ます。


 こうして東北まで平定し、尾張にもどった武尊は、近
江の伊吹山に悪神がいると聞き、草薙剣(くさなぎのつ
るぎ)を美夜受比売(みやずひめ)にあずけ、素手で立
ち向かいました。しかし、たちまち山の神の化身である
大蛇の妖気当たり(伊吹山の神の降らす氷雨に惑わされ
たとの説も)、意識を失ってしまいました。


 居寤清泉(いさめのしみず)(醒ヶ井)でいったん回
復したのち、たぎ野、杖衝坂と、杖を突きながら進むに
つれ疲労は増して、三重に着いたときは足が「三重」に
折れるような状態だったという。そして能褒野(のぼの)
(鈴鹿市)に着き、大和の国をしのんで「思国歌(くに
しのびうた)」を詠んで息絶えたと伝えています。


 その後白鳥になって奈良を目指して飛び去ったとい
う。伊吹山頂には、ユニークな四等身くらいの日本武尊
の石像がまつられています。


 この白鳥が遠く千葉県の鹿野山に飛んできたという伝
説もあり、鹿野山の一峰・白鳥峰肩には日本武尊をまつ
る白鳥神社があり、境内に浦賀水道で入水した弟橘姫(お
とたちばなひめ)の祠もあります。


 そのほか日本武尊にちなんだ山々は思いついただけで
も、自分の妻が恋しくなって「吾妻よ」といったことに
由来するとの説もある東北吾妻山、群馬県と長野県境の
四阿山、茨城県加波山、筑波山から八日間かけて到着し
たとされる両神山、秩父の宝登山、武尊が武具・甲(か
ぶと)をまつったとされる武甲山、塔ノ岳、富士山、恵
那山神坂峠、奥多摩御岳山など数知れず。また各地に日
本武尊をまつる神社が散在するのはご存じのとおりで
す。



▼【参考文献】
・『古事記』:新潮日本古典集成・27『古事記』校注・
西宮一民(新潮社版)2005年(平成17)
・『仙人の研究』知切光歳著(大陸書房)1989年(昭和
64・平成1)
・『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(平凡社)19
92年(平成4)
・『日本大百科全書23』(小学館)1989年(平成1):(p
270・日本武尊)
・『日本伝奇伝説大事典』編者・乾勝己ほか(角川書店)
1990年(平成2)
・『日本書紀』:岩波文庫『日本書紀(二)』校注・坂本
太郎ほか(岩波書店)1996年(平成8)
・『日本伝説大系4・北関東』渡邊昭五ほか(みずうみ
書房)1986年(昭和61)
・『日本伝説大系・5」(南関東)宮田登ほか(みずう
み書房)1986年(昭和61)
・『本朝神仙伝』大江匡房著(日本古典全書・古本説話
集 川口久雄・校注)(朝日新聞社)1971年(昭和46)


▼CDブック新・ふるさとの神々事典から引用しました。
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・店頭にない時は店員の方にご注文を。
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