▼山のまん画ばなし【本文】のページ09
 【とよだ 時】

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北ア白馬岳三国境・高山植物と地蔵さん

【略文】
白馬岳近くの三国境で、ウルップソウにカメラを向けている人がいます。私
の声に突然ふりむいて「聞いたことのある声だと思ったら。こんなところで
あうなんて」。な、なんと丹沢の尊仏山荘のスタッフの方でした。こんな奇
遇なこともあるんですねえ。
・長野県白馬村と新潟県糸魚川市・富山県朝日町との境

※ご用とお急ぎでない方は、下方の【本文】もどうぞ。

【本文】

 白馬岳といえば北アルプス一の高山植物の宝庫。シナノキンバイ、チング
ルマ、コマクサ、ウサギギクなど数えきれない程の植物の花がお花畑をつく
ります。また白馬岳(苗代掻き馬がもと)の名は、春に馬の形をした雪解け
の模様(雪形)が出るところからつけられたといいます。


 その雪形が出るところが長野県と富山県、新潟県の県境になる三国境とい
う鞍部の下。三国境は、信濃、越後、越中の旧国境になっています。北側からは
朝日岳や蓮華温泉からのザク道と、白馬大池から小蓮華山経由の道を合わせ、舟
窪(二重山稜)も見られ白馬岳へはもう一歩という所です。


 こんな人里遠く離れた山中の三国境から石仏が発掘された記録があります。昭
和10(1935)年の7月、長野県北城村(いまの白馬村)切久保地区の登山案内人
福島忠雄(27歳)が、東京の山草クラブの学生に三国境で小休止。足元に咲いて
いるシコタンソウなどの高山植物の説明をしていると、瓦礫の中にボールのような丸
い石を見つけました。ピッケルで掘ってみると地蔵の座像が出てきました。この石仏
発見の現場に地元新聞社の記者が通りかかりました。


 …【白馬山頂発】 北アルプス白馬頂上付近から、端もなく二十八日、世にも珍し
い仏像が発見され、アルピニストの目を丸くさせている。…東北に聳える大日岳(小
蓮華山)に因縁のあるものと思われ、…(小蓮華山の初代の仏像は行方不明)…こ
れから見て、掘り出された仏像は正しく源長寺洞光和尚の刻んだ天正年間作のも
のに間違いないと見られる…。これは昭和10(1935)年7月31日付「信濃毎日新聞」の
記事です。


 石仏の大きさは40センチくらいで水成岩造り。銘など刻んだあとは見つからず、
結局いつ誰が彫ったのか分からなかったという。調査の結果、小蓮華山の像は大
日如来であり、手の形、印相も違い小蓮華山の石仏とは関係がなさそうです。


 地蔵はガイドが、そのまま自然岩で台座をつくり現地に安置したという。戦後にな
り石仏盗難が相次ぐため、関係者が協議の結果、発見者のガイドの家で供養する
ことになり、石仏を麓にかつぎおろしました。


 しかし家に置いてはみたものの、個人ではとても管理しきれるものではありせん。
そこで出身校の北城小学校へ預け、供養を頼んだという。数年後の昭和38
(1963)年、台風で松川が氾濫し小学校も被害を受け、仏像は泥の中に埋まって
しまいました。


 見かねた地元山岳史研究家が白馬村役場の床の間に安置しておきましたが、
いつのころか行方不明になり、いまは誰も知らないと、氏自身の著書の中で書いて
いるそうです(『北アルプス白馬連峰』)。


 ある年の夏、東麓の小谷村、山ノ神尾根から登り出しました。暑いなか、
湿地の尾根道をただひたすら歩き、途中で雨が降り出し天狗原の一角のあぜ
道のようなところで一泊。翌日は白馬大池から白馬岳を目指しました。大勢
の人が通りすがります。


 まわりの高山植物の花をひとつひとつ愛でながらの山岳漫歩を楽しみまし
た。白馬岳近くの三国境、石仏が見つかったのはこのあたりか、雪形が出る
のはこの下あたりか。ウルップソウがきれいだなあ。すると花にカメラを向
けていた人が突然私の話し声を聞いてふりむきました。


 「聞いたことのある声だと思ったら。こんなところで会うなんて」。なん
と、丹沢の尊仏山荘で漫画展を開いた時お世話になったOさんではありませ
んか。いや〜こんなこともあるんですねえ。聞けば今回は高山植物の花を撮
るため山小屋泊まりでのゆっくり山行という。うらやましい。石仏のことな
どほったらかしでしばらく話が弾んだのでありました。いまでは遠〜い昔の
思い出です



▼三国境【データ】
【所在地】
・長野県北安曇郡白馬村と新潟県糸魚川市・富山県下新川郡朝日町との境。
JR大糸線白馬駅からバス・猿倉から大雪渓経由6時間45分で三国境(本当
の三国境は登山道より二重山稜の船窪地形を越えて80m東に離れている)。
写真測量による標高点(2751m)。

【位置】
・三国境:北緯36度45分58.18秒、東経137度45分44.8秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「白馬岳(富山)」

【山行】某年7月29日(水曜日・晴れ)
ビンボー山行の私は青春18切符愛好者。山小屋にも泊まれずテント山行です。


▼【出典】
・『信州山岳百科1』(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・『北アルプス白馬連峰 その歴史と民俗』長沢武(郷土出版社)1986年(昭
和61)。
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

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