▼山の軽口ばなし
本文のページ(09)
【とよだ時】(豊田時男
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奥多摩雲取山

【説明簡略文】
雲取山は東京都の山の中では最高峰。
江戸幕府編纂の地誌『新編武蔵風土記
稿』という古書にも「ただ雲をも手に
取るばかりの山なればとてかく号せ
り」と書かれています。雲取ヶ岳とか
雲採山との異名もあるそうです。また
小暮理太郎もその著書「山の憶い出」
の中で「平地に波瀾を起こした幾多の
小山脈が…」と綴っています。

★お急ぎでない方は下記本文もご覧下さい。

奥多摩雲取山

【説明本文】
 東京都の最高峰の雲取山(2017m)
は、奥秩父にも奥多摩にも属す東京都
・埼玉県・山梨県境の山。ここは東京
都の水源涵養林で、巡視路をかねてい
るせいかよく整備されており、展望も
よく四季を通して登山者に人気があり
ます。首都圏の山好き人なら一度は登
ったことがあるはずです。

 この山には古い時代から人が入って
いたらしく、山頂付近で縄文時代中期
の打製石斧が発見されているそうで
す。山岳修験道が盛んだったころは、
いまの埼玉県側の妙法ヶ岳と白岩山、
それに雲取山の三峰駆けをする山伏に
よって登られていました。

 この三山が三峰山で、三峰駆けの奥
社となるのは雲取山だったといいま
す。いまは妙法ヶ岳を奥社とする三峰
神社に観光客や参詣者が訪れていま
す。

 ここを雲取山というのは、このあた
りで最も高い山なので雲に隠れやすい
ためとか、サルオガセ(針葉樹などの
枝から糸状に垂れ下がっている植物。
きつねのもとゆいともいう)などのつ
いた幽幻な森林があるからなどの説が
あります。


 また、江戸時代後期の文政11(1810)
年江戸幕府が編纂した地誌『新編武蔵
国風土記稿』には「ただ雲をも手に取
るばかりの山なればとてかく号せり」
とあり、やはり高さを強調した山名。

 明治中期に河田羆(たけし)が著し
た『武蔵通誌』(山岳編)には大雲取
山の名が出てきます(『山の憶い出』)。
これは和歌山県熊野の大雲取山からと
った名前だとの説もあります。その他
雲取ヶ岳・雲採山などの名があるとい
います。

 「平地に波瀾を起こした幾多の小山
脈が、彼方からも此方からもアミーバ
ーの偽足のようにからみ合って、いつ
となく五、六本の太い脈に総合され、
それがさらに統一されてここに初めて
二千メートル以上の高峰となったもの
が雲取山である。(→)

 (→)甲信武甲の国境を東走してき
た秩父山脈は、どの道この辺でこの位
な高度の山を掉尾(とうび)にふるい
起こして、武蔵野に君臨せしめねばな
らないはずだ」と、小暮理太郎は「山
の憶い出」(秩父の奥山・雲取山)の
なかで述べています。なんとも気持ち
のいい文章です。


 山頂には一等三角点のほか、1882年
(明治15)に内務省地理局が設けた「原
三角測點」の標石もあります。雲取山
頂から雲取山荘方面に下ると田部重治
(「山と渓谷」などの著書)と、雲取
山荘の主人だった富田治三郎の顕彰碑
もあります。

 雲取山荘は1928年(昭和3)、武州
雲取小屋の名で建てられたもの。それ
をきっかけに雲取山への登山者は一段
と多くなったということです。

 ある年の3月、避難小屋手前の雪の
急斜面は登るのがきつい。息を切らし
て山頂へ登りきります。快晴の雲取山
頂は平日とあって人影もありません。
日光が雪に反射してまぶしくサングラ
スをはずせません。

 方向指示板を撫でながら広がる山々
を確認します。富士山が大きい。時々
起こるつむじ風に雪煙が舞い上がりま
す。用もないのに避難小屋を開けて中
をのぞき見します。さすがに掃除が行
き届いていてゴミひとつ落ちていませ
ん。

 すぐ下のトイレに寄りました。冬季
は凍結するため「小」のみ使用可。そ
の他はこの下方にある奥多摩小屋のも
のを使うようにとあります(※当時)。

 「ご用」のある人は大変だ。雪のな
かをこけつ転びつしながら、4、50
分も駆け下りて行く気の毒な姿を想像
しました。(そういえばずいぶんご無
沙汰しちゃったなあ)。


▼雲取山【データ】
★【所在地】
・東京都奥多摩町と埼玉県秩父市、山
梨県丹波山村との境。一等三角点(20
17m)と原三角測点と、避難小屋、ト
イレがある。

★【位置】国土地理院「電子国土ポー
タルWebシステム」から検索
・三角点:北緯35度51分19.86秒、東
経138度56分37.94秒

★【地図】
2万5千分の1地形図「雲取山(甲府)」

★【山行】
・某年3月7日(金曜日・快晴)

▼【参考】
・『角川日本地名大辞典13・東京都』
北原進(角川書店)1978年(昭和53年)
・『山名の不思議』谷有二(平凡社)2
003年(平成15)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカ
ニシヤ出版)2005年(平成17)
・『新編武蔵風土記稿』:大日本地誌大
系1「新編武蔵風土記稿」蘆田伊人編
(雄山閣)1963年(昭和38)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫
(竹書房)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三
省堂)2004年(平成4)
・『日本歴史地名大系19・山梨県の地
名』(平凡社)1995年(平成7)
・『日本歴史地名大系13・東京都の地
名』(平凡社)2002年(平成14)
・『武蔵通志』河田羆(たけし)1894-
1895年頃:「山岳」第11年1号(大正
5年(1916)10月刊)採録。
・『山の憶い出』小暮理太郎:「日本山
岳名著全集2」(あかね書房)1962年
(昭和37)(所収)



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