▼山の軽口ばなし
本文のページ(09)
【とよだ時】(豊田時男)
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▼奥秩父・金峰山の山男
【説明略文】
その昔金峰山に人間の3倍もの大きさの山男
がいたといいます。江戸時代の紀行本『遠山
奇談』に、ある時盗賊たちがこの山に隠れ住
んでいたが山男にさらわれたというのです。
残った3人が麓に逃げてきてつかまったこと
もあり、この山に登るのはやめたと載ってい
ます。
・山梨県甲府市と長野県川上村との境。
★詳細は本文をご覧下さい。
▼奥秩父・金峰山の山男
【説明本文】
奥秩父の山梨県と長野県境にある金峰山
(きんぷさん・標高2599m)。その頂上には
五丈岩と呼ばれる大岩があります。この岩は
高さが18mもあり、遠くからでもよく目立ち
ます。
その形がいかにも大黒さまに似ているとい
うので、かつては御像石とも呼ばれていたそ
うです。金峰山は昔の農耕の神(雨乞い)の
山として、ふもとの村人の信仰が厚かったと
いいます。
戦国時代には金峰山参りをするために大勢
の村人が訪れ、北側の長野県南佐久郡川上村
川端下(かわはけ)集落にはお寺がたくさん
あったといいます。
その山に、大きな山男が出るという伝説が
あります。江戸時代の紀行本『遠山奇談』(と
おやまきだん・華誘居士著)に、「金峰山に
は山夫(やまおとこ)というものがいるとい
われる。山夫は人間の3倍もの大きさがあり、
乱れ髪が腰までのびている。…(→)
…(→)若いのは髪の毛が赤黒く、白けて
艶がないのは歳のとったものらしい。木の葉
をつなげて身にまとい、体中が毛だらけで恐
ろしい。時々小動物を捕まえて喰うらしい。
人を見るとこだまのような声で呼ぶという。
おゝいと一声呼ぶ時は大丈夫だが、おゝい、
おゝいと二声三声せわしく呼ぶ時は人をさら
いに来るので杣人もあわてて山から逃げ下る
という。…(→)
…(→)ある時他国から盗賊たちが逃げて
きて金峰山中に隠れてすんでいたが、せわし
く呼ぶ山夫に2人がつかまって連れて行かれ
た。残った3人が肝を冷やし逃げてきたので
杣人がみんなで盗賊を囲んで取り押さえた。
盗賊は役人に引き渡されそのまま江戸へ送ら
れたという」。…(→)
…(→)そんなこともあった山だから(金
峰山に行こうと思っていたが)「必此山へは
行べからずと、おしとゞめける故、やめけり」
とあります。昔は山には得体の知れない何か
がいたのでしょうか。
皆さんはどう思いますか。ちなみに「遠山
奇談」は、京都の天明8年(1788)の大火で
炎上した東本願寺の再建のため、浜松の齢松
寺の僧侶が遠山に材木を探し求め伐り出した
時、いろいろな不思議なことにあったことを
記したもの(浄林坊辨惠著)だそうです。
▼金峰山【データ】
【所在地】
・山梨県甲府市と長野県南佐久郡川上村との
境。JR中央本線韮崎駅の北東24キロ。JR小
海線信濃川上駅からバス終点川端下下車、4
時間30分で金峰山(きんぷさん)。五丈岩と
三等三角点(2595.03m)と標高点(2599m)、
金桜神社の山宮(本宮)跡がある。
【位置】国土地理院「電子国土ポータルWeb
・三角点:北緯35度52分17.4092秒、東経138
度37分31.1284秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「金峰山(甲府)」or
「瑞牆山(甲府)」(2図葉名と重なる)
▼【参考】
・『遠山奇談」後篇「巻之三」第十九章
金峰
山やま男の事:「日本庶民生活史料集成・第1
6巻」編集委員代表・谷川健一(三一書房)1
989年(平成元):「奇談・奇聞」遠山奇談・
華誘居士著
・『日本歴史地名大系20・長野県の地名」(平
凡社)1979年(昭和54)
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