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山旅通信【画っ展】(05)
【とよだ 時】

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▼976号「化け猫生息地・北アルプス毛勝三山猫又山」

【短略説明】
北アルプス剱岳の裏から見る絶景ポイント赤谷山。そのすぐ北西に
猫又山という山があります。黒部川の西、富山側に位置する毛勝三
山のひとつ。その西面の猫又谷には人を襲う野生の猫がいるとおそ
れられ、猫又谷の名がつけられました。猫又山の名はその谷の名か
らきています。
・富山県魚津市、黒部市、上市町にまたがる。

▼976号「化け猫生息地・北アルプス毛勝三山猫又山」

【説明本文】
 ♪釼見るなら赤谷(あかだん)尾根でよ、大窓小窓にね、三ノ窓、
ヨカネ…という歌があります(飯田忠純詩、「剱の歌」2番、ダン
チョネ節替え歌)。北アルプスの雄峰剱岳の裏剱絶景ポイントにあ
る赤谷山の歌です。そのすぐ北西に猫又山(2378m)という山が
あります。

 この山は黒部川の西、富山側に位置し毛勝三山のひとつ。この山
には赤谷山への登山道ができた後、1998(平成10)年、ブナクラ
峠から猫又山山頂へも行ける道ができて、やっと多くの登山者を迎
えられるようになったところ。いまでも登山道としてはっきりしな
い所が多い。

 この山の名は西面の魚津方面に流れる片貝川南又谷の支谷「猫又
谷」からきたものといいます。ところでこれとは別にもうひとつ、
黒部川の東側、白馬岳の西にも同じ名前の猫又山(2308m)があ
り、西方黒部川に流れるこれも同じ猫又谷があるのでなんともやや
こしい。

 しかし、今回は黒部川西方、剱岳北方にある猫又山(2378m)
の話です。剱岳北方の猫又山(2378m)は、昔は「ブナクラ岳」
といい、船倉ヶ岳とか船峅ヶ嶽、掬倉ヶ岳(手偏)、椈倉ヶ岳(木
偏)などと書かれたという。だがいまはその名前で呼ぶ人はなく、
この山の南側の鞍部のブナクラ峠、また馬場島方面から峠へ突き上
げるブナクラ谷の名に残っているだけだそうです。

 剱岳北方の猫又山山頂からは黒部川の谷間の向こうに後立山連峰
が広がり、また剱岳北面の荒々しい様子はまさに「剱の歌」どおり
です。猫又とは猫の妖怪のことをいい、長年生きた猫は人を襲うよ
うな怪猫になり、尻尾に先が二又に裂けているという。

 片貝川の奧の谷(猫又谷)には怪猫が出没し、恐れられていたら
しい。一説にこの谷が西股と東股にはっきり分かれているのでつい
た名だともいいます。谷を尻尾と見なして二又に分かれているため
なのだそうです。

 さて、猫による猫又伝説は昔からあるらしく、鎌倉時代藤原定家
の『明月記』という本に、一晩に人間を7、8人食い殺したという
話や、江戸時代の随筆集『耳嚢』(みみぶくろ)のには、ものをい
う猫の話もでてきます。この猫は鳩を捕らえ損ねて「残念」と叫ん
だ。

 それを寺の和尚が耳ざとく聞きつけてなじると「10年も生きて
いればどの猫も口をきくし、14、5年もすれば神変不思議を現ずる
ことができる」と答えたという。また江戸時代貞享2年(1685)の
『新著聞集』(しんちょもんじゅう)には、紀伊国熊野の山中でワ
ナにかかった山猫(猫股)はイノシシくらいの大きさであったとい
うのです。

 ここに『続 日本の地名』谷川健一著(岩波新書)があります。
それにはこの猫又山の猫又の話が出てきます。引用させて戴くと、
「…魚津市の猫又谷は猫又山(2378m)の西側の谷で、片貝川の
上流にあたるが、その付近は昔から人を襲う野生の猫がいるとおそ
れられ、猫又谷の名がつけられたという。

 魚津の山奥で大猫におそわれた体験をもつ人は、戦後になっても
あとを絶たず、あるときは山中の杉の枝にひそむ大猫が飛びかかっ
てきて、格闘の末殺したこともあるという。…富山県の猫又山は、
単なる伝承ではなく、実在の大猫がいて、人をしばしば襲うことが
あったからつけられた地名である。」というのです。

 戦後になってもあとを絶たないといえば、地元の人の中にはまだ
存命の人もいるのではないか。そんなことが気になり、現地を訪れ、
村人に野生の大猫について話を聞いたこともあったようです。しか
しみんな一様にそんな話は初耳だとのこと。この話の出所はと『続
日本の地名』を読み返してみたのですが残念ながら記載されてい
ませんでした。



▼毛勝三山・猫又山【データ】
【所在地】
・富山県魚津市、黒部市宇奈月町旧地区(旧下新川郡宇奈月町)、
上市町にまたがる。富山地方電鉄上市駅からタクシーで馬場島、1
時間でブナクラ谷取水堰堤、さらに戸倉谷出合いからブナクラ峠を
経て5時間30分で猫又山(標高点2378.2m・三等三角点名猫又)
【位置】
・三角点:北緯36度40分53.22秒、東経137度35分25.43秒)
【地図】
・2万5千分図:「毛勝山(けかちやま)」



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典16・富山県』坂井誠一ほか編(角川書店)
1979年(昭和54)
・『山頂渉猟』南川金一著(白山書房)2003年(平成15)
・『新著聞集』(しんちょもんじゅう)(神谷養勇軒著):『日本随筆
大成第二期第5巻』日本随筆大成編輯部編(吉川弘文館)1994年(平
成6)所収)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『徒然草』:新日本古典文学大系39『方丈記・徒然草』佐竹昭広
ほか校注(岩波書店)1989年(昭和64・平成1)
・『富山県山名録』橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本伝奇伝説大事典』乾克己ほか編(角川書店)1990年(平成
2)
・『続 日本の地名』(動物地名をたずねて)谷川健一著(岩波新書)
2000年(平成12)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎編(東京堂出版)1984年(昭和59)
・『日本未確認生物事典』笹間良彦著(柏美術出版)1994年(平成
6)
・『日本歴史地名大系16・富山県の地名』(平凡社)1994年(平成
6)
・『耳嚢』(みみぶくろ・耳袋とも)(根岸鎮衛(やすもり)著)1814
年(文化11)『日本庶民生活史料集成16』鈴木棠三ほか編(三一書
房)1989年(昭和64・平成1)



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