▼山の軽口ばなし
本文のページ(05)
【とよだ時】(豊田時男
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富士山頂の火口はふたつある?

【説明略文】
平安時代の文書である「富士山記」には、「富
士山頂上の火口には神池がある」としながら、
また「煙火」が見えるとあり、矛盾したこと
が書かれています。これは火口がふたつある
ことを示しているという。それは古い水の貯
まった小内院と、新しい噴煙をあげる大内院。
この神池が「このしろ池」だという説もあり
ます。
・山梨県と静岡県の境。


★詳細は本文をご覧下さい。

【説明本文】

 日本で最初の富士山に関する文書は、平安
時代、漢詩人で文章博士の都良香が書いた「富
士山記」。それによると、「頂上に平地あり。
広さ一里許(ばかり)なり。其の頂の中央は
窪み下りて状甑(こしき)の如し。甑の中に
神池あり、池の中に大石あり、石体甚だ奇に
して宛も虎の蹲(うずく)まれるが如し。亦
其の甑の中には常に蒸し出づる気あり。其の
色純青なり。其の甑の底をのぞけば湯の沸き
のぼるが如く、其の遠くより之を望めば常に
煙火を見る」とあります。

 このように富士山頂上の火口には神の池が
あるとしながら、また煙火が見えると、矛盾
したことが書かれています。当時富士山には
火口がふたつあったのではないかといので
す。ひとつは大内院で、私たちにもおなじみ
のもの。

 もうひとつはその北北西の西安河原にある
小内院。いまは砂礫に埋もれてしまい窪地に
なっています。この小内院の外側を回るのを
外輪コース、内側を回るのを内輪コースと呼
んでいます。「富士山記」の記述で、古い火
口に水が貯まっていて、もう一方が噴煙をあ
げていたのなら記述に矛盾はありません。


 このほかに水の貯まっていた神池がいまで
いう「このしろ池」のことだという説がある
のです。「このしろ池」は大内院を隔てた南
向こう側・浅間神社奥社と三島岳の間にある
広場。ここは雪溶けの水がたまってできる池。
なぜか海の魚・コノシロがすむといわれ、古
い書物や伝説などにたびたび出てきます。

 しかし毎年7月上旬すぎには水は涸れてし
まいとても魚がすめる状態ではありません。
江戸時代の『駿河国新風土記』にもその広さ
7、8間で、「時ニヨリテ水ノアルコトモア
リ。又ナキコトモアリテ、魚ナドノ住ムベキ
処ニアラズ」と断ってあります。


▼富士山頂【データ】
【山名・異名】
・富士山(ふじさん・ふじやま)、不尽、不
二、布士、富慈、芙蓉峰(ふようほう)、富
岳などの呼び方がある。

【山名の由来】
・天地の富を士(つかさどる)故に富士山と
号し、郡名と作(な)す。勅使が大勢の兵士
を連れて登ったので、富士山が兵士でいっぱ
いになった。そこで「士に富む山=富士山」
になった(『竹取物語』)。

【所在地】富士山頂
・山梨県富士吉田市、山梨県南都留郡鳴沢村
と静岡県富士宮市、富士市、御殿場市・静岡
県駿東郡小山町との境だが八合目付近から上
部は富士山本宮浅間大社の「私有地」になっ
ており、境界がはっきりしていない。富士急
行河口湖駅からバス、河口湖口五合目から5
時間30分で富士山頂。山頂剣ヶ峰に電子基準
点(3777.39m)と二等三角点(3775.63m)、
白山岳に二等三角点(3756.36m)がある。

【位置】
・山頂剣ヶ峰に電子基準点と三角点、白山岳
に三角点、火口内に標高点がある。
・剣ヶ峰電子基準点:北緯35度21分38.75秒、
東経138度43分38.3秒
・剣ヶ峰三角点:北緯35度21分38.26秒、東
経138度43分38.52秒
・白山岳の三角点:北緯35度22分0.02秒、東
経138度43分46.43秒
・火口内の標高点:北緯35度21分46.53秒、
東経138度43分53.27秒

【地図】
・2万5千分の1地形図:「富士山(甲府)」


▼【参考】
・「富士山記」都良香(『本朝文粹註釋』巻第
12に収録):「富士山記」柿村重松註(注釈あ
り)(内外出版)1992年(平成4)
・『富士山よもやま話』遠藤秀男(静岡新聞
社)1989年(平成元)


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