山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼853号 北ア・燕岳とツバメ娘

【本文】

ツバメは土をこねて巣を作ります。田んぼなどで土をこねている
のを見ると、まるで食べているようにも見えます。北アルプスの
燕岳(2763m)の近くに団恵谷(だんけいだに)というところが
あります。

ここに一人の娘が親もとを離れて住んでいました。そこへ親もと
から使いが来て「おっかさんの病気が重く、危篤なのですぐ来て
くれ」とのこと。娘は「すぐ行く」といって、着物を着替えたり、
化粧したりで手間取っていました。

するとまた使いが来て「おっかさんが亡くなった。早く来てくれ」。
娘は「もうちょっと」といい、口紅をさしていました。しばらく
すると、またまた「お前のおっかさんの葬儀をお寺でするからす
ぐ来い」との使い。

娘は「もう少し首のまわりにおしろいをぬってからすぐ行きます」。
しばらくすると「もう迎えもこれで最後だ。おっかさんが入って
いるひつぎのふたに釘を打つからすぐ来い」との使いが来ました。

「いま帯を締めています。結びあげたらすぐ行きます」と娘の返
事です。お寺では待ちきれず葬儀を終わらせ、ひつぎを土の中に
埋めてしまいました。そこへやっと娘がやってきました。

「もう遅い」と人々がいいました。それを聞いて娘は、ワアワア
泣きながら埋めたところの土を掘りはじめました。掘った土が邪
魔になると、それを食ってはまた掘っていきます。

そのうち娘の体がだんだんツバメの形になっていきました。ツバ
メは来る日も来る日も土を掘っていましたが、冬になり降る雪で
凍え死に、とうとう燕岳になったという。そのためツバメはいま
も土を食っているのだということです。

・長野県安曇野市穂高(旧南安曇郡穂高町)と大町市との境 J
R大糸線穂高駅からタクシー中房温泉、歩いて4時間20分で燕岳。
二等三角点(標高2762.9m)がある。

▼燕岳【データ】
【山名】つばくろだけ
・【異名、由来】:「ツバクロ」か「ツバクラ」か。ツバクロは東京
言葉であり、本当はツバクラが正しいとの地元の主張もあったが、
最近は「ツバクロ」で定着している。1897年(明治30)年代最高
点の岩山・ツバメ岩に登る人が多くなり燕を代表名とするようにな
った。山容がツバメが左右の羽を広げたような形をしている。ま
たツバメのような黒い山肌をしている。ツバメが多くすむ山だか
らという説がある。

【所在地】
・長野県安曇野市穂高(旧南安曇郡穂高町)と大町市との境 J
R大糸線穂高駅からタクシー中房温泉、歩いて4時間20分で燕岳。
二等三角点(標高2762.9m)がある。地形図に山名と三角点の標高
の記載あり。その南方2704m標高点近くに燕山荘がある。

【位置】
・二等三角点:(標高2762.9m)。【緯度経度】北緯36度24分24.6秒、
東経137度42分45.81秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「槍ヶ岳(高山)」。5万分の1地形図「高
山−槍ヶ岳 」

【参考文献】
・「アルプスの伝説」山田野利天著(株・ナガザワ)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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