山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼842号 「南ア・三伏峠特産サンプクリンドウ」

南アルプス三伏峠で発見されたのでサンプクリンドウ。以前はこの
峠付近の荒川岳、千枚岳にしか生えていないとされていたが、1987
年に八ヶ岳でも見つかった。9月、山が紅葉のころに咲きだし、花
の直径1センチと小さいのでなかなか気がつかない。
・リンドウ科サンプクリンドウ属の2年草。
・長野県下伊那郡大鹿村と静岡県静岡市葵区との境。
【本文】は下記にあります。

▼842号 「南ア・三伏峠特産サンプクリンドウ」

【本文】
南アルプス荒川岳、または塩見岳に登るとき、まず入るのが三伏峠。
この三伏峠特産の高山植物・サンプクリンドウがあるという。

花期が8月下旬から9月上旬で、花冠の直径が1センチほどしかな
い小さな花。そのためきわめて人目につきにくいという。なるほど、
いままで気がつかなかった花ながら、その名に興味を持ちました。

この花は1938年(昭和13)に三伏峠で発見されて以来、南アルプ
ス三伏峠から荒川前岳から千枚岳、北岳など南アルプスの特産品と
されてきました。

しかし1987年(昭和62)になり、八ヶ岳にもあることが分かった
ということです。以前はリンドウ科リンドウ属だったそうですがい
まはサンプクリンドウ属だという。

図鑑によればきわめて希な高山植物で1年草または越年草。その仲
間は遠くシベリヤや沿海州にあるということです。

このリンドウは風当たりの強い高山の砂礫地に生え、高さ2〜10
センチ。葉は楕円形で長さ0.5〜2.5センチ。花は淡紅紫色で長さ
1〜1.5センチ。

花冠は3分の2くらいまでは筒になっていて、上の方3分の1あた
りで少しくびれ、その先は5つに裂けています。

その内側は淡紅紫色で濃いの斑点が散らばります。花のつけ根にあ
る5枚の細いがく片は、花が開くにしたがい四方に開いていくよう
です。白花のものも結構あるといいます。

このリンドウは、山の紅葉が盛んになるころに咲き出す花で、この
時期に咲くのはオノエリンドウ、ヒメセンブリなど限られた高山植
物で花の寂しくなった時期だそうです。

これでこの花を見に行くのがひとつの目標になりました。また楽し
みが増えました。
・リンドウ科サンプクリンドウ属の1年草または越年草

▼三伏峠【データ】
【異名・由来】
・由来:フク・フセ(布瀬、伏)は地形語で傾斜地のこと。三つの
傾斜地を持つ峠(日本山岳ルーツ大辞典)。峠名は三方(大鹿村・
長谷村(いまは伊那市)・静岡市)に尾根を伏せたような地形上の
理由からではないか。

開山説など古い言い伝えの残る「三正坊」の3人の山伏にちなむと
の説もある。

三伏峠の名は江戸後期の地図には記載がなく、おそらく江戸末期か
明治も初めころつけられた呼び名ではないかという(「新日本山岳
誌」。大鹿村・釜沢の三正坊の祠には、【鼻高天狗】と【口高天狗】
の二つの面が飾られているという。

【所在地】
・長野県下伊那郡大鹿村と静岡県静岡市葵区との境。JR飯田線
伊那大島駅の東22キロ。JR飯田線伊那大島駅からバス、鳥倉登
山口停留所下車、さらに歩いて3時間で三伏峠。三伏峠小屋とキ
ャンプ指定地がある。地形図に三伏峠名、三伏峠小屋の記載あり。
付近に写真測量による標高点(2607m)がある。

【名峠】
・郷土出版社版「定本信州百峠」(第86番選定)

【位置】
・【三伏峠】緯度経度:北緯35度33分20.87秒、東経138度08分
35.15秒
・【三伏峠標高点】緯度経度:北緯35度33分17.57秒、東経138
度08分28.1秒

【地図】
・旧2万5千分の1地形図「塩見岳(甲府)」

【参考文献】
・「高山植物」(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)
・「植物の世界3巻・26号」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1994年
(平成6)
・「世界の植物巻2・17号」(朝日新聞社)1976年(昭和51)
・「日本の野草」(山と渓谷社)1983年(昭和58)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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