山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

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▼715号 「北ア立山・雄山の一、二、三の越」

【序文】
北アルプスの立山雄山に一ノ越という乗越(のっこし)があります。
山はふつう一合目、二合目、三合目と登り十合目が頂上です。しか
し立山では一ノ越、二ノ越、三ノ越と登っていくのだそうです。山
を仏さまの姿に見立てての呼び方なのだそうです。
・富山県立山町

▼715号 「北ア立山・雄山の一、二、三の越」

【本文】
立山室堂から雄山に登るには祓い堂を通り、まず一ノ越というとこ
ろにとりつきます。ふつう山に登る時、まず一合目から二合目、三
合目と登り、十合目で頂上につきます。

ところが立山では一ノ越、二ノ越、三ノ越と登っていくのだそうで
す。山を仏さまの姿に見立て、膝が一ノ越で、腰が二ノ越、肩が三
ノ越、首が四ノ越、頭が五ノ越(または膝・腰・腹・胸・肩をいい
山頂を頭とする)なのだそうです。そしてそれぞれの越に小祠を置
いたという。

この呼び方は古く、平安末期の国語辞書「伊呂波字類抄」(編者・
橘忠兼)に「躰厳石之山、膝名一輿、腰号二輿、肩字三輿、頸名四
輿、申頭烏瑟(うしつ)五輿」とあり、山頂を烏瑟の峰いっている
そうです。

かつて越中の男子は16歳になると雄山に参詣し、朱塗りの杯のお神
酒を戴かないものは一人前として扱われなかったそうです。

もし途中でへばり登れなかった時は前世悪業の報いとされ、帰宅し
てからも一生つまはじきにされたというから大変です。この習慣は
昭和の初めまで続いたそうです。

▼【データ】立山雄山(おやま)
・【異名・由来】
神の山の御山が雄山に結びついた。

・【所在地】
富山県中新川郡立山町。富山地方鉄道立山駅の東22キロ。富山地方
鉄道立山駅からケーブル、美女平からバス、室堂から2時間30分で
雄山。一等三角点(標高2991.6m)と写真測量による標高点(3003
m)と雄山神社がある。地形図に雄山の山名と雄山神社に標高点の
標高と南方85mに三角点の記号とその標高の記載あり。

・【ご利益】
雄山神社奥宮:家業繁栄・縁結び・厄除開運

・【名山】
『日本百名山』(深田久弥選定):第49 番選定:日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる。
『新日本百名山』(岩崎元郎選定):第43 番選定
『花の百名山』(田中澄江選定・1981年):第55 番選定

・【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」で検索
雄山標高点:北緯36度34分23.49秒、東経137度37分04.38秒
一等三角点:北緯36度34分21.23秒、東経137度37分2.85秒

・【地図】
2万5千分の1地形図「立山(高山)」or「黒部湖(高山) 」(2図葉
名と重なる)。5万分の1地形図「高山−立山」

・【参考】
『日本歴史地名大系16・富山県の地名』(平凡社)1994年(平成6)
『角川日本地名大辞典16・富山県』坂井誠一ほか編(角川書店)19
79年(昭和54)
『山岳宗教史研究叢書10・白山・立山と北陸修験道』高瀬重雄編(名
著出版)1977年(昭和52)
『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

 

 

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