山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼500号 「富士山・二人の姫伝説」

【概略】
ちやほやされる自分に満足していることにむなしさを感じ、た木花
開耶姫。また帝に后になって欲しいとの願いを断ったかぐや姫。二
人とも富士山頂から天に昇っていったという。この伝説は「富士山
縁起」、「神道集」、「本朝神社考」などの古書に記載されている。

▼500号 「富士山・二人の姫伝説」

【本文】
富士山には不思議な話が多くあります。この山には2人の姫伝説が
伝わっています。ひとりは木花開耶姫(このはなさくやひめ)。い
まも富士山にまつられているといいます。父親は山の神の総元締め
の大山祇命(おおやまずみのみこと)です。

この絶世の美女とうたわれた木花開耶姫に、姫を知るまわりの男神
たちはみんな思いを寄せていました。ある時姫は、そんな男神たち
に、ちやほやされる自分を意識し、またそれに満足している自分に
気づき、むなしさを感じ、自分自信に嫌気がさしました。

開耶姫、19歳のとき、ひとり白馬に乗って富士山をめざしました。
そして山頂に立ち、剣を地に突き刺すと静かに天に昇っていきまし
た。こうして開耶姫は、世の中から富士開山の名を与えられ、富士
山に祭られる女神になったのだそうです。

もう一人はかぐや姫(漢字で赫奕姫とも書きます)。富士山のふも
との駿河国(静岡県)の竹林の(ウグイスの卵から生まれたともい
う)中で生まれ、16歳のころ、帝の后になってくれるように請われ
ましす。

しかし、「自分は、もともと人の身ではありません」と富士山の岩
窟に籠もってしまいました。困った帝は王冠を勅使(ちょくし・使
者)に託し、かぐや姫をさがしに富士山に登らせました。

勅使は、やっとの思いで富士山まで行き、中腹でかぐや姫を見つけ
ました。帝からの王冠を受け取った姫は、それをつけたまま山頂に
消えていってしまったという。こうして2人の姫は富士山頂から天
に昇っていったということです。

『富士山縁起』(平安初期の学者、都良香(みやこのよしか)が富
士山について記した短い漢文の文章)、『神道集』(しんとうしゅう
・安居院(あぐい)作とされる南北朝時代の説話集)、『本朝神社考』
(ほんちょうじんじゃこう・江戸時代初期の儒学者、林羅山の著)
などの古書に記載されている話です。

・【データ】
【山名】ふじさん、ふじやま
・【異名、由来】:富士山、不尽、不二、布士、富慈、芙蓉峰(ふよ
うほう)、富岳などの呼び方がある。富士山8合9勺(はちごうき
ゅうしゃく=3360m)からから上、約400万平方mは、徳川家康が
富士山本宮浅間大社に寄進したとの記録があるが、明治維新後国有
地にされていた。8合目から上の神社の施設のある約16万平方m分
は1952年(昭和27)に大社に譲与されているが、富士山頂が返還さ
れなかったため、大社側が国を相手取って裁判を起こしました。

1974年(昭和49)、最高裁の判決で大社側の所有が認められた。し
かし静岡、山梨の県境が確定しておらず、登記手続きがとれず(東
海財務局)、2004年(平成16)12月17日、土地の所有権が国から富
士山本宮浅間神社に移った。(2004年(平成16)12月18付け朝日新
聞から)。

しかし、土地の所有権は認められはしたものの、山頂付近の静岡県
と山梨県の県境はまだ定まっていないという。したがって、土地登
記が出来ずじまい。住所は、もちろん静岡県でもなく山梨県でもな
い。所在地は、日本国富士山無番地なのだそうです。同大社側は「こ
れで所有権の手続きは解決した。県境の問題は県民感情もあり、登
記に向けて時間をかけて解決したい」と話しているという。

【所在地】
・山梨県富士吉田市、山梨県南都留郡鳴沢村と静岡県富士宮市、富
士市、御殿場市・静岡県駿東郡小山町(合併なし)との境だが八合
目付近から上部は富士山本宮浅間大社の「私有地」になっており、
境界がはっきりしていない。

富士急行河口湖駅からバス、河口湖口五合目から5時間30分で富士
山頂。山頂剣ヶ峰に電子基準点(3777.39m)と二等三角点(3775.
63m)、白山岳に二等三角点(3756.36m)がある。火口内に写真測
量による標高点(3535m・標石はない)がある。

【ご利益】
・【浅間神社奥宮】:【浅間神社】安産・火災除け:【富士山本宮浅間
大社】五穀豊穣、湧水守護の神

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第72番選定):日本二百名山、日
本三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第69 番選定)
・山梨県選定「山梨百名山」(第100番選定)

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・山頂剣ヶ峰に電子基準点と三角点、白山岳に三角点、火口内に標
高点がある。

・【剣ヶ峰の電子基準点】(※標高3774.9m)緯度経度:北緯35度21
分38.75秒、東経138度43分38.3秒

・【剣ヶ峰電子基準点のすぐ南の二等三角点】(標高3775.6m)緯度
経度:北緯35度21分38.26秒、東経138度43分38.52秒

・【白山岳の二等三角点】(標高3756.4m)緯度経度:北緯35度22分
0.02秒、東経138度43分46.43秒

・【火口内の標高点】(標高3535m)緯度経度:北緯35度21分46.53
秒、東経138度43分53.27秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「富士山(甲府)」。5万分の1地形図「甲
府−富士山」

▼【参考】
・「富士山縁起」都良香(みやこのよしか):『山岳宗教史研究叢書
・17』(修験道史料集1・東日本編)五来重編(名著出版)1983年
(昭和58)
・『神道集』安居院(あぐい)作:東洋文庫94「神道集」貴志正造
訳(平凡社)1994年(平成6)
・『本朝神社考』林羅山著(『日本庶民生活史料集成・第26巻』神社
縁起(三一書房)1986年(昭和61)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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