とよだ 時 「山の伝承伝説」民俗画
山旅イラスト通信【ひとり画展】

▼327号 「北ア・大天井岳南西赤岩岳の野猿」

シーズン中は人通りが絶えない北アルプス表銀座コース。喜作新道
で人だかりがしています。さっきお花畑を過ぎたあたり、野生のニ
ホンザルの群れが崖のふちを追い抜いた。いつの間にか木立からも
うあんな方で姿あらわしています。あれがいま話題の槍の山頂まで
登ってくるという「槍ヶ岳の群れ」と呼ばれる一団なのでしょうか。
(本文は下記にあります)

 

【本文】

夏山シーズン中は人通りが絶えない表銀座縦走コース。その喜作新
道は1922(大正11)年に長野県穂高町牧(いまは安曇野市)の小林
喜作が開いた登山道だそうです。長野県側中房温泉から入り、燕岳、
大天井岳、赤岩岳、西岳まではのんびりムードの登山道が続きます。

赤岩岳は山頂北側に赤色チャートが露出し岩肌が赤いのでそのもの
ズバリ赤岩岳だという。異名を屏風岳、筆喰(ふでばみ)の頭とも
いい、三角点名も筆波美(ふでばみ)になっています。

ここは大小5つのお花畑があり、また山背の西側に面した場所は砂
礫群落、懸崖群落がみられ、北の白馬岳と上高地のすぐ南にある六
百山にしかないヤハズトウヒレン(矢筈唐飛廉)が自生しています。
キク科トウヒレン屬の多年草で矢筈は矢の玄にかける部分、唐飛廉
の飛廉はヒレアザミに対する日本慣用の漢名という。

これを多少外国的な印象から唐の文字をつけたらしいと植物図鑑に
あります。お花畑を過ぎたあたり、野生のニホンザルの群れが崖の
ふちを追い抜いていきます。しばらく姿を見せていましたがいつの
間にか木立の中に消えていきました。

ふと見ると登山道の先の方で人だかりがしています。さっきの群れ
が崖を伝いながらもうあんな方までいっています。あの群れが話題
になっている地球温暖化のためか?夏には槍ヶ岳にまで登ってくる
ようになった「槍ヶ岳の群れ」と呼ばれる一団なのでしょうか。

この一団は長野県大町市の高瀬川の高瀬ダム上流あたりにすんでい
るニホンザル。初夏、高山植物が芽生えるころ大好物の食べ物を求
め登りはじめ、夏になると槍ヶ岳山頂付近まで登って来るという。
現在、9群のニホンザル(日本猿)が確認されているそうです。

そういえばかなり以前の4月末、北鎌尾根を目指し高瀬ダムから千
天出合へ向かって歩いた時、確かに猿の群れと出会いました。その
時は槍ヶ岳の群れ」なんて知るよしもありません。ヘエ、こんなと
ころにもすんでいるんだと思ったことを覚えています。

▼【データ】
【山名】屏風岳、筆喰(ふでばみ)の頭。三角点名も筆波美(ふで
ばみ)になっている。

【所在地】
・長野県安曇野市穂高(旧南安曇郡穂高町)と長野県松本市安曇(旧
南安曇郡安曇村)との境 JR大糸線穂高駅からタクシー、中房温
泉から歩いて延べ12時間30分で赤岩岳。三等三角点がある。地形図
に山名と三角点の標高の記載あり。

【位置】
・三角点:(標高2768.7m、三等三角点)。【緯度経度】北緯36度20
分36.11秒、東経137度41分2.63秒(電子国土ポータルWebシステ
ムから検索)

【三角点の位置】
・基準点:(基準点コード:TR35437450401)(点名:筆波美)(冠字
選点番号:化 36)(種別等級:三等三角点)(基準点成果状態:
正常)(測地系:世界測地系)(緯度経度:緯度 36°20′36.0214、
経度 137°41′02.567)(標高:2768.70m)(基準点現況状態:報
告なし 00000000)(所在地:記載なし)(点の記図:×)。(国土地
理院「基準点成果等閲覧サービス」から検索)

【点の記】(三角点があるときのみ表示)
・閲覧不可

【地図】
・2万5千分の1地形図「槍ヶ岳(高山)」。5万分の1地形図「高
山−槍ヶ岳」(「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【山行】北アルプス裏銀座烏帽子岳から表銀座・常念岳・徳本峠・
島々谷縦走
・第7日:1995年(平成7)8月24日(木・快晴)赤岩岳探訪:19
95年(平成7)8月17日(木)〜8月28日(月)「新宿駅・松本駅・大
糸線信濃大町駅・七倉・烏帽子岳・野口五郎岳・水晶岳・雲ノ平・
高天原(高天ヶ原)・黒部源流・三俣蓮華岳・双六岳・槍ヶ岳・大
天井岳・常念岳・蝶ヶ岳・大滝山・徳本峠・霞沢岳往復・島々集落
・新島々駅・松本駅・新宿駅」:単独行

【参考】
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「世界の植物・1」(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1994年(平成6)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよた 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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