山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼300号「奥多摩・酉谷山小川谷の闇鍋と闇てんぷら」

【小略文】
奥多摩・酉谷山麓の野宿訓練。夜の楽しみはヤミ鍋です。前から試
食したかったオオバコの若葉をこっそり混ぜておきましたが…。誰が
食べたか、それとも焚き火の灰にまみれたのか行方知れず。カンテ
ラのあかりの中、小川に落ちそうになる人もいました。
・東京都奥多摩町

▼300号「奥多摩・酉谷山小川谷の闇鍋と闇てんぷら」

【本文】
他人(ひと)さまに野宿をしてきたというと、テントは?寝袋は?
聞かれます。しかし「野宿」辞書を引くと「野外に寝て夜を明かす」
とあります。

日帰りのつもりで山に登り、何らかのハプニングが起こり下山でき
ず、動きまわり遭難した話をよく聞きます。そんな時のために野宿
の訓練をします。テントも寝袋も持って行かずに山の中で一夜を明
かします。つまりビバークです。

たった一人たき火を前に、揺れ動く火を見ながらの一晩は長い。そ
れでも夏なら午前2時を過ぎると東の空がほんのりと明るく感じら
れます。

こんな訓練を1回でもしておくと心強く慌てずにすみます。オカン
ともいいます。

ここ奥多摩の酉谷山は別名天目山・黒ドッケ・大黒山ともいうとい
う。「日本山名事典」によれば黒突剱と書いて「くろどっけ」とあ
ります。

ある年の初夏、酉谷山南麓の小川谷三又で野宿の訓練をしました。
まだ大きな社会人の山岳会にお世話になっていたころで、参加者は
10数人というにぎやかさ。

小さなカンテラのあかりの中、小川に落ちそうになる人もいます。
夜の楽しみはヤミ鍋です。かつてから一度試食したかったオオバコ
の天ぷら。

こっそりオオバコの若葉を摘んでほかの山菜と混ぜておいたのです
が…。誰が食べたか、それとも焚き火の灰にまみれたか行方知れず
になってしまいました。

▼【データ】
【所在地】
・東京都西多摩郡奥多摩町町。JR青梅線奥多摩駅からバスで東日
原、さらに歩いて4時間で三ツ又。地形図に何の文字の記載なし。

【位置】
・標高点:北緯35度52分54.04秒、東経139度01分17.55秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「武蔵日原(東京)」

【山行】
・某年5月20日(土・快晴)探訪

【参考】
・『角川日本地名大辞典13・東京都』北原進(角川書店)1978年(昭
和53年)
・『コンサイス日本山名辞典』(三省堂)1979年(昭和54)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

【とよだ 時】 山と田園風物漫画
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 (主に画文著作で活動)
【ゆ-もぁ-と】事務所
山のはがき画の会

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