山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼255号 「北ア剱岳早月尾根のイワベンケイ」

【序文】
高山植物のイワベンケイは弁慶のように強いのでその名がある。北
海道の海岸や本州の高山にあるが、富士山と立山では見つからない
という。剱岳をめざす早月尾根にへばった高校生のワンゲル部。あ
えいで登る登山道のわきにイワベンケイの黄色い花が咲いていた。
・富山県上市町

▼255号 「北ア剱岳早月尾根のイワベンケイ」

イワベンケイという高山植物があります。イワベンケイは、抜いて
捨ててもなかなか枯れないといわれるベンケイソウの仲間。弁慶の
ように強いというのでその名があるといいます。

高山では岩の割れ目や瓦礫地にかたまって生え、高さ15〜30センチ
になります。夏、肉質の葉を互生した茎の頂に淡黄色の花を密集し
て咲かせます。

日本では北海道の海岸などと本州の高山にありますが、不思議なこ
とに富士山と立山では見つからないという。南限は近畿地方で奈良
と三重の県境・大台ヶ原山だそうです。

しかし、1926(昭和1)年、植物愛好家の玉置海三という人が現地
で採集しましたが、それ以来発見されていないといいます。

ある年の7月、富山県上市町の馬場島から早月尾根を登りました。
途中の小屋でテント泊ののち、剱岳をめざします。先を行く高校生
のワンゲル部のひとりがへばっています。

あふれる汗でがんばる彼にリーダーの檄。登山道のわきのイワベン
ケイの黄色い花が咲いています。あとから登って行ったら、山頂で
案外元気にくつろぐ彼を見てホッとした思い出があります。

▼【データ】
★【所在地】
・富山県中新川郡上市町。富山地方鉄道上市駅からバス(いまは廃線の
ためタクシー)、馬場島下車で早月尾根登山口、さらに歩いて4時間30分
で伝蔵小屋(いまは早月小屋)。地形図に早月小屋の文字のみ記載。
標高記載なし。小屋より北北西方向100mに標高点(2224m)があ
る。付近に何も記載なし。

★【位置】
・【伝蔵小屋(いまは早月小屋)】緯度経度:北緯36度37分52.25秒、
東経137度35分51.54秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシス
テム」から検索)

★【地図】
・2万5千分の1地形図「剱岳(高山)」(国土地理院「地図閲覧サービ
ス」から検索)

★【参考】
・「角川日本地名大辞典16・富山県」坂井誠一ほか編(角川書店)1
979年(昭和54)
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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