山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

……………………………………

▼201号 「北ア・剱岳カタカナだらけの三ノ窓」

【略文】
三ノ窓は国際化。ジャンダルム(フランス語・チンネをまもる護衛
兵)、チンネ(ドイツ語・大岩峰)、クレオパトラニードル(鼻)な
ど古代エジプト語から英語、フランス語、ドイツ語まで使われてい
ます。P1、P2あり。チンネは本場ドロミテのものに似ています。
・富山県立山町と上市町との境

▼201号 「北ア・剱岳カタカナだらけの三ノ窓」

北アルプスの立山黒部アルペンルートでバスが室堂に到着します。
そこから北に進み、一旦下って雷鳥平に降り、ふたたび登りかえし
別山乗越(のっこし)の尾根に立つとそびえたつ剱岳(2999m)が目
に入ります。

その剱岳に登って山頂の祠から長治郎の頭、さらに北側に延びる尾
根には三ノ窓、小窓、大窓などの変わった名前の所があります。

窓とは、越中地方の言葉で稜線が鈍く切れ込んだ所をいうのだそう
です。なかでも三ノ窓は、近くにジャンダルム(フランス語・チン
ネをまもる護衛兵)、チンネ(ドイツ語・大岩峰)、クレオパトラニ
ードル(鼻)など古代エジプト語から英語、フランス語、ドイツ語
まで使われ、まさに国際化の様相です。

このほか八ッ峰などの岩峰も従えた鞍部で一度は行って見たいと思
う所。ジャンダルムはここのほかに、奥穂高にも有名なジャンダル
ムがあります。

P1、P2あり。チンネは本場ドロミテのものに似ているそうです。
9月、剱岳山頂から岩稜をたどると東側前方に岩峰八ツ峰の姿が見
られます。

池の谷(たん)乗越から岩が覆いかぶさった薄暗い砂地のちょっと
いやなガリーを砂にまみれてすべり下ります。途中砂地に埋まった
岩が砂といっしょに滑り落ちないよう、手で押さえるようにしなが
ら、やっと三ノ窓の底まで到着して小休止です。

まさにホッとしたひとときです。まわりは切り立つ岩がそそり立つ
別の世界のような所。わきの少し高いところに登れば眼下に三ノ窓
雪渓、見上げればチンネの岩峰、岩登りの名所八ツ峰なども望めま
す。

そばにツェルトが一張り小木の陰に張ってあります。八ツ峰でのク
ライミングを楽しんでいるのでしょうか。遠く八ツ峰の方で人の歓
声もあがっていました。

▼【データ】
【山名】・大窓、小窓、三ノ窓と三つある鋭く切れ込んだ所(キレ
ット)

【所在地】
・富山県中新川郡立山町と富山県中新川郡上市町との境。富山地方
鉄道立山線立山駅の北東20キロ。富山地鉄立山駅からバス、室堂
から歩いて延べ9時間20分で三ノ窓。地形図に地名標高ともに記
載なし。「角川日本地名大辞典16・富山県」では標高2700m、「日
本山名事典」では標高2650m。三ノ窓より北方166mに小窓ノ王が
ある。

【位置】
・三ノ窓:北緯36度37分46.61秒、東経137度37分23.36秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「十字峡(高山)」or「剱岳(高山)」(2図
葉名と重なる)

【山行】剱岳から小窓・仙人池
・某年9月14日(月・晴れ)探訪

【参考】
・「角川日本地名大辞典・富山」(角川書店)1979年(昭和54)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「山ことば辞典」岩科小一郎(百水社)1993年(平成5)
・「山の用語なんでも事典」(山と渓谷社)1984年(昭和59)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

山旅イラスト【ひとり画通信】
題名一覧へ戻る
………………………………………………………………………………………………