山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼190号 「箱根・金時山の公時伝説」

【概略】
山姥が赤竜と交わった夢を見てできたの金太郎。源頼光に出だされ、
36歳の時酒呑童子退治など武勇をふるった。主人頼光死後は行方を
くらませたままという。そんな金時も初めて乗った牛車にすっかり
酔いつぶれた話が『今昔物語』出てくる。
・神奈川県南足柄市、箱根町、静岡県小山町との境

▼190号 「箱根・金時山の公時伝説」

足柄山(神奈川県)の金太郎、のちの坂田公時(金時)は、平安後
期の武士です。『今昔物語集』などに、源頼光の郎党のひとりで36
歳のとき丹波の国大江山の酒呑童子征伐に参加して活躍、源頼光の
四天王に数えられています。

足柄山とは、神奈川県・箱根のこのあたり一帯の山々のことだとさ
れています。その山頂で、山姥が赤竜と交わった夢を見てできたの
が金太郎とのこと。

金太郎が21歳で源頼光に見出だされ、36歳の時主馬佑として酒呑童
子退治など武勇をふるいましたが、主人頼光死後は行方をくらませ、
足柄山で足跡を絶ったままと伝えられます。

しかし、この話ができたのは室町時代というから頼りなくなります。
説話が記録に出てくるのは、江戸前期『公平(きんぴら)誕生記』
という浄瑠璃の本。

『今昔物語』(平安後期)に出てくるのは坂田という姓もまだない、
ただの「公時」。また「今昔物語」には、初めて乗った牛車にすっ
かり酔いつぶれた話というも載っています。

そんなこんなに関係なく、金時山は、私たちを童話の世界に遊ばせ
てくれています。

▼【データ】
【山名】
・異名:金時山(きんときざん・やま)。

・由来:足柄山:神奈川県・箱根のこのあたり一帯の山々のこと。
猪鼻ヶ嶽。「日本山名事典」。「新日本山岳誌」。「続歌林良材集」に
は、『相模国風土記』に云」として「足軽(アシガラ)山は、此山
の杉の木をとりて船をつくるに、あしの軽き事、他の材にて作れる
船にことなり。よりてあしからの山と付たり」。江戸時代の文化8
年の箱根温泉の案内書「七湯の枝折」には「足柄八重山公時山之図」
と記され、『新編相模風土記稿』には猪鼻ヶ嶽(いのはながだけ)
あるいは公時山(きんときやま)とありますが、江戸時代の史料で
は「猪鼻ヶ嶽」が一般的で、公時・金時が混用されていたらしい。

【所在地】
・神奈川県南足柄市、足柄下郡箱根町、静岡県駿東郡小山町との境。
JR東海道本線小田原駅の北北西15キロ。小田原駅からバス仙石下
車、歩いて1時間30分で金時山。三等三角点(1212.5m)と、金太
郎茶屋と金時茶屋がある。地形図に山名と三角点の標高の記載あり。
付近に何も記載なし

【名山】
・日本山岳会選定「日本三百名山」(第236番):日本百名山以外に
200山を加える。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)

【位置】
・【三角点】緯度経度:北緯35度17分22.8秒、東経139度00分17.51
秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

▼【地図】
・2万5千分の1地形図「御殿場(静岡)」&「関本(横須賀)」(2
図葉名と重なる)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)。5
万分の1地形図「横須賀−小田原」(「電子国土ポータルWebシステ
ム」から検索)

【参考】
・「今昔物語集」:日本古典文学全集24「今昔物語集」(4)馬淵和夫
ほか校注・訳(小学館)1995年(平成7)
・「日本歴史地名大系14・神奈川県の地名」(平凡社)1984年(昭和
59)
・「日本神話伝説総覧」歴史読本特別増刊 新人物往来社 1992年
(平成4)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画通信】
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