山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼187号「東北・飯豊山の飯豊山神社」

【概略】
飯豊山は役ノ行者らが開山、五社権現をまつった。明治時代、廃仏
棄釈の嵐が吹き荒れ権現社も焼き討ちにもされかねない。そこでい
ち早く飯豊山神社と改名、祭神も御井命などに改めた。いま頂上本
社と山ろく各地の祭神名がちぐはぐなのはその時のあわてぶりを示
している。
・福島県山都町

▼187号「東北・飯豊山の飯豊山神社」

東北・福島県と山形県と新潟県にまたがる飯豊連峰の最高峰は、大
日岳ですが主峰は飯豊山(いいでさん・2105m)とされているそう
です。

その山頂にはその名も飯豊山神社という神社があります。神社の言
い伝えでは、飛鳥時代の白雉(はくち)3年(652)、智通が当時19
歳の役ノ行者を伴ってこの山に「行」の道を拓いたのがこの山の開
山の最初とあります。

その時、この山が「飯を豊かに盛った」形になっているので「飯豊」
と名づけて五子王(ごしおう)をまつって五社権現としたのだそう
です(「会津正統記」)。

そして山麓の福島県山都町一ノ木に薬師寺を建てて別当寺にしたと
あります。平安後期になり、僧知頴上人、南海上人らが登山道を開
きます。

また片貝の白雲山不動院にお寺を建てて登りやすくしたため、参詣
者が小国、長者原口、中津川□から列をなしたという。

明治時代になり、明治政府から神仏分離令が公布されると、廃仏棄
釈の嵐が吹き荒れます。廃仏棄釈といえば以前どこかの国で起こっ
た文化大革命のようなもの。

放っておけば五社権現社は焼き討ちにもあいかねません。そこでい
ち早く神社の名を「飯豊山神社」と改め、祭神も御井命など五柱に
改めました。

頂上本社と山ろくの神社、それも場所によってまつってある神さま
の名が違っているのはその時のあわてぶりを示しています。神社仏
閣といえどもうまく立ち回らないと危ない目に遭うこともあるので
すね。

▼【データ】
【山名】飯豊山(いいでさん)・飯豊本山(いいでほんざん)・飯出
山・四季山。西斜面の新潟県北蒲原郡内に温泉があり「湯出・ゆい
で」に由来。また山容が飯を盛ったような形に由来(652年「会津
正統記」)。また「陸奥国風土記」逸文にある飯豊山のように豊岡姫
命・飯豊青尊に由来するなどの説がある。四季山:夏に登ると万年
雪やお花畑があり、さらに風は秋を思わせるように冷たいので信者
たちは四季山といった。

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第19番):日本二百名山、日本三
百名山にも含まれる。
・田中澄江選定「花の百名山」(含まれず)
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(含まれず)

【所在地】
・御西小屋までは福島県喜多方市山都町(旧耶麻郡山都町)。それ
から先は山形県西置賜郡小国町と新潟県東蒲原郡阿賀町(旧東蒲原
郡鹿瀬町)との境。磐越西線山都駅の北25キロ。JR磐越西線山都
駅かタクシー・川入りからのべ8時間30分で飯豊本山。一等三角点
(2105.1m)と飯豊山神社がある。地形図に山名と三角点の標高の
記載あり。

【ご利益】
・飯豊山神社奥宮:五穀豊穣、家内安全、商売繁盛、身体堅固

【位置】
・三角点:【緯度経度】北緯37度51分17.59秒、東経139度42分25.45
秒(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「飯豊山(新潟)」

▼【参考文献】
・「奥州会津耶麻郡百木郷一戸邑飯豊山開基縁起」:『会津正統記』
収納(会津市立図書館)
・『会津旧事雑考』:『会津資料叢書』下巻(歴史春秋社)昭和48年
(1973)所収
・『山岳宗教史研究叢書7』(東北霊山と修験道)月光善弘(がっこ
うよしひろ)編(名著出版)1977年(昭和52)
・『山岳宗教史研究叢書17』「修験道史料集1・東日本編」五来重
編(名著出版)1983年(昭和58)
・「山岳信仰の構造(飯豊山登拝をめぐって)」鈴木岩弓。雑誌「論
集」巻6(21〜p38)1979年(昭和54)
・『修験の山々』柞(たら)木田龍善(法蔵館)1980年(昭和55)
・『新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『新編会津風土記』(2):大日本地誌大系31『新編会津風土記・
弐』花見朔巳校訂(雄山閣)1932年(昭和7)
・『新編会津風土記』(3):大日本地誌大系32『新編会津風土記・
参』花見朔巳校訂(雄山閣)1932年(昭和7)
・『新編会津風土記』(5):大日本地誌大系第34『新会津風土記・
五』花見朔巳校訂(雄山閣)1970年(昭和45)
・『東北の山岳信仰」岩崎敏夫(岩崎美術社)1996年(平成8)
・『日本歴史地名大系6・山形の地名』(平凡社)1990年(平成2)
・『日本歴史地名大系7・福島の地名」(平凡社)1993年(平成5)
・『陸奥国風土記・逸文』:『風土記』秋本吉郎(岩波書店)1993年
(平成5)所収

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
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