山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼131号「南アルプス・塩見岳の伝説」

【概略】
塩見岳は弘法大師が山頂から太平洋の塩を呼んだからという。深田
久弥は海が見えないとする。しかし「冬の空気の澄んだ日、山頂か
ら確かに見た」という人もいる。山麓には塩のつく地名がずらり。
塩見はもしかして「塩味(しおみ)」ではないか??
・静岡市と長野県伊那市との境

▼131号「南アルプス・塩見岳の伝説」

南アルプス・塩見岳は昔、荒川岳とか間ノ岳とか呼んでいたのだそ
うです。この荒川岳の名の由来は、この山の北側から突き上げる川
の名前からきています。

長野県側、旧上伊那郡長谷村から旧高遠町、そして伊那市を通り、
天竜川に流れ込む三峰川。その支流が荒川で、さらに南荒川、北荒
川に分かれています。南荒川の源頭にある山が、荒川岳(塩見岳)
というわけです。

しかし地図を見れば分かるように、同じ山域に荒川三山、白根三山、
それに間ノ岳があり、なんともまぎらわしい。そこで古くからふも
との村で使われていた「塩見岳」に山の名を統一したという。大正
時代の初めのことだそうです。

ところが今度は「塩見」とはどこから来た名前かでで諸説フンプン。
山頂から太平洋の潮が見えるからとか、弘法大師が山頂に立ち、太
平洋をのぞんで塩を呼んだからとの説もあります。

深田久弥の『日本百名山』には海が見えないとありますが「冬の空
気の澄んだ日、山頂から確かに見た」という人もいます。また建御
方神の伝説もあります。

この神は古事記に出てくる大国主命の子で、諏訪神社の祭神。その
神がたまたまこの山のふもとを通りかかり、鹿塩の渓谷・塩川で塩
を見つけたので源頭の山を塩見岳というとの説があります。

いずれにしても、山麓には塩湯、鹿塩、塩原、大塩小塩など地名が
ずらり。塩見はもしかして「塩味(しおみ)」ではないかと一人で
ナットク。

▼【データ】
【所在地】
・静岡県静岡市と長野県伊那市(旧上伊那郡長谷村)との境。JR
飯田線伊那大島駅からバス、塩川から歩いて8時間で塩見岳。二等
三角点(3046.9m)がある。地形図に山名と三角点の標高の記載あ
り。北西の肩に塩見小屋があり2766mの標高点がある。

【位置】
・三角点:北緯35度34分25.79秒、東経138度10分58.97秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「塩見岳(甲府)」

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典20・長野県」市川健夫ほか編(角川書店)
1990年(平成2)
・「角川日本地名大辞典22・静岡県」小和田哲男ほか編(角川書店)
1982年(昭和57)
・「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)1979年(昭和54)
・「信州山岳百科・2」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「日本山名事典」徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・「日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・「日本百名山」深田久弥(新潮社)1970年(昭和45)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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