山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼091号大菩薩・登山道のお地蔵さん

【概略】
山梨県大菩薩峠への登山道にまします千石地蔵。そのそばにテント
を張らせてもらった。夜中、沢のせせらぎが人の話し声に聞こえる。
もちろんだれもいるはずはない。それともほかの地蔵サマが遊びに
でも来ているのか。人の耳はこんなに惑わされるものか。
・山梨県甲州市塩山

▼091号大菩薩・登山道のお地蔵さん

中里介山の小説で一時ブームになった山梨県の大菩薩峠。この大菩
薩というは八幡大菩薩のことだとする説と、妙見大菩薩説、いや観
世音菩薩のことだとの諸説がにぎやかです。

またこの峠には、明治になってから開かれたいまの大菩薩峠(新峠)
と丹波大菩薩峠と小菅大菩薩峠の三つの峠がありますが、新峠は同
県丹波村へ続いています。

その登山道入口の山梨県甲州市塩山(旧同県塩山市)裂石地区から
歩き出した林道途中にお地蔵さんが鎮座まします。千石地蔵といい、
何とも豊かで親しめる表情をしています。

娘の友だちにそっくりというのであだ名をとり、ザルツ地蔵と勝手
に呼んでいます。

地元民宿の人に聞いたところ、どこの山でも同じことですが、「ム
カーシからあった」という返事が返ってきました。この地蔵の名前
から千石平の地名ができたとのことでした。

東京・新宿駅を夕方に出発、塩山駅からタクシーを利用、ここにつ
いたのは夜の10時になりました。早速、地蔵サンのそばにテントを
張らせてもらいました。

心地よかったアシクラ沢のせせらぎが、夜中になると、だんだん人
の話し声に聞こえてきます。もちろん、だれもいるはずはありませ
ん。それともほかの地蔵サマが遊びにでも来たのでしょうか。

翌朝、明るくなればそんな不思議もどこの話だっけとみんな澄まし
顔。サイ銭をあげて元気に出発しました。

▼【データ】
【所在地】
・山梨県甲州市塩山(旧同県塩山市)。JR中央線塩山駅からバス、
大菩薩登山口から歩いて30分で地蔵茶屋(千石地蔵)。地形図に極
小建物記号の記載あり。

【位置】
・緯度経度:北緯35度44分27.72秒、東経138度49分03.25秒(国
土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「大菩薩峠(甲府)」(国土地理院「地図閲
覧サービス」から検索)。5万分の1地形図「大菩薩−丹波」(「電
子国土ポータルWebシステム」から検索)

【参考】
・「アルパインガイド・35」(羽賀正太郎)山と渓谷社
・「エリアマップ・山と高原地図・23」(塚田正信著)昭文社(昭和56
年版)

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山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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