第6章 6 月

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▼中 扉

6月(みなづき) (この章の目次)
  ・水無月(みなづき)
  ・歯の衛生週間
  ・芒種
  ・時の記念日
  ・入梅
  ・父の日
  ・夏至
  ・6月その他の行事

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・水無月

 水無月(みなづき)は旧暦での6月の呼び方ですがいまの暦の太陽暦でも通用しています。梅雨の時期なのに水がない月とはちょっと変ですが、農業の仕事が一応終わり「農事みなつきる」または「5月に植えた早苗がみなつきる」の意味なのだそうです。

 「滑稽雑談」其諺著(江戸時代中期の歳時記)本にも「農の事ども皆つきたるゆえ、みなしつきというを誤まれり。一説にはこの月まことに暑くて、ことに水泉涸れ尽きたるゆえ、水なし月というを誤まれり」と書いてあります。なお旧暦の6月は新しいこよみの7目下旬にあたり、太陽ジリジリ、カンカン照りの真っ最中です。

 英語のジューンは、ローマ神話のエピテルの妻で結婚・出産の神であるジュノーからつけられたという。花嫁月ともいい、ジューンブライド(6日の花嫁)は幸福になるといいつたえられているのはご存じのとおりです。

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・歯の衛生週間(4日から)

 この週間(毎年6月4日から10日まで)は1958年、厚生省(いまの厚生労働省)、文部省(いまの文部科学省)、日本歯科医師会が主催者となって制定。歯の衛生の正しい知識を国民に知ってもらい、またむし歯、歯槽のうろうなどを予防し、その早期発見、早期治療を行おうというものだそうです。

 1928(昭和3)年から1938年まで日本歯科医師会が、6・4(むし)の語呂合わせで6月4日に虫歯予防デーを実施していました。1949(昭和24)年、これを復活させる形で「口腔衛生週間」が制定されます。1952年に口腔衛生強調運動としましたが、1956年に再度「口腔衛生週間」と名前を変更し、1958年からいまの「歯の衛生週間」になったもの。

 むし歯は歯にたまったでんぶん質や糖分が細菌のため発酵して酸を出し、歯の表面のエナメル質を溶かし、また別の細菌にこわされて、象牙質に穴があいてできるもの。

 その予防には新鮮な野菜や小魚、海草などを食べ偏食をさけ、甘いものをひかえ、食事のあと正しく歯をみがくことが大切だそうです。

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・芒 種(6日ころ)

 カレンダーやこよみの6月6日ころのところに芒種(ぼうしゅ)と書かれています。芒種は、芒(のぎ・稲などの穂先についているかたい毛のある穀物)の種をまく季節という意味だそうです。

 太陽の黄経を24で割ってその季節にふさわしい名前をつけた二十四節気(せっき)のひとつです。太陽が75度のところを通ります。

 二十四節気をもっとこまかく割った「七十二候」では第二十五候から第二十七候にあたります。第二十五候は新暦6月6日から10日ころで「蟷螂(とうろう)生まる」(カマキリが姿をあらわすころ)。

 第二十六候は11日〜15日ころで「腐草(くされたるくさ)螢となる」(ホタルが孵化して水辺の草に姿をあらわすころ)、第二十七候は16〜21日ころで「梅の実黄ばむ」(ウメの実が黄ばんで熟すころ)だとしています。昔の人はホタルは腐った草の化けたものだと思っていたようです。

 次第に梅雨めき、あと半月もすれば夏至になります。

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・時の記念日(10日)

 6月10日は「時の記念日」です。「時間を尊重し、定時を励行することによって生活の改善をはかること」を目的に、1920(大正9)年、生活改善同盟会というところが主催して実施されたものという。

 「日本書紀」天智天皇10(671)年、4月25日の項に「漏剋(ろこく・漏刻)を新しき台(うてな)に置く。始めて候時(とき)を打つ。鐘鼓(かねつづみ)を動(とどろか)す」とあります。この4月25日をいまの暦(太陽暦)になおすと6月10日になるため、この日を「時の記念日」にしたという。

 時刻を記す道具はいろいろな種類がありそれぞれかなり昔から使われていたようです。中国ではいまから3000年も前に「水時計」が使われていたといいます。

 昔は時刻を呼ぶのに十二支(し)の子(ね)から亥(い)を使ったり「九つ、八つ、七つ、六つ、五つ、四つ」などの呼び方をしました。昼の12時を「正午」といい、子どもにおかしをあげるのを「おやつ」などというのは、昔の時刻の呼びかたのなごりだそうです。

 1999年(平成12)年、郵政省通信総合研究所が福島県の大鷹鳥谷山山頂に、日本の標準時を電波で知らせる施設をつくりました。「おおたかやど山標準電波発信所」でこの日から250mの高さにあるアンテナから40キロヘルツの長波で全国に発信を開始しました。

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・入 梅(10日ころ)

 暦の6月10日ころのところに入梅と書かれています。暦の上では、太陽の黄経(天球の太陽の位置)80度のところを通過する日をいうそうです。これは雑節のひとつで立春のあと135日目をいっています。この日から約30日間が梅雨時になるわけです。旧暦では芒種のあとの壬(みずのえ)の日に当たるという。

 雑節とは二十四節気や五節句以外に、1年の季節の移り変わりをつかむために暦につけられた暦日のことです。

 梅雨は6月から7月上旬にかけて、アジアの季節風が発達してできる現象だそうで、中国の揚子江から日本にかけての一帯が雨の季節に入ります。

 そのため梅雨に相当する英語はなく、やはり「バイウ」なのだそうです。梅雨はつゆともいい、露からきたとも、梅雨にあうと多くのものがそこなうので、昔の言葉のツヒユ(遺ゆ)から出たとも、ウメの実が熟すころだからなどいろいろな説があるようです。

 入梅は南の地方では6目15日ころ、北では25日ころとしていますが、実際は年によって地域によってさまざまなようです。

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・父の日(第3日曜日)

 6月第3日曜日は父の日です。通勤ラッシュや交通渋滞にもめげず家族のためがんばっているお父さん。きょうはそんなお父さんに感謝をする日ですよ。

 父の日はアメリカ・ワシントン州のジョン・ブルース・ドット夫人が1910年ごろ提唱したのがはじまりだという。彼女の父のウィリアム・ジャクソン・スマートは妻に先立たれ、ドット婦人ら6人の兄弟を男手ひとつで育てあげました。

 彼女はそんな父を思い、教会の牧師にお願いして父の誕生月6月に父の日礼拝をしてもらったという。そんなとき「母の日」があるのを知りました。彼女は父の日もあるべきだと、「母の日のように父に感謝する日をつくるよう」と牧師協会へ嘆願しました。

 その後、「父の日」の行事は各地へ広まり、1916年アメリカ合衆国第28代大統領ウッドロー・ウィルソンの時、「父の日」が認知されるようになりました。1934年ごろには6月第3日曜日を「父の日」にしようということになりアメリカの年中行事に加えられました。1972年にはアメリカの国民の祝日に制定されたという。

 日本の「父の日」は、1950(昭和25)年ごろから行われていますが、はじめは母の日ほど盛んではありませんでした。普及したのは1980年代になってから。最近は商魂の手伝いもあってかお父さんもプレゼントを貰い、そのおこぼれにあずかっています。

 母の日の花がカーネーションなのに対して父の日の花はバラ。ドット夫人が父親のお墓にバラの花を供えたためとされています。健在は父には赤いバラ、亡くなった父には白いバラということになっているそうです。

 父親は古くは「かぞ、たらちお、ててき、あて」などと呼ばれ、また「とと、ととさま、とうさま」、方言では「ととつん、とつと、ててら、ててき、おとと、てしょ、のの」などと呼ばれました。また尊父、賢父、尊君、父御、そのほかなどわれわれには関係のない呼び方もあったという。

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・夏 至(21日ころ)

 新暦6月21日ころは夏至(げし)に当たります。これもまた二十四節気のひとつです。太陽の黄経(天球の太陽の位置)90度(夏至点)、すなわち地球の北緯23度27分に達した日だそうです。昼間が一番長い日で、東京では日の出が4時25分、日の入りが午後7時です。これを冬至にくらべると5時間近くも長いといいます。

 ヨーロッパでは夏至にはヨハネ祭(6月24日)やその前夜祭のお祭りが行われます。また恋人たちの祝祭でもあり、季節の花でいろいろな恋占いが行われるそうです。そのほか恋人たちが手をつなざ、「夏至の大かがり火」を飛び越える行事などもあるそうです。

 1年を72で割り、季節を表す「七十二候」では第二十八候から第三十候にあたります。第二十八候は21〜26日ころで「乃東(なつかれくさ)枯る」・「空穂草枯る」ころ、第二十九候は27日〜7月1日ころで「菖蒲(あやめ)咲く」ころ、第三十候は7月2日〜6日ころで「半夏(はんげ)生ず」ころとしています。暦の上では夏の真ん中にあたるということです。

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・6月 その他の行事

▼呼子(よぶこ)の大綱引き(旧暦5月5、6日) 佐賀県東松浦郡呼子町。岡組と浜組に分かれて引きあう。岡組が勝てば豊作、浜組が勝てば豊漁になるといいます。このおとな綱のほかこども綱があります。

▼住吉大社御田植神事(14日) 大阪市住吉区。神社地の中にある「おん田」で稚児(ちご)・植女(うえめ)などの田植え行事が行われます。
・尻ひねり祭(14日) 兵庫県西宮市。おこしゃ祭ともいいます。おまいりにきた人が、、男性なら女性の尻を、女性なら男性の尻をひねるお祭りです。

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▼チャグチャグ馬っこ(15日) 岩手県盛岡市。馬にはなやかな飾りをつけ、はんてん姿の男の子やふり袖を来た女の子を乗せて、おまいりに駒形神社に向かいます。

▼山王祭(15日) 東京都千代田区永田町の日枝神社。江戸時代から続いている祭で天下祭といわれ、盛んだったが最近は大分おとろえた。東遊・神事能の奉納があり、1年おきに行われる。

▼夏越し祭(6月30日)
 夏越しの神事にはかがれを人形(ひとがた)に託し、川に流す方法や悪気をはらうため茅の輪をくぐる方法、また火まつりをするところもあります。

 夏越しは邪神を払い、なごめることでその名は和(なご)しからきているとも、夏の名を越えて相克(そうこく)のわざわいを払うのだともいわれています。茅の輪は、武塔神(むとうのかみ)が蘇民将来に教え、疫病をまぬがれたという伝説からきています。

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(6月終わり)

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