『続・山の神々いらすと紀行』
第3章 関東の山々

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■15:高尾山は女性天狗?

【概略】
高尾山の天狗は飯縄権現の姿。再興の祖俊源大徳に「余はアバラ(不
動)明王である。長い間魔怪たちが世の中を乱しているので降伏さ
せるために現れた。飯縄の女神という」といったと江戸後半の「若
稽旧記」にある。それなら高尾山天狗は女性ということになってし
まう。謎のひとつになっている。
・東京都八王子市

■15:高尾山は女性天狗?


【本文】

有名な高尾山の天狗はくちばしのあるカラス天狗だという。そもそ

も1376(永和2)年、沙門(しゃもん・出家して修行に仙念する人)

俊源大徳(しゅんげんたいとく)が再興のおり、修行に疲れ仮眠の

夢枕に神が現れたという。



神は俊源に向かって「余はアバラ(不動)明王である。長い間世の

中が多難で、諸々の魔怪が横行して世を騒がすので、雷を落として

降伏させるために奇瑞をあらわした。これを飯縄の神女という。山

に祭るように」といったと「若稽旧記」(1750・寛延3年)に記載されて

いるという(「図聚天狗列伝・東日本編」)。



それによると、顔は人、トビのようなくちばしがあり、法衣を着て

背中に火炎を背負っていて、両肩に翼があり、右手に宝剣、左手に

索縄を持って、白狐にまたがった荼吉尼天の姿だったという。



名前、姿からしてまさしく長野県飯縄山の天狗・飯綱三郎の姿です。

ここ高尾山のほか、箱根の大雄山最乗寺の道了尊、群馬の迦葉山、

古峰ヶ原の天狗などはみなこの姿で飯縄系列の天狗とされ、飯綱三

郎に代表されるように男の天狗です。



しかし「若稽旧記」には確かに「これを飯縄の神女という」とあるという

のです。それでは高尾山の天狗は女性ということになってしまいます。

これは俊源大徳の聞き違いでしょうか。



このくちばしのある荼吉尼天姿の天狗が、鼻高天狗として(天狗と

いえば鼻高天狗と勘違いされ)麓の駅に堂々と建てられてしまって

いるいま、これも永遠の謎になってしまうのでしょうか。



▼【データ】
【所在地】
・東京都八王子市。中央線高尾駅の南西4キロ。京王高尾線高尾山
口駅からケーブルカー・高尾山駅から歩いて45分で高尾山山頂。
・山頂に二等三角点(599.2m)とビジターセンター、レストラン
ハウス、やまびこ茶屋がある。・山頂直下に薬王院(有喜寺)があ
る。
・地形図に山名と三角点の標高と高尾ビジターセンターの文字の記
載あり。三角点より東方向486mに薬王院がある。
【位置】
・三角点:北緯35度37分30.55秒、東経139度14分36.99秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「与瀬(東京)」or「八王子(東京)」(2図
葉名と重なる)。5万分の1地形図「東京−上野原」


▼【参考文献】
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光歳(三樹書房)1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)

 

▼15:高尾山おわり
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