『新・山の神々いらすと紀行』
第3章 関東の山々

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・01:那須三本槍岳

【略文】
那須連峰の最高峰三本槍岳(さんぼんやりだけ)。江戸時代、この山頂
は旧会津・那須・黒羽の各藩の境界だった。
3つの藩は定期的に領地確認が行ったが、その時各藩が山頂でそれぞ
れ槍を立てて確認作業をしたことから山名が生まれたという。

・01:那須三本槍岳


【本文】

栃木県の三本槍岳(さんぼんやりだけ)は那須連峰の最高峰。山頂

には一等三角点が設置されています。広い山頂には一等三角点があ

って、眺望も開けています。



南を見れば、険しい姿の那須朝日岳、その向こうに連峰の主峰茶臼

岳が噴煙をあげています。また北には磐梯山や吾妻連峰、そして眼

を下に移せば、那須高原や白河方面、茨城県の筑波山なども望めま

す。



三本槍岳とは変わった名前です。それにはこんな理由があります。

江戸時代、この山頂は旧会津(あいづ)藩、那須(なす)藩、黒羽

(くろばね)藩の境界だったという。この各藩は、定期的に三本槍

岳に登り、領地の見回りを行っていました。



その時、集まった各藩の役人は、それぞれ1本ずつ、計3本の槍を

立てて境界確認作業を行ったのだといいます。そんな故事から三本

槍岳の山名がつけられたという。



ちなみに会津藩は陸奥(むつ)、後の岩代会津郡を中心に、いまの

福島県西部と新潟県、それに栃木県の一部。那須藩は、下野(しも

つけ)国那須郡(いまの栃木県)。黒羽藩は、下野国那須郡にあっ

た藩のひとつです。



山頂北側には直径100mの爆裂火口の鏡沼があります。爆裂火口は

年月を経るにつれて次第に水をたたえ、いまではモリアオガエルの

生息地になっています。また朝日岳との間には清水平(しょうずだ

いら)の湿原があり、ゴゼンタチバナ、ミツバオウレン、ツマトリ

ソウなどの高山植物が分布しています。



この清水平はもと所属していた山岳会の会員が正月に遭難したとこ

ろ。奥さまが正月ということもあり、以後、この悲しみを思い出し

たくないということで、年賀状を貰いたくないとの意向をいわれま

した。なんとも悲しく心にしみたことでありました。




▼【データ】
【山名】江戸時代、旧会津・那須・黒羽の各藩の役人がそれぞれ槍を
たてて定期的領界確認作業を行った。

【所在地】
・栃木県黒磯市と福島県西白河郡西郷村との境。JR東北線黒磯駅から
大丸温泉バス停・峰の茶屋経由3時間30分で三本槍ヶ岳(1916.9m)。一
等三角点がある。地形図に山名と三角点の標高の記載あり。

【位置】
・三角点:(1916.9m、一等三角点)(北緯37度09分0.52秒、東経13
9度57分41.05秒)。(電子国土ポータルWebシステムから検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「那須岳(日光)」(別の図葉名と重ならず)(国土地
理院「地図閲覧サービス」から検索)。5万分の1地形図「日光−那須岳」

【山行】那須朝日岳、三本槍ヶ岳から三本槍ヶ岳
・某年6月9日(日)三本槍ヶ岳探訪

【参考】
・『角川日本地名大辞典9・栃木県』大野雅美ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成4)

 

▼01:三本槍岳おわり
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