■05:飯豊連峰・エブリ差岳
【略文】
農具をかついだ老人の雪形が農作業をはじめる目安になったという
エブリ差岳。お花畑の草いきれのなかをただひたすら下山。沢にお
りフワーッと涼風が体をつつみます。たまらず寝ころがりビバーク。
そこはよく熊が水を飲みにあらわれるところとあとで聞きました。
ブルブル。
・新潟県岩船郡関川村
■05:飯豊連峰・エブリ差岳
【本文】
各地の山の斜面にできる雪形は、かつてはふもとの人が農作業を
はじめる大事な目安でした。東北飯豊連峰エブリ差岳(1636m)も、
その一つ。6月ごろ前?差岳直下の中ノ俣川源頭に、農具の「エブ
リ」をかついだ老人の雪形があらわれるといいます。
ふもとの新潟県関川村大石集落の人たちはこれを見て農作業をは
じめたといいます。田植えの準備をする農事暦になっていたわけで
す。エブリとは代かきのあとに、地ならしする農具のことです。?
差岳という山名はここから来ているそうです。
8月初旬、飯豊連峰の南端・三国岳から縦走、エブリ差岳につい
たのは3日目でした。山頂の石祠の前で記念撮影。無人のエブリ差
小屋のまわりは高山植物のお花畑でした。ここは飯豊連峰の中でも
高山植物の宝庫だといいます。
ジリジリと照りつける太陽の下、とても長居なんかしていられま
せん。足早に関川村(新潟県)大石の集落に向かって下山をはじめ
ました。草いきれで頭が痛くなります。
一杯清水で冷たい水を飲み、大熊小屋避難小屋近くの吊り橋を渡
り、ひたすら下ります。そして十貫平と呼ぶところの沢におりまし
た。フワーッと涼風が体をつつみます。
たまらず寝ころがり、きょうはここでビバークと決めツエルトを
張りました。早速もぐり込み、イッパイひっかけ前後不覚に眠りこ
けました。あとでわかったことですが、そこはよく熊が水を飲みに
あらわれるところだったという。ブルブルブル。
▼ゼガイ沢出合【データ】
★【所在地】
・新潟県岩船郡関川村(他の村を吸収新関川村)。JR米坂線越後
下関駅からバス大石終点下車、さらに歩いて3時間でゼガイ沢出合。
★【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・ゼガイ沢出合:北緯37度58分39.11秒、東経139度34分52.97
秒
★【地図】
・2万5千分の1地形図「えぶり差岳(新潟)」
★【山行】
・某年7月31日(水曜日・晴れ)
★【参考】
・『角川日本地名大辞典15・新潟県』田中圭一ほか篇(角川書店)1
989年(平成1)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『山の紋章・雪形』田淵行男著(学習研究社)1981年(昭和56)
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