「ふるさと歳時記」

あとがき

 農山村を歩いていると、時どき奇妙なものをみつけます。たとえ
ば、道路の両側に竹を立て、なわでつないで大きなわらじを吊るし
たものなどがそれ。また、わらでつくった大蛇を木にはわせたもの
などもあります。これは、千葉県で1月19日ころに行われる辻切
りという行事です。村の外から悪霊が侵入しないようにとするもの
だそうです。

 もうかなり以前、山岳関係の仕事をしているな私は、岩手県の早
池峰山に登り、遠野市に降りたことがありました。

そこで虫送りの行事に出くわしました。虫送りは、以前私の生まれ
た千葉県八千代市でも行われていました。たいまつに火をともして、
稲の虫を村の外に送り出そうとするこどもたちの行事です。その

日は学校を休んでのお祭りで、こどもたちもとかく、はめを外しが
ちになります。悪の温床になるというので学校側の希望で取りやめ
になってしまいました。それ以来、ムラに代々伝わってきた行事が
永久に消えてしまいました。

 このような行事には、ナラシモチ、ソウリ(サオリ)、サナブリ
などがあり、辻切りや虫送りを見たなつかしさから次つぎに思い出
されました。

 そんな時、ある作家の農村行事を扱ったコラムのイラストを担当
しました。10数回で終わってしまいましたか、私にとってはにわ
かに興味をそそられるものがありました。

 そして日本農業新聞発行の『JA広報通信』(現在名)にコラム用
として連載をはしめたのです。以後十数年間掲載を続けてきました。
連載は百数十回を数えます。

 その後、全国農業改良普及協会(現全国農業改良支援協会)の各
誌にも連載を広げ、おおむね月づきの行事も出つくした折り、富民
協会の河上理事から一冊にまとめてみないかとのお話しがありまし
た。幸い日本農業新聞や支援協会のご協力も得られ、出版の運びと
なり、この上の喜びはありません。

 もちろん、いくら興味があっても、しろうとはしろうと。深く突
っ込んだ研究などできるわけがなく、内容にはいろいろとご指摘が
あろうかと存じます。またコラム用のため、字数が足らないことも
たしかです。

 ただ、格式ばらないしろうとの目でみた、またユーモアイラスト
でとっつきやすく描いたことにより、少しでも農山村に、民俗に関
心を持つ人が増えて項ければ、本書の役目は果たせたものと考えま
す。
                          【とよた 時】

 

「あとがき」終わり

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