▼雑学・山の伝承ばなし
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【とよだ時】(豊田時男)
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▼北アルプス・常念岳登山口烏川林道
【説明本文】
高山植物のハクサンコザクラは、
北陸の白山で採取されたことから
その名があります。
夏にサクラソウに似て花びらが
5裂した紅紫色の花を咲かせます。
かつてはこれをナンキンコザクラと
呼んでいたそうで、
牧野富太郎博士の『新日本植物図鑑』にも
ハクサンコザクラはかっこで
くくってあります。
ところが、サクラソウの1品種に
同じ名のナンキンコザクラというのが
あるというから具合が悪い。
そこで区別するため、
高山植物の権威者・武田久吉博士が
ハクサンコザクラと命名したといいます。
ある年の9月、福井県の九頭竜線
勝原駅(かどはらえき)から鳩ヶ湯、
刈り込み池、三ノ峰経由で白山に訪れました。
南龍ヶ馬場でテント、
翌日、快晴だった空模様は、
室堂センターからガスが湧
きだし、御前峰に着いたころは、
山頂からも何も見えなくなるありさま。
強くなってきた風を除けて
白山比盗_社奥宮の石垣のなかに
潜り込みます。
お湯を出し、暖かいゆでアズキを
つくって体を温めます。
坂道を下り、池めぐりのコースへ。
翆ヶ池あたりについたとたん、
突然ドカ〜ンという轟音の雷鳴が1発。
とたんに降り出した大粒の雨。
その勢いはこれこそ
「篠つく雨」というのでしょうか、
いままで見たこともありません。
そこから大汝峰の下を巻き、
岩間道を急ぎ急いで
避難小屋に飛び込みました。
避難小屋は見るからに頑丈そうで、
トイレも建物の中にあり、先ずは安心です。
雨の勢いは衰えず
相変わらず降り続いています。
翌日も狂ったような雨と
雷鳴が響きます。
北陸一帯に大雨・雷・洪水警報が
出ているとラジオ放送で伝えています。
台風が前線を刺激しているらしい。
きょうは停滞と決め、
小屋の中に濡れたものを干し、
残り少なくなった「般若湯」を傾け、
寝袋の中にもぐり込みました。
翌日もまた同じ勢い。小屋の前は
水かさが増して波が立ち、
木の葉や枝が流れています。
篠突く雨と雷で、人っ子ひとり
通らないまる3日間。
こうして寝泊まりしていると、
こんな避難小屋にも愛着が出てきます。
それもそのはず、このあたり、
シーズンはハクサンコザクラが群生する
小桜平という所。
小桜平避難小屋だったのでした。
咲き誇る時期はどんな風景だろうか。
もう一度満開の時期に来てみたいものと、
横なぐりの雨が吹きつけて、
川のような状態になった
小屋の前の小道を眺めました。
▼小桜平【データ】
【所在地】
・石川県白山市(旧石川郡尾口村)。北陸鉄道鶴来駅からバス、
白山一里野バス停下車、歩いて7時間20分で小桜平避難小屋。
【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWeb)
・小桜平避難小屋:北緯36度12分03.4秒、東経136度45分27.29
【地図】
・2万5千分の1地形図:
「新岩間温泉(金沢)」&「白峰(金沢)」(2図葉名と重なる)
▼【参考】
「植物の世界・2」(朝日新聞社)1996年(平成8)
「世界の植物・6」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
『日本の伝説3・信州の伝説』浅川欽一ほか(角川書店)
1976年(昭和51)
『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
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