とよだ 時のヤマケイ新書
『日本百霊山』 (漫遊・漫筆)
−伝承と神話でたどる日本人の心の山−
・古来、神仏や祖霊の宿る場所として、人の暮ら
しと深い関わりをもってきた日本の山々。山の伝
承や神話を探って、全国各地を訪ね歩いてきた
著者が、高山から親しみやすい里の山まで百山
を選んで、興味深い伝説や歴史を紹介。
▼【お断り】……
本書表紙に「雨飾山」の写真を使用しておりま
すが、出版社との手違いで、内容に雨飾山の
項目がありません。お詫びして、このページ末
尾に、101番目として雨飾山を掲載しました。ど
うぞよろしくお願いします。
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【内容目次】
・001:大雪山「層雲峡の伝説」
・002:羊蹄山「山羊のひづめはギシギシの葉」
・003:恐山「弁慶と常陸坊海尊」)
・004:岩木山「天気が荒れる、丹後者が入国していないか」
・005:八幡平「八幡太郎義家」
・006:早池峰山「ドロボーの味方をする早池峰の神」
・007:羽黒山「河童天狗円光坊」
・008:蔵王山「役行者の叔父とわすれずの山」
・009:飯豊山「姥権の出身地」
・010:一切経山「法華経と勇猛法師」
・011:吾妻小富士「種まきウサギと山神」
・012:越後八海山「御嶽行者が修行した岩峰群」
・013:会津駒ヶ岳「会津駒ヶ岳と以仁王」)
・014:燧ヶ岳「燧ヶ岳の雪形と火打ち石」
・015:至仏山「シブツ沢と四仏山」
・016:苗場山「カエルやイナゴもいる神の田んぼ」
・017:谷川岳「谷川岳と富士浅間神社」
・018:上州武尊山「日本武尊伝説と普寛行者」
・019:那須茶臼岳「殺生石と九尾の狐」
・020:八溝山「木曽駒の神馬と八溝山の大蛇退治」
・021:日光山「日光の天狗は徳川家康」
・022:庚申山「庚申山と里見八犬伝の犬養現八」
・023:赤城山「和歌山県法燈寺と赤城山の天狗」
・024:加波山「タバコ神社の大ギセル」
・025:鹿野山「製鉄関係者も供養にくる製鉄の神阿久留王」
・026:三石山「年々育つ石と天狗伝説」
・027:房総高宕山「山頂の鍋と観音堂と源頼朝」
・028:妙高山「山の雪形と義経記」
・029:戸隠山「九頭竜権現と天の岩戸」
・030:飯縄山「飯縄の法と天狗の麦飯」
・031:四阿山「四阿山(あずまやさん)と猿飛佐助」
・032:修那羅山「ユニークな石仏と女天狗」
・033:妙義山「大ノ字と天狗」
・034:荒船山「荒船山の姫と結婚した諏訪の神」
・035:蓼科山「雷獣とライチョウと諏訪湖へ抜ける穴」
・036:八ヶ岳「姫姉妹とでえらん坊とクロユリ」
・037:城峰山「将門と桔梗とお猫さま」
・038:両神山「御嶽の地名がならぶヤオカミ山(八?)山」
・039:秩父御岳山「秩父御岳山と木曽御嶽」
・040:秩父三峰山「オオカミと大口真神」
・041:子ノ権現「子ノ聖と悪魔たち」
・042:瑞牆山「まかり間違えばここが高野山になったかも」
・043:金峰山「ライチョウ放鳥と山夫(やまおとこ)」
・044:国師ヶ岳「天狗岩の鉄剣」
・045:飛竜山「ヘソを曲げた飛竜神」
・046:茅ヶ岳(金ヶ岳)「仲の悪い怪人同士」
・047:乾徳山「乾(いぬい・北西)の方向、徳和にあり乾徳山」
・048:大菩薩嶺「新羅三郎と登山口雲峰寺」
・049:奥多摩石尾根七ツ石山「田原藤太秀郷、将門を討つ」
・050:奥多摩御岳山「オオカミと日本武尊伝説」
・051:三頭山「オツネの泣き坂」
・052:奥多摩今熊山「行方不明者を捜す神」
・053:高尾山「飯縄系なのに女性天狗か?」
・054:秋山二十六夜山「養蚕の神二十六夜山」
・055:三ツ峠山「ダルマ石」
・056:御正体山「入場即身仏の妙心上人」
・057:石割山「石の字に割れた天岩戸」
・058:丹沢大室山「神社碑を隠して損をした国境争い」
・059:仏果山「仏果上人と煤ヶ谷の七不思議」
・060:蛭ヶ岳「毘廬帽と毘盧舎那仏(大日如来)」
・061:塔ノ岳の尊仏岩「お塔岩の落ちた金鉱脈沢」
・062:丹沢大山「雷獣と石尊の石」
・063:富士山「山の高さ、合目とはなんだ」
・064:箱根金時山「赤竜(雷)の子なので金太郎は赤い」
・065:最乗寺(明星ヶ岳)「道了尊はもと三井寺の行者」
・066:天城山「万二万三郎兄弟天狗」
・067:小蓮華山「東へ向かって一直線の風切地蔵ライン」
・068:立山雄山「雄山の一、二、三の越」
・069:立山竜王岳「悪竜、大蛇を閉じこめる常願寺川刈込池」
・070:薬師岳「天びん棒と薬師信仰と3つのカール」
・071:有明山「魏石鬼と坂上田村麻呂」
・072:槍ヶ岳「槍ヶ岳の家族たちと登山猿」
・073:乗鞍岳「乗鞍と木曾義仲」
・074:御嶽山「コマクサと木曽御嶽山の天狗たち」
・075:麦草岳「麦畑と大蛇の雪形」
・076:木曽駒ヶ岳「織田信長、本能寺の変で神馬探せず」
・077:宝剣岳「大声を上げると山が荒れる宝剣岳」
・078:空木岳「木曽殿越えと吾妻鏡」
・079:恵那山「神坂峠、義経ゆかりの金売り」
・080:甲斐駒ヶ岳「聖徳太子と天津速駒(あまつはやこま)」
・081:鳳凰三山地蔵岳「奈良法王と子授け地蔵」
・082:夜叉神峠「半神半鬼夜叉の峠」
・083:農鳥岳「農鳥のタマゴと大町桂月の歌碑」
・084:塩見岳「塩と弘法大師」
・085:荒川三山悪沢岳「信仰登山と荒川五山?」
・086:白山御前峰「御前峰の天狗・白峰大僧正」
・087:伊吹山「日本武尊と飛行上人」
・088:大江山「神便鬼毒酒を飲まされた酒呑童子」
・089:比叡山「護国鎮護の役目の延暦寺」
・090:京都愛宕山「今昔物語に出てくる愛宕山のの天狗」
・091:生駒山「役行者に捕まえられた2匹の鬼」
・092:大和葛城山「吉野山へ向かって造りかけの岩橋」
・093:金剛山「蛇谷に捨てられた一言主神」
・094:金峰山(青根ヶ峰)「青根ヶ峰清明の滝のツチノコと古文」
・095:高野山奥の院「高野山の神との約束を破った弘法大師」
・096:伯耆大山「国引き神話と伯耆坊」
・097:石鎚山「ここの天狗は役小角の化身だとも」
・098:英彦山「日の子の山・日子山」
・099:阿蘇山「山頂に現れる神の愛馬」
・100:霧島山「天ノ逆鉾坂本龍馬」
・101:雨飾山「蘇鉄ヶ岩屋伝説」(付:★下記)
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▼【お断り】……
本書表紙に「雨飾山」の写真を使用しておりま
すが、出版社との手違いで、内容に雨飾山の
項目がありません。お詫びしてここに、101番目
として雨飾山を掲載します。どうぞよろしくお願
いします。
▼101:雨飾山「蘇鉄ヶ岩屋伝説」
【短略説明】
長野県北部と新潟県との県境に雨飾山(あま
妙高連山に雨飾山という山があります。「あまか
ざりやま」とは珍しい名前です。雨や天を祀る意
とか、双耳峰なので両飾山といったのが、後に
両が雨になったという。不思議なのは「蘇鉄ヶ岩
屋」の伝説。文政5年の古文書には出てくるので
すがどこにあるのか不明なのです。山頂にある石
仏の阿弥陀さまや天狗の伝説もあります。
▼長文です。拾い読みしてご覧下さい。
【本文】
長野県北部と新潟県との県境に雨飾山(あま
かざりやま)という山があります。「あまかざりやま」
とは珍しい名前です。この山は天飾山とか、天粧
山、また雨錺山、雨節山、両飾山、両粧山、荒
菅山などなどいろいろな別名があります。
それは雨や天を祀る山の意とか、アマ火山、
山頂が双耳峰なので「両」の字のつくのだとかい
われているようです。そして後に「両」が「雨」にな
ったといいます。また信州側山麓では「霧のたん
と晴れない山で、いつも雨をかぶっているから雨
飾りの名がある」という人もいるそうです。
登山口は長野県側小谷温泉と大網登山口、
新潟県側の雨飾温泉。小谷温泉は上杉・武田
の合戦の時に落ち武者が見つけた温泉という。
400年も昔の話ですからすごい。
山頂は二つに分かれ地元ではネコ耳と呼び、
東南、長野県側の斜面は大岩壁になっていて
「ふとんびし」といっているそうです。山頂直下の
笹平は、平らな地形でクマザサ原になっていて
高山植物のお花畑。山頂に立てば日本海から
北アルプスなどが一望できます。
双耳峰の主峰である南峰には、かつて地蔵菩
薩、薬師如来が安置されていたそうですがいま
は三角点と山神の石柱が建っています。北峰に
は、石仏が4体とつぶれた石の祠が新潟県向き
にならんで建っています。
石仏は阿弥陀三尊、大日如来、薬師如来、不
動明王で、ひでりの時など山麓の農民が、雨乞
いの祈願を行うと慈雨に恵まれたと参考書にあり
ます。しかし、他の説では「雨飾り」の名があるよ
うに、このあたりは多雨多雪地帯、山頂にある石
仏や祠が雨乞いのためものであるとするのは無
理があり、むしろ太陽の光を望んだものではない
だろうかとの意見もあるようです。
石仏も風化されて文字は読めないのですが、
祠のとなりは不動明王らしく、そのとなりは「○○
山青○渡寺」と読める所が奉納した熊野修験の
木札があるので大日如来らしい。またその他、丸
い石に三尊の仏像が彫られた石像、単体像とな
らんでおり、順序が換わっているようです。
この石仏たちは、糸魚川地方の羅漢上人とい
う坊さんが刻み、山へ運んだものだといいます。
ただ、はじめ雨飾山に三尊の阿弥陀さまをまつ
ったのはやはり糸魚川の法眼という坊さんで、佐
五左衛門という人が石像を担ぎ上げてまつりまし
たが、信州小谷方面から登ってきた木地屋が谷
底へ放り投げてしまったという。
そこで再び彫り直し担ぎ上げたということで
す。この阿弥陀如来については、中土村(いま
の長野県小谷村)の猟師の塩六の「光明石の伝
説」や、同村中谷の阿弥陀堂の伝説も残ってい
ます。
この山は信越国境(信濃・越後)にあるため、
元禄13(1700)年から3ヶ年間、越後側にある
山口村と、信濃側の小谷の村々との間で国境争
論がおこったという。訴えたのは越後側の山口
村。幕府の評定所が厳重に調査、元禄15
(1702)年11月、争論裁許状が交付されまし
た。
それには、雨飾山二ノ肩から信越国境の目印
とする地点が書かれ、裏面に国境絵図までが描
かれていたそうです。このあたりも風が強く、信州
側の戸土、押廻、中又、横川の各地区では、毎
年5月5日に全戸が農作業を休み「風祭り」の登
山をする習慣が、また越後側の梶山でも風祭り
の登山行事あったそうです。
江戸後期の文政5(1822)年になると、長野
県小谷村中土で雨飾山頂に十三仏を担ぎ上げ
たという話もあり、その古文書のひとつ「あまかざ
り拾三仏の縁起」も発見されているという。十三
仏を担ぎ上げたその時、すでにいまの祠があっ
たというから相当古い祠であること以外、何をま
つってあるかなど詳しくは不明です。
先の古文書のもうひとつに「雨錺(かざり)山蘇
鉄ガ岩洞の縁起」というのも見つかっています。
この「蘇鉄が岩屋」という洞窟は奈良時代、行基
菩薩がこもって修行したところと伝えています。
そこで中谷の人たちは洞窟を探しに行ったという
のです。
そして難行苦難の末、神仏に祈ったところ天
から明星のご来光があり岩屋を隠していた岩が
崩れて魔物が追い払われ、岩屋があらわれたと
いう。一同、行基菩薩が残した石仏を何度も拝
み、わが家目指したとあります。
しかしその場所というのは、地元の人も雨飾山
の南面にはサイガ岩屋という所や、雨飾山の岩
屋という所もあるそうですがどこをいうのか詳細
は不明なのだそうです。
最後に雨飾山には天狗伝説もあります。その
昔、雨飾山に天狗が住んでいました。ある日頂
上から小谷村大網の里を見ていると、ウワバミが
住みかの洞窟からはいだしてウロウロしていま
す。きっと村人に悪さをしようとしているに違いな
い。時々自分の領分をも荒らしに来るにっくき奴
です。
とたんに天狗は雨飾山頂から大網の原をめが
けて飛び降りました。「ドスーン」。ウワバミはペッ
チャンコになって死んでしまいました。それから
は大網の村人は安心して暮らせるようになったと
いうことです。いまでも天狗が飛び降りた足跡
が、旧北小谷小学校大網分校(1992年(平成
4)廃校)にあり、水溜まりは目薬なっていたとい
う。
また、ウワバミの死骸を投げ捨てたところを「ヤ
キバ」といい、ウワバミの住みかだった洞窟から
水が流れているのが戸沢だということです(「大
網の民話」)。
ある年の9月はじめ、まだ使える「青春18切
符」を片手に、南小谷駅に降り立ちました。この
時期バスは、小谷温泉から少し行った雨飾荘、
露天風呂下の駐車場が終点。まだ雨飾高原キ
ャンプ場までは1時間以上歩きます。しかしバス
停すぐ上の林の中に露天風呂を見つけ楽しみ
が増えました。
翌日テント場を朝5時半前に出発。荒菅沢を
渡り笹平を過ぎ、急登すると山頂に。眼下に日
本海が広がります。双耳峰になっていて、なるほ
ど北峰には石仏がずらり。一体一体写真を撮り、
高さと幅をスケールで計ります。祠の裏に「姫神」
の石棒がありました。
本峰である南峰には三角点と、山神の石柱と
祠がひとつ。かつて地蔵菩薩、薬師如来が安置
されていたそうですが、これはそのどちらかにち
なむものでしょうか。後になり先になり、登ってき
た5人のパーティーが南峰の三角点わきで大休
憩、コーヒーを沸かしておしゃべりをしています。
わたしも北峰でゆっくり日本海をながめながら、
昼食をとりました。
石仏も調べた、祠もスケッチした。この石仏た
ちを担ぎ上げた人たち、またいまはどこにあるか
分からなくなっている、行基菩薩が修行したとい
う「蘇鉄が岩屋」の場所などに思いを馳せます。
きのうは、午後3時ごろ夕立でひとしきり降られま
した。きょうもくるに違いない。そろそろ退散と、急
坂を下り笹原の中の道をキャンプ場を目指した
のでありました。収穫、収穫。
▼雨飾山【データ】
【所在地】
・新潟県糸魚川市と長野県北安曇郡小谷村(合
併なし)との境。JR大糸線南小谷駅から小谷村
営バス、雨飾高原バス停留所下車、歩いて1時
間20分で雨飾り高原キャンプ場。さらに歩いて
4時間30分で雨飾山。南峰(本峰)と20数m隔
てて北峰がある。北峰に4体の石仏(阿弥陀三
尊、大日如来、薬師如来、不動明王)と祠があ
る。南峰に二等三角点(1693.2m)と、山の神の
石碑と祠がある。地形図上には山名(雨飾山)三
角点記号とその標高(1693.2m)がある。
【地図】
・2万5千分1地形図名:雨飾山
▼【参考文献】
・『雨飾山と海谷山塊』−われらが希望の山々
(蟹江健一・渡辺義一郎)(恒文社)2008年(平
成20)
・『角川日本地名大辞典15・新潟県』田中圭一
ほか篇(角川書店)1989年(平成1)
・『角川日本地名大辞典20・長野県』市川健夫
ほか編(角川書店)1990年(平成2)
・『信州山岳百科・3』(信濃毎日新聞社編)1983
年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出
版)2005年(平成17)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004
年(平成16)
・『日本歴史地名大系20・長野県の地名』(平凡
社)1979年(昭和54)
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とよだ 時(とよた時改め)
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(略称・時ゆ-も)
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