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▼山旅【ひとり画語り】(本文のページ)(04)
【とよだ時】(豊田時男)
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▼シャクナゲとそれを盗んだ背振山の姫神
【短略説明】
稜線のくぼみや岩かげなどにハイマツのよう
に地面を覆って群落しているキバナシャクナ
ゲ。この高山の過酷な環境の中でも、冬は雪
の下に閉ざされ、夏は濃い霧に保護されて、
シャクナゲにとってはすみ心地がよいのだと
いう。この花を里で栽培しようとしても難し
く、開花などしないそうです。・ツツジ科ツ
ツジ屬の常緑低木
【本文】は下記をどうぞ。
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(長いです。拾い読みしてください)
▼シャクナゲとそれを盗んだ背振山の姫神
【説明本文】
シャクナゲとは、ツツジ科ツツジ屬のうち
シャクナゲ亜属の総称をいうそうですが、ホ
ンシャクナゲやアズマシャクナゲをただシャ
クナゲということもあるといいます。ただ『牧
野新日本植物図鑑』では、ツクシシャクナゲ
をいうとあります。しかしホンシャクナゲは
ツクシシャクナゲの変種だというからそう目
くじらを立てることはなさそうです。
日本には6種のシャクナゲが分布している
そうです。高山でおなじみのキバナシャクナ
ゲとハクサンシャクナゲの北方系の2種と、
南方系の4種(ヤクシマシャクナゲ、ツクシ
シャクナゲ、アズマシャクナゲ、エンシュウ
シャクナゲ)の種群に区別できるのだそうで
す。これらの種類は、それぞれに適した環境
と分布域をもっていて、2種類が同じ場所に
生えていることはめったにないといいます。
それぞれの種類がそれぞれにお互いにすみ分
けているらしいというのです。
シャクナゲ類の葉は革質で厚く、表面は深
い緑色で光沢がありますが、裏面は褐色で淡
白色の密毛があり葉が捲いています。これは
冬期の温度の低下に従って水分が氷結して細
胞が脱水作用をうけて収縮するからなのだそ
うです。つまり、シャクナゲのような大きな
常緑葉は、厳冬期になると葉を内巻きにして
垂れ下がり、夜の強い冷え込みに耐え、また
昼間の日の光にあたって葉の温度があがった
り、水分蒸発を防いでいるというのです。こ
のような性質は冬の寒さが厳しい地方ほどは
っきりあらわれているそうです。
いろいろなシャクナゲの中で日本で一番高
い山に生えているのはキバナシャクナゲとい
う種類です。稜線を歩いていると、わきのく
ぼみや岩かげなどにハイマツのように地面を
おおって群落しているのを見かけます。この
高山の過酷な環境の中でもシャクナゲにとっ
ては、冬は雪の下に閉ざされ夏は濃い霧に保
護されているという、これがすみ心地がよい
らしく、栽培するのは難しく本州の低地では
ほとんど開花しないそうです。
キバナシャクナゲは茎は横に這い、高さ20
〜50センチ。柄のある葉は互生して枝の先
の方にたくさん密生しています。葉の形は倒
卵状長楕円形で長さ3〜6センチ。6月下旬
から7月中旬が花の最盛期。数個横向きに咲
き、径2.5〜3.5センチ。雄しべ10本、雌し
べ1本。「黄花」といっても鮮黄色ではなく
淡い黄色をしています。
またハクサンシャクナゲも時々ハイマツな
どにまじって高山帯で見かけます。高山帯で
は丈が低いですが、普通にある亜高山帯の針
葉樹林のなかで育つと高さは2〜3mになる
といいます。富士山の五合目の奥庭あたりで
も大きくなったハクサンシャクナゲを見かけ
ます。花冠は基部が黄みを帯び、緑黄色の斑
点があります。
シャクナゲの記録では「石南花草」の文字
で平安時代の『新撰字鏡(しんせんじきょう)』
(901年)に、また木偏に南の「石楠花草」
の文字が、同じ平安時代の『倭名類聚鈔』(931
〜938)にありますが、両方とも和名は「止
比良乃木(とぴらのき)」とあり、いまでい
うトベラ科のトベラを指しているものらしい
といいますから、ちょっとがっかりはします
が…。シャクナゲの名は室町時代から使われ
はじめたようで『下学集』(かがくしゅう)
(1444年、文安元・嘉吉4)に記録がある
そうです。またかつて愛媛県の石鎚(いしづ
ち)山では、ハクサンシャクナゲを行者が手
折って里に持ち帰り、田んぼの畦にさして豊
作を祈る風習もあったそうですよ。
ところでシャクナゲにはこんな伝説もあり
ます。備前(佐賀県)と筑前(福岡県)の境
にある背振山(せぶりさん・1055m)に、「ベ
ンジャア」さんという、それはきれいな姫神
がいたといいます。姫神は花、それもとりわ
けシャクナゲが大変好きでした。しかしこの
山にはシャクナゲが生えていません。がっか
りしていると豊前(福岡県)の英彦山(ひこ
さん・1200m)にたくさん咲いているとい
うことをうわさで聞きました。
そこでこっそり天空馬という空を飛ぶ馬に
乗って英彦山行き、シャクナゲを5,6株盗
みました。それを知った英彦山にすむ大天狗
(豊前坊)は「待てえッ」と、空を飛んで追
いかけてきました。姫神と天空馬は必死に逃
げましたがとうとう東小河内(いまの福岡市
那珂町)のあたりで追いつかれました。姫神
はシャクナゲを放り投げて背振山に逃げ帰り
ました。放り投げたシャクナゲはその後、東
小河内で美しく咲くようになったということ
です。
一方、背振山に逃げ帰った姫神は、どうし
てもあきらめられません。なんとしてもこの
背振山にあのきれいな花を咲かせたい。そこ
で姫神はもう一度盗みに行ったのです。そし
てまた英彦山のシャクナゲを5、6株つかむ
や、一目散に逃げ出しました。しかし、相手
も大天狗です。たちまち見つかって追いかけ
られます。天空馬も必死に逃げましたが山の
下の鬼が鼻というところで追いつかれそうに
なり、またシャクナゲを投げ捨てて逃げ帰っ
たというのです。
そのため、いまでも背振山の頂上にはシャ
クナゲがなく、山すその東小河内と鬼が鼻に
だけ美しく咲いているのだそうです。また、
天狗に追われて逃げる時、天空馬があわてて
あまり尻を跳ね上げ背中を振り振り走ったた
め、その山を背振山と呼ぶようになったとい
うことです。ちなみに大天狗の名は英彦山豊
前坊という日本八天狗に入る大物天狗です。
それにしても、大物天狗にしてはちょっとみ
みっちくないかナ?石楠花を隠さう雲の急に
して(阿波野青畝)
・ツツジ科ツツジ屬の常緑低木
▼【参考文献】
・『高山植物』(野外ハンドブック・8)小野
幹雄ほか(山と渓谷社)1985年(昭和60)
・『高山植物・花の伝説』文・稲田由衣、絵
・戸谷恵子(株式会社ナカザワ)発行日不明
・「世界の植物2巻・22号」(週刊朝日百科)
(朝日新聞社)1976年(昭和51)
・「植物の世界巻5・53号」(朝日新聞社)
1995年(平成7)
・「植物の世界巻6・65号」(朝日新聞社)
1995年(平成7)
・「植物の世界巻13・11号」(朝日新聞社)
1994年(平成6)
・『日本の樹木』山溪カラー名鑑1988年(昭
和63)
・『日本の民話2・自然の精霊』(角川書店)
1974年(昭和49)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆
館)1974年(昭和49)
▼@山旅【画ッ展】837号「シャクナゲを盗
みに行った背振山の姫神」(2010年09月)
【前文】
稜線のくぼみや岩かげなどにハイマツのよう
に地面を覆って群落しているキバナシャクナ
ゲ。この高山の過酷な環境の中でも、冬は雪
の下に閉ざされ、夏は濃い霧に保護されて、
シャクナゲにとってはすみ心地がよいのだと
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