(フェイスブック・ツイッター・mixi・メールマガジン・ブログ)

【本文】のページ
CD本『全国の山・天狗ばなし』10
【とよだ 時】

 CD本目次
(イラスト本ではありません)

……………………………………

京都愛宕山の天狗の正体

【略文】


 この山には日本一の大天狗「愛宕山栄術太郎坊」がいることにな
っています。京都の愛宕山は924mと標高こそ低いですが、山上に
火伏せの神である愛宕神社があり、一般庶民の信仰が厚い山です。
「あたご山」、どこかで聞き覚えのある名前です。

 それもそのはず、全国に900以上の分社がある神社です。東京で
いえば、港区のNHKの前身の東京放送局(JOAK)のあった愛宕
山、また、奥多摩駅前の愛宕山なども有名です。また町名も愛宕町、
愛宕神社がよく目につきます。

 栄術太郎天狗が天狗になる前の姿は、聖徳太子の恩師にあたる日
羅(にちら)(6世紀朝鮮半島の百済の王に仕えた日本人)という
人だとも、またインドの魔王天狗が日本にやってきて愛宕山に住み
つき暴れていたものを、役ノ行者と泰澄大徳に折伏され改心してこ
の山を守るようになったともいわれています。またその時の縁で泰
澄自身の姿だとする説もあります。
・京都府京都市右京区嵯峨愛宕町。

……………………………………

京都愛宕山の天狗の正体


【本文】

 京都の愛宕山は924mと標高こそ低いですが、山上に火伏せの神
である愛宕神社があり、一般庶民の信仰が厚い山です。愛宕神社は
本宮と若宮があり、それぞれに大勢の神さまがまつられています。

本社の祭神は、伊弉冉尊(いざなみ)・埴山姫命(はにやまひめ)
・天熊人命(あめのくまひとのみこと)・稚産日命(わくむすびの
みこと)・豊宇気毘売神(とようけひめ)の5座。

 ここにある天熊人命は、天照大神の命で保食神の死体から生えた
五穀を刈り取り、進上した神(『日本書紀』。稚産日命は、穀物の生
育を司る神とされています。

 また若宮の祭神は、雷神(いかづちのかみ)・迦具槌命(かぐつ
ちのみこと)・破旡神(はむしん)の3座。この中の迦具槌命は火
の神で、この神を生んだとき母親の伊弉冉尊(いざなみのみこと)
は大事なところを焼かれたために死に、黄泉国(よみのくに)へ下
るという話は有名です。そんなところからこの神は火伏せの神にな
っています。

 破旡神とは聞き慣れない神ですが、丹波国の国史現在社4所のひ
とつ。破旡神の意味ははっきりしませんが、雷神や火伏の信仰との
かかわりから鎮圧・予防の意に通じる神とされています。愛宕山は、
阿多古、愛宕護、阿当護、阿太子とも書かれます。また白山(はく
さん)、朝日(あさひ)峰、白雲(はくうん)山、などとも呼ぶ(雍
州府志)そうです。明治の神仏分離令以前、愛宕神社は愛宕山白雲
寺といいました。

 愛宕神社の社伝によると、愛宕山白雲寺は701年(大宝1)に役
小角(えんのおづぬ)と泰澄大師(雲遍上人)が洛北高(鷹)ヶ峰
(たかがみね)に創祀。781年(天応1)6月に和気清麻呂が勅命
を受け、高(鷹)ヶ峰から「愛当護大権現」を迎え、堂宇を造営し
たという。

 平安京となってからは王城の乾(いぬい・北西)の守護神となり、
愛宕権現とよばれ、崇敬されました。ここは中国の五台山に模して、
山中の5山に5寺があり、神仏習合の修験道場。明治時代の神仏分
離や廃仏棄釈までは愛宕権現と呼ばれ、真言密教の行場として栄え
ました。

 一方、平安時代に制定された『延喜式』神名帳に、「阿多古神社」
(丹波国桑田郡)というのが載っており、これが愛宕神社を指すと
もいわれていますが、桑田郡は主に亀岡市であり、そこに「元愛宕」
(同市千歳町)と呼ぶ神社があるという。ちなみに天正10年(1582)、
明智光秀が本能寺で、織田信長を討つ前にここ愛宕山で、連歌の会
での百韻「時は今 あめが下知る五月哉」と詠んだという話もあり
ますよね。

 「あたご山」、どこかで聞き覚えのある名前です。それもそのは
ず、全国に900以上の分社がある神社です。東京でいえば、港区の
NHKの前身の東京放送局(JOAK)のあった愛宕山、また、奥多摩
駅前の愛宕山などが有名です。その総本山の京都愛宕神社は、まだ
歩く前の幼児を背負ってお参りし、シキビを供えて、祈祷してもら
えば、その子は一生火の災難からまぬがれるともいわれています。
こんな山ですから不思議な話の1つや2つ、ないわけがありません。

 この山には日本一の大天狗「愛宕山栄術太郎坊」がいることにな
っています。「白雲寺縁起」(『山城名勝志』所収)には、「九億四
万余天狗有」と記されたり、インドの魔王天狗が、日本に渡ってき
て愛宕山にすみつき、悪さをして住民を悩ませていたのを、役ノ行
者と泰澄に従伏させられて、心を入れかえて、愛宕山を守る天狗太
郎坊になったとされる話もあります。

 このほか、文徳天皇の女御である藤原明子(染殿后)に一目惚れ、
焦がれ死んだ真斉上人という人の怨念が、凝って太郎坊になったの
だとか、また、聖徳太子の学問の師であったとも伝えられる日羅(に
ちら)(6世紀朝鮮半島の百済の王に仕えた日本人)だとも、イン
ドからきた魔王天狗を従伏したときの縁で、泰澄がこの天狗に変身
したという説もあり、諸説が交雑しています。しかし、日羅や泰澄
のような賢人が魔界に入り込んでいるとは考えられず、太郎坊の元
の姿はやはり愛宕の山神か、あるいは地主神と見るのが穏当だろう
と専門家はいっています。

 また『太平記』巻二十七(雲景(うんけい)未来記事)に、こん
な話が載っています。出羽国の雲景という山伏が諸国行脚の途中、
京都で、ひとりの老山伏と知り合い、白雲寺本堂の僧坊へ案内され
ました。中ではなにやら会合が行われています。部屋の上座には敷
物を二畳敷き重ねた上に大きな金色の鳶(とび)が、そしてその右
脇には、大弓、大太刀を携えた大男が、左の席には天皇の礼服の上
に日月や星々を織り出した上着を着て、金の笏を手にした方々が何
人も座っています。

 雲景は「この方たちは?」と尋ねると老山伏は、「上座の金色の
鳶が崇徳上皇(すとくじょうこう)であられる。右脇の大男が筑紫
八郎為朝、左の席の上から、淳仁天皇、井上皇后、後醍醐院、右の
席は諸宗のすぐれた徳のある高僧たち、玄ム(げんぼう)、真斉(し
んぜい)、寛朝(かんちょう)、慈慧(じえ)、頼豪(らいごう)、
仁海(じんかい)、尊雲(そんうん)などの方々が、悪魔王の棟梁
となられて、今ここに集まり、天下を乱そうとご相談なされておる」
とのこと。魔の世界に入った身分高き人々が一堂に集まり、天下を
乱れさせようとの陰謀を相談をする「愛宕山天狗評定」の話も残っ
ています。

 そのほか、愛宕山にまつわる伝説には、『今昔物語集』巻二十 第
十三 愛宕護の山の聖人野猪に謀らるる語第十三(あたごのやまの
しやうにんくさゐなぎにたばかるることだいじふさむ)もあります。
愛宕の持経者(お経の読誦をする者)が毎夜、イノシシが化けた普
賢菩薩を伏し拝んでいた話で、あるとき、猟師がしばらく聖人の所
にご無沙汰したので、食糧袋にしかるべき果物などを入れて持って
いった。

 すると聖人が普賢菩薩があらわれるのを今か今かと待っていま
す。急に部屋の中が月の光がさし込んだように明るくなりました。
見れば、白い色の菩薩が白象に乗ってしずしずと降りておいでにな
ります。聖人は感激で涙を流しうやうやしく礼拝。猟師に「どうだ、
そなたも拝みなされたか」という。

 猟師は首をかしげ、「しかしわしらなど、お経も読めないような
者の目にも見えるとはどうも怪しい」。猟師は矢を弓につがえ普賢
菩薩めがけて放つと、見事命中しました。聖人は驚き大騒ぎ。夜が
明けて菩薩立っていた所に行ってみると、たくさんの血が流れてい
ます。それをたどっていくと、谷底に大きなイノシシが死んでいま
した…。たとえ聖人であっても、知恵のない者はたぶらかされ、動
物を殺して罪ばかり作っている猟師でも、思慮があればイノシシの
化けの皮を剥ぐことができるのだ。…ということです。



▼京都愛宕山【データ】
★【所在地】
・京都府京都市右京区嵯峨愛宕町。JR山陰本線保津峡駅からバス、
水尾停留所下車、さらに歩いて3時間で愛宕山。標高点(924m)。
★【位置】
・愛宕山標高点:北緯35度03分37秒、東経135度38分03秒
★【地図】
・2万5千分1地形図名:京都西北部



▼【参考文献】
・「愛宕山の山岳信仰」アンヌ・マリ ブッシイ:『山岳宗教史研究
叢書11・近畿霊山と修験道』五木重編 (名著出版)1978年(昭和53
年)
・『角川日本地名大辞典26・京都府・上』(角川書店)1991年(平
成3)
・『今昔物語集』:日本古典文学全集24『今昔物語・3』馬淵和夫
ほか校注・訳(小学館)1995年(平成7)
・『神社辞典』白井永治ほか編(東京堂出版)1986年(昭和61)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『図聚天狗列伝・西日本』知切光歳著(三樹書房)1977年(昭和52)
・『太平記』巻二十七(雲景未来記事):新潮社版『太平記4』(山
下宏明校注)(新潮社)1991年(平成3)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50):(p340・
愛宕山栄寿太郎坊)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・岩波文庫『日本書紀(一)』校注・坂本太郎ほか(岩波書店)1995
年(平成7)
・『日本大百科全書1』(小学館)1984年(昭和59)
・『日本歴史地名大系27・京都市の地名』林家辰三郎ほか(平凡社)
1987年(昭和62)
・『本朝神仙伝』大江匡房著(日本古典全書・古本説話集 川口久
雄・校注)(朝日新聞社)1971年(昭和46)


………………………………………
▼CDブック
全国の山・天狗ばなし パソコンでお読み下さい。

 

……………………………………

▼発売中
−山の伝承伝説100を集めた本−

妖怪・鬼・天狗などはみな神サマ。村人は山に神をまつった…。
ヤマケイ新書 『日本百霊山』 税込968円 (山と渓谷社)
▼書店にない時は店員の方にご注文を。

★アマゾン、楽天ブックスなら確実に入手できます)
……………………
▼<アマゾン 広告>
日本百霊山 伝承と神話でたどる日本人の心の山 (ヤマケイ新書)

………………………
▼<楽天ブックス 広告>
https://books.rakuten.co.jp/rb/14400530/?l-id=c-as-img-02
…………
▼<紀伊国屋書店 広告>
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0353002

 

……………………………………

▼パソコンで読む、こんなCDブックもあります
01『新・丹沢山ものがたり
02全国の山・天狗ばなし
03『新・山の神々いらすと紀行
04新・ふるさとの神々何でも事典
05『家庭行事なんでも事典
06健康(クスリになる)野菜と果物
07ひとの一生なんでも事典
08ふるさと祭事記・歳時記
09野の本・山の本』(春夏秋冬全4巻)
10山の通信【ひとり画っ展】郵送


…………………
ほかの
CDブックはこちらをご覧下さい。

…………………
【とよだ 時】 山の伝承探査
山旅通信【ひとり画っ展】発行
U-moあ-と】すたじお
山旅はがき画の会
from 20/10/2000


アクセス数:【temg10

 

 

TOPページ
………………………………………………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………………………………………………………………………………
・ねたむな、そしるな、うらやむな。
・今朝酒あらば 今朝酒を楽しみ 明日憂来らば
 明日憂えん。(城山三郎)