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CD本『全国の山・天狗ばなし』(08)
【とよだ 時】

 CD本目次
(イラスト本ではありません)

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丹沢・相模大山の天狗さま

【略文】

大山は天狗の山。多くの天狗をとりしきるのが伯耆坊と
いう大天狗。名前の通り、もと鳥取県の伯耆大山にすん
でいました。ここにはもと相模坊という天狗がいました
が、平安末期香川県の白峰山に山移りしたという。次い
で伯耆大山から伯耆坊が移住してきました。その祠が大
山寺の脇に鎮座しています。
・神奈川県伊勢原市。

丹沢・相模大山の天狗さま


【本文】

 神奈川県にある丹沢相模大山(さがみおおやま・1252

m)は、石を神格化した神である石尊大権現(せきそん

だいごんげん)をまつっています。「大山まいり」とい

う落語があるくらい、石尊大権現を参拝するのはステー

タスだったという。



 この山は、近県はおろか遠く長野県のあたりにまで信

仰されていたようです。JR篠ノ井線姥捨駅(おばすて

えき)の近くの霊諍山(れいそうざん)のずらりとなら

んだ奇怪な石仏のなかに相模大山の石尊の石碑がありま

す。



 「不動まで行くのも女だてらなり」。いまにも女性た

ちに怒られそうな川柳もあります。ここも江戸時代は女

人禁制で、女性は山頂の奥ノ院へは登れなかったといい

ます。しかし、途中の、昔大山寺があった(いま下社あ

るところ)までは、女人禁制ではなかったという。



 下社の所にあった大山寺は、明治維新の神仏分離令の

時、大山ケーブルの途中・不動前駅に移転させられまし

た。大山寺の本尊は、大聖不動明王です。そこで「不動

まで行くのも女だてらなり」の川柳が生まれたわけです。



 さて江戸時代、大山まいりに行くにはその前に水垢離

をとるのがしきたりだったといいます。大山石尊大権現

参拝の唱え言葉に、「南無帰命頂礼、さんげさんげ(懺

悔懺悔)、六根罪障、おしめにはつだい(大峰八大の誤

りといいます)、大山大聖不動明王、石尊大権現、大天

狗、小天狗」とあります。



 このように大山は天狗の山です。いまも、山頂奥ノ院

には狛犬の台座に、また下社から山頂へ登る途中の石尊

大権現の石柱にも大天狗、小天狗の文字が彫ってあるの

が目につきます。



 大山には有象無象の天狗どもがすんでいるのだとい

う。その我慢邪慢(がまんじゃまん)の天狗どもを大親

分天狗の「相模大山伯耆坊(ほうきぼう)」が取り仕切

っているのだそうです。この天狗は、京都愛宕山(あた

ごさん)太郎坊、鞍馬山僧正坊(そうじょうぼう)など

とならんで「日本の八天狗」にも名を連ねています。



 伯耆坊という天狗は名前の通り、もと鳥取県の伯耆大

山(ほうきだいせん)にすんでいたからついた名前です。

丹沢の大山にははじめ、土地の名前・相模坊(さがみぼ

う)という天狗がいたそうです。この相模坊が平安末期、

香川県坂出市白峰山(しらみね)に山移りし、次いで鳥

取県の名峰・伯耆大山(ほうきだいせん)から伯耆坊が

移住してきたというのです。



 伯耆大山は、南北朝時代の抗争から伯耆の大山寺(だ

いせんじ)の衆徒が派閥争いをはじめ、果ては互いの坊

を焼き払い、とどのつまり大山寺まで炎上させる荒廃ぶ

り。それにあきれ果て、伯耆坊は相模大山に移ってきて

しまったのだといいます。その伯耆坊のホコラがケーブ

ル不動前駅の大山寺(相模)のわきに鎮座します。



 先に述べたように大山寺は、昔はケーブル終点の阿夫

利神社下社の所にあり、阿夫利神社の別当寺(神社の経

営管理を行う寺)でした。が、明治初年、時の政府が神

仏分離令を施行してから、廃仏棄釈のあおりで、荒廃の

一途をたどり、いまのところに降ろされました。



 天狗の祠もいまの下社のとなりにあったという。ある

時、天狗研究家の知切光歳氏が、長年放置されていた伯

耆坊天狗の祠の礎石を発見。その材料をそっくり使って、

昔通りの祠に再建したとききます。祠は参拝者に見向き

もされず、それでも大切に大山寺にまつられています。

またいまの阿夫利神社下社の登山道わきにも伯耆坊天狗

像の絵入りの石碑が建っています。



 1958年(昭和33)、正宗得三郎描いた絵をもとにして

彫ったものだそうです。それにしても大山寺の天狗祠は

鍵がかけられて厳重です。一度でいいから中を拝ませて

もらいたいものですね。



 またこの山にはもう1狗(天狗は1狗2狗と数える)、

阿夫利山道昭坊(常昭坊とも)天狗がいることになって

います。これは平田篤胤(ひらたあつたね・江戸時代後

期の国学者、神道家)が、門人の下総国葛飾郡柏井村(い

まの市川市柏井)の住人・中尾玄仲から話を聞き、自分

の著書『仙境異聞』という本の中で紹介しています。



 この天狗は、いまの東京都葛飾区新宿で旅籠を営む藤

屋荘兵衛のところへ遊びに来て5、6日滞在、酒ばかり

飲んでいたという。このことを篤胤が『仙境異聞』に書

いていますが、歴史的に新しく、大山でも中級の天狗だ

ろうと、研究家はみています。




▼大山寺
【所在地】
・神奈川県伊勢原市。小田急伊勢原駅からバス、大山ケ
ーブル不動前で下車歩いて数分で大山寺
【位置】
・大山寺:北緯35度25分45.32秒、東経139度14分
21.86秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「大山(東京)」



▼【参考文献】
・『あしなか・復刻版』第4冊(第77輯・丹沢特集)(名
著出版)1981年(昭和56)
・『図聚 天狗列伝・東日本編』知切光歳著(三樹書房)
1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)1975年(昭和50)


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02全国の山・天狗ばなし
03『新・山の神々いらすと紀行
04新・ふるさとの神々何でも事典
05『家庭行事なんでも事典
06健康(クスリになる)野菜と果物
07ひとの一生なんでも事典
08ふるさと祭事記・歳時記
09野の本・山の本』(春夏秋冬全4巻)
10山の通信【ひとり画っ展】郵送


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ほかの
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【とよだ 時】 山の伝承探査
山旅通信【ひとり画っ展】発行
U-moあ-と】すたじお
山旅はがき画の会
from 20/10/2000


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・ねたむな、そしるな、うらやむな。
・今朝酒あらば 今朝酒を楽しみ 明日憂来らば
 明日憂えん。(城山三郎)