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CD本【新・山の神々いらすと紀行】(05)
とよだ 時(とよた時)

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▼会津磐梯山に巣喰う怪物

【略文】
その昔、磐梯山に怪物がすんでいました。怪物は嵐を呼び雲を集め、
雨を降らせて農作物を荒らして、村人を苦しめて喜んでいました。
そこへ弘法大師がやってきて、退治されたという。山頂肩の弘法清
水わきには大師の石像がまつられ、コンコンと清水が湧き出で、登
山者の絶好のオアシスになっています。
・福島県猪苗代町と磐梯町と北塩原との境。

▼会津磐梯山に巣喰う怪物

【本文】
 ササに黄金がなりさがる山・会津磐梯山(1819m)。磐梯とは岩
のハシゴだといいます。大同元(806)年の爆発前の磐梯山は標高
2200mはあったと推測されています。そのためこの山は、まるで
天に通じる磐(岩)の梯(はしご)のようだというのでその名がつい
たというのです。

 「奥州会津恵日寺縁起」(『新編会津風土記』による)には「磐梯
山、もとは病脳山(やまうさん)とて魔魅(まみ)住み居て常に祟
りをなし農産物を害せり。のみならず山麓に民家あまたありしに大
同元年、大爆発を起こさせ月輪荘、更科荘が一夜に湖に化し、溺死
者数知れず」

 「この災害を聞きて空海この地に来たりて、八田野稲荷の森にて
秘法を行せしにより、魔魅は別峰烏帽子岳に逃げ去りぬ。この時山
神、形を現しければ空海これを祝いて磐梯明神と称し、舞楽を奏し
て明神と名づく」とあります。

 そんな記述からこんな伝説が残っています。その昔、病脳山(磐
梯山)と明神ヶ岳とに両足を踏ん張って立つような怪物「足長」と、
猪苗代湖の水を手ですくって会津中にばらまく「手長」という夫婦
の怪物が棲んでいました。

 この怪物は、いたずら好きの乱暴者で雲を呼んで会津一帯を真っ
暗にし嵐を起こすわ、作物を荒らすわで、村人は困り果てていたと
いう。

 そんなとき弘法大師空海がやってきて、病脳山の頂上に登って怪
物夫婦に会って問答をしたという。「お前たちは何でもできると威
張っているようだが大きくなることができるか」というと、手長足
長は見る間に天まで届く大きさになりました。

 それを見た大師は「大きくはなれるが、わしの手の平に乗るよう
な小さくはなれまい」。「何をいう。俺たちに出来ないことはない」
手長足長は、みるみる小さくなって大師の手に乗りました。大師は
すかさず用意していた石の箱に入れ蓋をし、呪文を唱え出られなく
してしまいました。

 「お前たちはいままでさんざん悪いことをしてきたが、神として
磐梯の山に祭ってやるからこれからは、人々のために尽くすのだぞ」
と、石の箱を山頂に埋め、磐梯明神として祭ったといいます(『日
本伝説大系』)。

 空海に救われた村人は、山名を磐梯山と改名。山頂の肩にある弘
法清水と空海の大使像は、この伝説がもとになっているそうです。
やがて空海は山麓に恵日寺を創建し、山号を磐梯山としたという。

 空海がこの寺にとどまること3年、大同5年(平安時代)、徳一
に寺を属して京に帰った(『奥州会津恵日寺縁起』)とあります。い
までも怪物・手長足長は、山頂に積まれた岩の間に磐梯明神の石碑
が埋められて、時々うめき声が聞こえるとか聞こえないとか。

 しかし、これについては何の証拠もなく、実際には磐梯山爆発に
よる災害鎮護のため、空海のあとを継いだとされる徳一上人が古城
ヶ峰南麓磐梯町に恵日寺を建て、磐梯山の神・磐梯明神を鎮守(磐
梯神社は恵日寺のわきにある)としたものだろうということになっ
ています。

 10月、磐梯山は紅葉がまっ盛り。裏磐梯五色沼近くのキャンプ場
にテントを張りっぱなしにして、五色の沼の色をめでながらスキー
場から磐梯山に登りました。茶色になって白煙をはき、キツイ硫黄
の臭いを嗅ぎながら、登山道わきの赤く熟したグミを摘んで口に運
びます。

 中ノ湯あたりから地元中学生の集団登山と出くわしました。ワイ
ワイガヤガヤ、歩いている登山道のを子どもたちが追い抜いてうっ
とうしい。弘法清水小屋前はそのほかの登山者も混じってそれこそ
芋を洗うようです。

 それからは道も一段と細くなり、押すな押すなのにぎやかさにな
ってしまいました。山頂へ登る階段は順番待ちの列。足長どころか
「くび長」になるありさまでした。



▼磐梯山【データ】
【所在地】
・福島県耶麻郡猪苗代町と磐梯町、北塩原村との境。磐越西線猪苗
代駅の北西7キロ。JR磐越西線猪苗代駅からバス、磐梯高原駅か
ら歩いて4時間20分で会津磐梯山。三等三角点(1818.6m)と皇高
天原命の石碑、磐梯明神の石碑がある。地形図に山名との標高の記
載あり。三角点より北方向450mに弘法の清水と弘法清水小屋があ
る。
【名山】
・深田久弥氏選定「日本百名山」(第22番に選定):日本二百名山、
日本三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎氏選定「新日本百名山」(第25番に選定・福島県)
【位置】
・三角点:北緯37度36分03.49秒、東経140度04分20.06秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「磐梯山(福島)」

▼【参考文献】
・『奥州会津恵日寺縁起』:(『山岳宗教史研究叢書7』(名著出版)
1977年(昭和52)に所収
・『角川日本地名大辞典7・福島県』小林清治ほか編(角川書店)1
981年(昭和56)
・『新編会津風土記2』1809(文化6)年編纂:(「大日本地誌大系
・第31」(雄山閣)所収
・『日本伝説大系3・南奥羽・越後』(山形・福島・新潟)大迫徳行
ほか(みずうみ書房)1982年(昭和57)



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【とよだ 時】 山と田園風物ゆ-もぁ漫画
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 (主に画文著作で活動)
【ゆ-もぁ-と】事務所
山のはがき画の会
from 20/10/2000


 

 

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