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CD本【新・山の神々いらすと紀行】(02)
とよだ 時(とよた時)

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▼那須茶臼岳・殺生石の九尾の狐

【概略文】
 那須の温泉神社近くの殺生石は、毒ガスが発生する妖狐譚が伝わ
っています。平安後期、鳥羽院の寵愛を集めた「玉藻の前」。ある
とき宮中で怪異が起き、陰陽師が占うと玉藻のせいと分かりました。

 すると玉藻は忽ち狐となって那須野ヶ原へ逃げました。朝廷は家
来に命じ狐を射殺させます。すると狐の霊が石になり祟(たた)っ
たという。その後日源翁和尚が通りかかり石に偈を唱え杖をひと振
り、石はたちまち粉々に割れたという。

 ある秋、三斗小屋温泉に一泊、茶臼岳の無限地獄の熱湯でゆで卵
を作り、南月山を通り、温泉神社といまでは県の指定史跡になって
いる殺生石を訪ねました。

 あたり一帯は硫黄ガスと酸性の温泉水で草木一本生えていませ
ん。この様子を見た人たちは、妖狐玉藻前の執念のなせるわざと思
ったのも無理もないような光景でした。
・栃木県那須町

▼那須茶臼岳・殺生石の九尾の狐

【本文】
 栃木県那須温泉のシンボル殺生石はその名も温泉神社近くにあり
ます。この石は毒ガスを発生するといい、玉藻の前(たまものまえ)
という妖狐譚が伝わっています。玉藻の前は、天竺から那須に移り
住んだ800歳ともいう年のくった金毛九尾の狐の化身だという。

 鎌倉時代初期の『玉藻前物語』という本に「主上近衛院の御宇<
ぎょう・御代(みよ)>久寿(きゅうじゅ)元年(1154・平安時代)
□□(欠字・甲戌?)春の比(ころ)□(欠字・鳥?)羽院の仙洞
(せんとう)に齢廿計(はたちばかり)の化女一人出来(いでき)
たりその容貌をいわは翡翠のかむさしうるわしく嬋娟(せんけん)
のよそおゐこまやかなり…人にすくれ世法(せほう)仏法(ぶっぽ
う)共知らずと云事なし…しかのみならす才覚依りて至尊寵愛(し
そんてうあい)のあまりに玉座近くにめされて…うんぬん」とあり
ます。

 つまり、鳥羽院の御所に、どこのものとも知れない「化女」とい
う美女があらわれた。「化女」は、名前を「玉藻の前」と改め、た
ちまち鳥羽院の寵愛を一身に集めるようになった。あるとき、宮中
で宴が催され、管弦が最高潮になったとき、殿閣がゆれて燭火が消
えました。すると天皇の座の下にいた寵姫の玉藻の前の身から光が
出て、殿階を照らしました。

 そしてそれから天皇は病気になったという。阿部泰成という陰陽
師が占った結果、玉藻のせいと分かりました。ばれた玉藻はたちま
ち狐に変身し、東の方に向かって逃げ出しました。朝廷は三浦介(み
うらのすけ)義明、千葉介常胤、上総権介(ごんのすけ)広常らに
命じて狐を射殺させたという。(このころはまだ、殺された狐の魂
がこり固まって石になったという話はありません)。

 そして江戸時代に入ると殺生石の話がいろいろな書物に登場する
ようになりました。江戸中期の「和漢三才図会」(寺島良安)には、
「朝廷は三浦介義明、千葉介常胤、上総権介広常に詔して、その狐
を下野州(しもつけのくに)那須野で狩らせた。義明は狐を射殺し
た。それよりのち百年余、狐の霊は石となったのである。俗に「殺
生石(せっしょうせき)」という。その石に触れると、鳥獣人民は
みな死ぬ」と書かれています。

 鎌倉時代中期、天皇からみことのりを受けた源翁禅師という僧が、
石の傍に行き、「法法塵塵端的低、本来の面目いまだ蔵(かく)れ
ず、現成公案大難事、異類中行度量に任す」と偈(げ)を唱え、?
杖(しゅじょう)を挙げて激しく一下ろしすると石はたちまち破砕
した」というのです。

 また「一説によればたまたま那須野原を通ったとき、老父から殺
生石のはなしを聞き、石に偈(げ)を唱えると石は3つに裂けて飛
び散り、石霊はいなくなった」ということです。

 ある秋、三斗小屋温泉に一泊、茶臼岳の無限地獄の熱湯でゆで卵
を作り、南月山を通り、温泉神社といまでは県の指定史跡になって
いる殺生石を訪ねました。殺生石があるこのあたり一帯は湧き出る
硫黄ガスと酸性の温泉水で草木一本生えていません。

 芭蕉も「石の毒いまだほろびず、蜂・蝶のたぐひ、真砂の色の見
えぬほどかさなり死す」と『おくのほそ道』に書いています。現在
は噴出量は減少しているといいますが、かつてはそのありさまを見
た当時の人たちは、妖狐玉藻前の執念のなせるわざと思ったのも無
理もないような不気味な光景でありました。



▼那須殺生石【データ】
★【所在地】
・栃木県那須郡那須町。JR東北本線黒磯駅からバス、那須湯本下
車殺生石。地形図に殺生石名と石碑記号のみ記載。付近に鳥居記号
がある
★【位置】
・殺生石:北緯37度06分6.98秒、東経139度59分56.55秒
★【地図】
・2万5千分の1地形図「(那須岳(日光)」or「那須湯本(白河)」(2
図葉名と重なる)



▼【参考文献】
・『下学集』(かがくしゅう):室町中期の国語辞書。
・『角川日本地名大辞典09・栃木県』大野雅美ほか編(角川書店)1
984年(昭和59)
・『古代山岳信仰遺跡の研究』大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『玉藻前物語』(文明2年・1470・鎌倉時代初期)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本伝説大系4・北関東』(茨城・栃木・群馬)渡邊昭五ほか(み
ずうみ書房)1986年(昭和61)
・『日本妖怪異聞録』小松和彦(小学館)1992年(平成4)
・『日本歴史地名大系9・栃木県』寶月圭吾ほか(平凡社)1988年
(昭和63)
・『名山の日本史』高橋千劔破(ちはや)(河出書房新社)2004年(平
成16)
・『和漢三才図会・10』(東洋文庫487)(巻第66〜巻第68)寺島良
安(島田勇雄ほか訳)(平凡社)1988年(昭和63)



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【ゆ-もぁ-と】事務所
山のはがき画の会
from 20/10/2000


 

 

 

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