(フェイスブック・ツイッター・mixi・メールマガジン・ブログ)

【本文】のページ
山旅伝説伝承【ひとり画展】(10) 【とよだ 時】


……………………………………
▼838号「カールが売りの北アルプス・薬師岳」

・【簡略説明】
太陽の加減で1日に5回色が変わるといわれる薬師岳。東斜面には
南から北へ南陵カール、中央カール、金作谷カール、そして北カー
ル(不明瞭)と、4つの大カールががならび、薬師岳の圏谷群とし
て、昭和27(1952)年、国の特別天然記念物に指定されています。
・富山県富山市。

▼838号「カールが売りの北アルプス・薬師岳」

・【説明本文】
 富山県富山市(旧上新川郡大山町)にそびえる、北アルプス薬師
岳(2926m)は本当に雄大でどっしりとしています。山頂には立
派な祠が建っており、中に薬師如来や観音像が鎮座しています。祠
の屋根の下には鐘がぶら下がっていて、時おり登山者が鳴らす音が
響きます。薬師岳から北へ歩いて40分位のところに北薬師岳があ
り、南へ1時間足らずのところに薬師岳山荘があります。

 「富山県山名録」によれば、この山は「太陽で1日に5回色が変
わるといわれ、夕日に赤く染まる姿はとくに美しい」という。東斜
面には南から北へ南陵カール、中央カール、金作谷(だん)カール、
そして北カール(谷壁が崩壊した不明瞭)と、4つの大カールがな
らび、薬師岳の圏谷群として、昭和27(1952)年、国の特別天然
記念物に指定されています。その直下に黒部渓谷の上廊下があって、
そこを隔てて雲ノ平、その先に水晶岳、ならんで赤牛岳が望めます。
西側ふもとには有峰ダムにせき止められた有峰湖があります。

 この湖底には、かつては平家の落人が開いたとつたえる有峰の村
がありました。そこにはこんな伝説が残っています。昔、この村に
駕籠の担架棒作りを仕事としているミザの松という貧しい職人がい
たそうです。

 ある日、担架棒を作る木を探しに行ったのか、「ミザの平」とい
うとところで、ついウツラウツラとしてしまいました。すると「ミ
ザの松、ミザの松」という声で目をさますと光り輝く薬師如来がお
わします。ミザの松は驚いて如来のもとにかけ寄ると如来は遠くに
おわします。みざの松がかけ寄ると如来はまた遠くにおわします。

 後を追いかけていくうちに次第に山が高くなり、如来は如来は五
ノ目の自然石でできたお堂に入って姿が消えたというのです。「こ
れはきっと薬師如来がこの山にお堂を造らせるために導いたのだ」
と思ったミサノ松は、山頂にお堂を建て、村に里薬師をも建立、薬
師如来をまつったといいます。

 以前、有峰村には旧暦6月25日の「岳の薬師」というお祭りが
あって、村民の15歳から50歳までの男子が登山参拝する習わしが
あったという。祭りの1週間も前から厳重な物忌みが行われ、家か
ら出るときには塩で身を清め、なおも太郎兵衛平や薬師岳の雪氷で、
3回けがれを落とす習わしだったという。

 頂上手前180mからは素足になり、山頂にヒエでつくった白酒の
御神酒をあげ、願いごとのある人は鉄板を切り抜いた剣を奉納した
といいます。ここもかつては女人禁制の山で、当時は女性は真川谷
で引き返す掟だったという。奉納した鉄剣は長さ4〜5寸、厚さは
さまざまで、ある文献には1955年(昭和30)ころまであったがい
まはないとあります。しかし私が訪れた時は祠の前には剣の形をし
た鉄板がたくさん散らばっていました。のちにお参りした時のもの
でしょうか。

 「薬師岳の信仰と有峰びと」(広瀬誠)によれば、かつて山頂の
祠は白木造りで南面間口8尺、奥行き3尺くらいで、三つに仕切ら
れ、左側が薬師如来、真ん中が宝蔵になっており、右側が山の神を
まつってあったという。江戸時代文化12年の「有峰御薬師参詣」(浮
田家文書)には「東ノ御間 御薬師尊・御地蔵尊「中ノ間 御たか
ら也」「西ノ御間 山ノ御神」とありお地蔵さんも合わせまつって
いたこともあったという(「薬師岳の信仰と有峰びと」)。

 まつられていた薬師如来は1尺7、8寸の黄金立像で、百数十年
前に盗まれて大阪へ売られたことがあったという。その時「有峰に
帰りたい」というご託宣があり、恐れて送り返したといいます。し
かし、その後再び盗難にかかり、現在行方不明になっているそうで
す。いまある薬師岳山頂の祠は1959年(昭和34)、旧上新川郡大
山町観光協会の手で再建されたものというから丈夫にできているも
のですね。

 屋根の岩をたくさん乗せ、ガラス戸で中が見えるようになってい
ますが、風雪によく耐えるものです。中は金色の焼きし如来がよく
目立ち、向かって左方に赤や黄色、青い布で編んだ紐のようなもの
が下げられています。そのわきに色彩を施した神像がまつられ、薬
師如来の右側には山の神でしょうか、錫杖を持った手に大きな数珠
をかけられた像が恐い顔をしてにらんでいます。

 役ノ行者のようですが、頭に二つ瘤のような角があります。その
後ろには古書にあるようにやはりたくさんの石仏がならんでいま
す。有峰の村は1920(大正9)年、県営ダム建設のため全域を県
が買い上げ、住民は全員、富山や大庄、大沢野、舟津などに移住し
たそうです。


▼薬師岳【データ】
【所在地】
・富山県富山市旧大山町各地区名(旧上新川郡大山町)。富山地方
鉄道立山線有峰口駅の南東19キロ。富山地方鉄道立山線有峰口駅
からバス・折立から歩いて8時間で北ア薬師岳。二等三角点
(2926.01m)と祠がある。
・【位置】
・三角点:北緯36度28分7.88秒、東経137度32分41.2秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「薬師岳(高山)」


▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典16・富山県」坂井誠一ほか編(角川書店)
1979年(昭和54)
・『山岳宗教史研究叢書10・白山・立山と北陸修験道」高瀬重雄編
(名著出版)1977年(昭和52)
・『山岳宗教史研究叢書16・修験道の伝承文化」五記重編 (名著
出版)1981年(昭和56)
・『新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『富山県山名録」橋本廣ほか(桂書房)2001年(平成13)


▼84円切手50枚で、毎月1年間、このような通信を郵送しています。
・伝説伝承の山旅通信ひとり画っ展(見本をどうぞ)


…………………
▼【広告】(書店で発売中)
−山の伝承伝説100を集めた本−
・店頭にない時は店員の方にご注文を。
陽気な山の怪々本
妖怪・鬼・天狗などはみな神サマ。村人は山に神をまつった。
ヤマケイ新書 『日本百霊山』 税込968円 (山と渓谷社)

アマゾン、楽天ブック、紀伊国屋書店スなら確実に入手できます
▼<アマゾン 広告>
日本百霊山 伝承と神話でたどる日本人の心の山 (ヤマケイ新書)
▼<楽天ブックス 広告>
https://books.rakuten.co.jp/rb/14400530/?l-id=c-as-img-02
▼<紀伊国屋書店 広告>
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0353002


…………………
▼パソコンで読む、こんなCDブックもあります
10伝説伝承の山旅通信【ひとり画っ展(全バックナンバー)


…………………

ほかの
CDブックはこちらをご覧下さい。

…………………
【とよだ 時】 山の伝説伝承探査
山旅通信【ひとり画っ展】発行
U-moあ-と】すたじお
山旅はがき画の会
from 20/10/2000


アクセス数:【gate10

TOPページ
………………………………………………………………………………………………