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山旅伝説伝承【ひとり画展】(09) 【とよだ 時】


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983号「東京奥多摩・芋木ノドッケ」
・【簡略説明】
奥多摩長沢背稜にある「芋木ノドッケ」という山は、登山用地図に
は芋木ノドッケと芋ノ木ドッケの文字がならんでいます。イモギと
イモノキ、どっちでしょうか。秩父三峰方面の古老は、いまもイモ
ギと発音しており、コシアブラの異名のイモギが多く生えている突
起(尖峰)の意味らしい。
・東京都奥多摩町と埼玉県秩父市との境

983号「東京奥多摩・芋木ノドッケ」

・【説明本文】
 奥多摩雲取山から長沢山、酉谷山方面の長沢背稜に入ると最初に
「芋木ノドッケ」という山があります。国土地理院発行の2万5千
分の1地形図「雲取山」には、「芋木ノドッケ」、登山用地図には芋
木ノドッケと芋ノ木ドッケがならんでいます。「ドッケ」はトッキ、
トッケ(突起、尖峰)からきている名前。

 しかし、この「イモギ」か、「イモノキ」が問題で、昔から議論
のもとになっています。明治時代のの本『多摩郡村誌』(「多摩郡の
山川」)にはイモギとなっており、それをもとに書いた『武蔵通(誌)
山岳編』も、もちろんイモギと記載されています。しかし、秩父地
方ではイモノキというようです。

 ちなみに『多摩郡村誌』は、明治11(1878)年、斉藤真指(ま
さし・幕末-明治時代の歴史家で、高水三山にある青渭(あおい)神
社神職)の編集編纂の書。また『武蔵通(誌)山岳編』は、地理学
者の河田羆(たけし)が、1894-1895(明治27〜28)ごろに著し
た私撰地誌です。

 さて、イモギと呼ばれる木とはなんの木か。イモノキはどんな木
なのでしょうか。この問題について、『奥多摩』の著者宮内敏雄氏
は、明治時代の登山家の木暮理太郎氏から聞いた話として同書に述
べています。ちょっと長いですが転載しました。

 「…イモギとイモノキ、どちらにしようかと実は小生も迷って居
りました。イモノキは「武蔵通志」で初めて知ったのですが、其後
「郡村誌」を見ましたらイモギとなってゐます。「武蔵通志」は「郡
村誌」を基として書いたものですが、河田氏のことですから無論無
条件に取り入れたものではあるまいと思ひます。…

 …しかし原本にしたがってイモギとした方がよいと思ひ、…(中
略)…。イモギの俗称ある木はタカノツメ、コシアブラ(アブラギ、
ゴンゼツ等の名あり)、コガノキ、カクレミノ、およびヒチニキと
5種類あるようです。…(中略)…。タカノツメは間違ひなくイモ
ノキの俗称がありますが、コシアブラの方は普通イモギですが、そ
れでもイモノキといふのもあるのを三峰で聞き知った記憶がありま
す。…

 …両者ともウコギ科の植物ですが、タカノツメの葉は長い葉柄の
先に三小葉がありコシアブラの方はそれよりも更に長い葉柄の先に
五小葉があるのですから葉の形を聞いただけで両者を間違へること
はありません。両者とも木は軟(らか)で白い丸箸や下駄なぞを造
ります。両者とも秩父にあるさうです。さて問題の山にはどちらが
ありますか未だ実地に調べたことはありませんが、大木となるのは
コシアブラの方で、タカノツメはコシアブラほど大きくはなりませ
ん。…

 …若し大木があったとすればコシアブラでせう。従ってイモギの
方がよい訳で、よし両者ともあるにしても「郡村誌」(※イモギ)
に従ふのがよいと思ひます。但し、イモノキと呼ぶ人のあったこと
も確かですから、イモノキはブラジル産のみとは限っているわけで
はありません。日本のイモノキはブラジルのものよりずっと堅いで
すから、ステッキで突き刺すことなどはできません。尤も木曾では
コシアブラをナマドウフなどと軽蔑してはゐますが…」とあります。

 それをふまえ、宮内敏雄は、「三峰方面の古老の謂う山名由来は、
今でもイモギと発音しているから、木暮先生のお説の如くコシアブ
ラの大木としてよいであろう」としています。結局は、コシアブラ
の異名である芋木(イモギ)の大木が多く生えている尖峰に落ち着
くようです。また同書は、埼玉県秩父地方、三峰山東ろくを流れる
大血川方面では、芋木のドッケあたりを白岩山と呼んでいるとして
います。

 つまり白岩山は南峰、北峰に分かれていて、三角点は北峰にあり、
両者の中間はヒラは「ソーデーラ」と呼んでいるとか。また芋木の
ドッケはニョングラとも呼ぶといいます。芋木のドッケの山頂は樹
木のなかで展望はききません。雲取山方面から長沢背稜縦走のおり
に、山頂を通過する場合が多く、この山だけを目的に登る人はほと
んどいません。

 ちなみに三峰山方面に向かう途中にある白岩山(三角点1921.3
m)には北陸石川県にある白山の白山妙理大権現を勧請したと、1933
年(昭和8)の三峰山観音院記録下書にあるそうです。また三峰本
社にも白山権現がまつられていたといます(天明3年(1783)の観
音院別当(神社の経営管理を行う)性幢が京都聖護院に宛てた口上
書控えによる)。

▼芋木ノドッケ【データ】
【所在地】
・東京都西多摩郡奥多摩町と埼玉県秩父市大滝(旧秩父郡大滝村)
の境界にある。JR青梅線奥多摩駅三峰駅からバスで鴨沢下車、歩
いて5時間で雲取山。さらに2時間で芋木ノドッケ。標高点1946m。
【位置】
・北緯35度52分26.94秒、東経138度57分15.42秒
【地図】
・2万5千分の1地形図:雲取山

▼【参考文献】
・『奥多摩』宮内敏雄(百水社)1992年(平成4)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)


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