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【新・ふるさとの神々なんでも事典】01
【とよだ 時】

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◆こんな話をみつけました◆

▼人魚の肉を食べて800年生きた女性仙人・八百比丘尼

【略文】
八百比丘尼(はっぴゃくびくに)という尼さんも不思議な人です。
800歳になっても美しい容姿が衰えず、まるで15、6歳に見えたと
いう。ひと目見ようとする群衆が押し寄せ入場料を取って見せたと
いう。この時尼の年齢が800歳で、300年余り前の源平の盛衰も目の
当たりに見たと話しているそうです。

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▼人魚の肉を食べて800年生きた女性仙人・八百比丘尼


【本文】


 山に天狗や仙人はつきものですが、女性の仙人もいるのはあまり

聞きなれません。その名は、八百比丘尼(はっぴゃくびくに)とい

う尼さん。この人も不思議な人です。800歳になっても美しい容姿

が衰えず、まるで15、6歳に見えたというから、今どきのエステな

ど足もとに及びません。



伝説上の人ながら、室町時代の1449年(文安6)の5月、本物の

八百比丘尼が、若狭国(わかさのくに・福井県南西部)から上洛し、

京に出現したという記事が、『康冨紀』や、『臥雲日件録』(がうん

にっけんろく)という本などにあります。



 八百比丘尼は、色白で気品あり肌や姿も若々しく、「白比丘尼」

とか「八百姫」と呼ばれ、それをひと目見ようとする群衆が集まっ

たという。そして八百比丘尼が泊まっている庵に押し寄せてきたた

め、ついには入場料を取って門の中に入れたという。



その姿は御簾(みす)を通してしか見られませんでしたが、大勢

の人が列をなして見物したという話があります。この時、尼の年齢

が800歳で、300年余り前の源平の盛衰も目の当たりに見たし、越前

(福井県中北部)で、義経が弁慶や数人の従者が山伏姿で、奥州に

落ちていくのに出会ったことがあると話していますからすごい。



 比丘尼は白いツバキが好きで、諸国を行脚の時、植えて歩き各地

に普及させたといわれています。現に比丘尼が訪れたといわれる東

北地方の海岸一帯には、ツバキの木の森が茂っており、そこは聖域

になっています。



 ツバキの木ばかりでなく、隠岐島には八百比丘尼杉というのがあ

り、また埼玉県大宮市慈眼寺仁王門のかたわらにある大きなエノキ

は、若狭の八百比丘尼が植えたと伝えられ、八百姫にかかわる延命

地蔵もあります。



 また群馬県利根郡月夜野町(いまはみなかみ町)地方には、八百

比丘尼出生の伝説があり、ツバキの種が飛び散って、同郡白沢村に

は八百比丘尼の植えた片葉のサクラ、鐘かけの松・逆さイチョウな

どがあるそうです。



 しかし長生きだけがいいことではありません。自分の長寿を恥じ

た八百比丘尼は、故郷にある空印寺の洞くつににこもってしまい、

人とも会わず静かに入定したといいます。洞くつは「八百比丘尼堂」

といわれそばにツバキの木も植えてあります。寺には木彫りに彩色

し右手にツバキを一枝持つ八百比丘尼像があっています。空印寺の

うしろの山を「白椿山」といい、山頂には八百姫大明神もあります。



 八百比丘尼は、福井県若狭の国小浜(小浜市)の生まれで、空印

寺(くいんじ)というところの洞窟に住んでいたという。ある日、

八百比丘尼の父が小浜湾で人魚を釣ってきました。少女時代の八百

比丘尼は、それをこっそり食べたのです。それからというもの、比

丘尼は長生きできるようになり、1000年の寿命をもらいました。そ

のうち200歳を国主に譲ったので自分の分は残り800歳なのだとする

説もあります。また九穴の貝(アワビ)を食べたためという説もあ

ります。



 ところが、誕生の地とする所は各地にあるから困ります。千葉県

松戸市六軒新田にはこんな伝説があります。八百比丘尼はここで生

まれたという。昔々、この村の長者が屋敷に6人の近所の村人を招

いて、食事を出すことになりました。その時、食いしん坊の男が待

ちきれずこっそり台所をのぞきました。なんと、台所では人魚の肉

を調理しているではありませんか。



 驚いた食いしん坊の男は、あわててほかの者に告げました。それ

を聞いた村人一同は気味悪く思いましたが、長者からの招待という

こともあり、ことわるわけにもいきません。村人たちは食事を受け

取ると早々に逃げだし、それぞれ道すがらその食事を捨ててしまし

た。



 そのなかに耳の遠い男がいて、その話を全く聞こえていませんで

した。なにも知らない男は、長者の家から貰った食事をそっくり家

に持って帰り、自分の娘に食べさせたのです。それからというもの、

娘はぜんぜん年をとらなくなり、いつまでも若く美しいままでした。

村人はそんな娘を気味悪がりました。そんなことからだんだん娘は

その土地に居づらくなり、いつしか遠い若狭国に住みかえて尼さん

となったということです。

 八百比丘尼は、全国を行脚し、貧しい人を助け、ツバキの種をまき、

花を咲かせた後、若狭に戻り亡くなったという。若狭の洞穴の入口

には当時を忍ぶツバキの花が、いまも咲き誇っていて、健康長寿を

願う人々のお参りが絶えないということです。



▼【参考文献】
・『仙人の研究』知切光歳(大陸書房)1989年(平成元)
・『日本架空伝承人名事典』大隅和雄ほか(平凡社)1992年(平成4)
・『日本神話伝説総覧』歴史読本特別増刊(新人物往来社)1992年
(平成4)
・『日本神話伝説伝承地紀行』(吉元昭治著)(勉誠出版)2005年(平
成17)
・『日本伝奇伝説大事典』編者・乾勝己ほか(角川書店)1990年(平
成2)
・『日本伝説大系・5』(南関東)宮田登ほか(みずうみ書房)1986
年(昭和61)
・『日本の民俗・群馬』都丸十九一(第一法規出版)1976年(昭和5
1)
・『柳田國男全集5』柳田國男(ちくま文庫/筑摩書房)1989年(昭
和64・平成1)




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