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【山のまん画ばなし】(09)
【とよだ 時】

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▼丹沢・大山阿夫利神社下社豆腐の碑

【概略説明】
昔から大山参りには手の上にのせた豆腐をすすりながら
登ったものだという。江戸時代、押し寄せる参詣者へ供
給する大量の食料が必要になってきました。大量の食料
を保存するには、冷たい井戸水につけておける豆腐が最
適。豆腐は絹ごしと木綿ごしのちょうど中間だそうです。
下社わきには豆腐の碑も建っています。
・神奈川県伊勢原市。

ご用とお急ぎでない方は下方の【本文】もどうぞ。

【本文】
 神奈川県の丹沢大山は、なぜか豆腐が名物です。昔か
ら大山まいりには、手の上にのせた豆腐をすすりながら
登ったものだそうです。いまも大山の参道わきには、豆
腐料理屋がたくさんならんでいます。大山は都心からも
近く気軽に登れる山。大山登山のついでに豆腐料理を食
べる人も多い。


 平安時代から石尊信仰で朝廷の庇護を受けていた大山
(相模地方にあるので相模大山とも呼ばれています)。
大山信仰は、武士の世になっていよいよ盛んになりまし
た。しかし全国的に知られるようになるのは庶民に大山
信仰が広まった江戸時代。隆盛を極めたのが宝暦年間(1
751〜64)。一シーズンに20万人もの参詣客でにぎわっ
たという。


 そんな大山ですから、宿泊施設も木賃宿から旅籠(は
たご)」と変わり、先導師たちが食べていた精進料理の
豆腐料理も、もてなしの賄いになっていきます。これほ
どの参詣者への大量の食料保存するには、冷たい井戸水
につけておける豆腐が最適です。


 また、豆腐を作るための良質の水が大山にはあります。
その上、豆腐料理の作り方を行者や僧が知っているなど、
名物の豆腐ができあがるには、条件もそろっていたよう
です。豆腐は絹ごしと、木綿ごしのちょうど中間だった
そうです。下社わきには豆腐の碑が建っています。


 この豆腐をすすりながらお参りするのが有名な「大山
まいり」。山頂の女人禁制(にょにんきんぜい)である
奥の院「石尊大権現」にお参りするため、各地に「大山
講」がありました。


 講の誕生したのは、江戸時代の元禄時代の初期といわ
れています。江戸の末期編集の『開導記』という本には、
関東もちろんのこと、静岡、愛知、山梨、長野、新潟、
福島にまで及んでいて、その信者数は91万9690戸にも
達していたと出ています。


 講中の大山参拝の時期は、旧暦6月27日から7月17
日までの20日間で、この間を(1)初山、(2)七日山、
(3)間(あい)の山、(4)盆山の四つに分けていた
そうです。


 (1)は6月27日〜月末までの時期、(2)は7月1
日〜7日までを、(3)は7月8日〜12日まで、(4)
は7月13日〜17日までの参拝だったという。この期間
だけ山頂の石尊社まで参拝が許され、それ以外は中腹の
不動堂までと限られていたそうです。


 寛政9年(1797)の『東海道名所図会』に、「石尊大
権現社、本堂奧不動より峻路二十八丁あり。女人結界な
り。勿論常に諸人の参拝を禁ず。毎歳六月二十七日より、
七月十七日まで参詣を免(ゆる)す。江戸近郊群参する
こと夥し。道中筋大(い)に賑ふ。常は本堂の傍なる中
門を閉じて登山なし」と見えます。


 この20日の間に、参詣人が殺到するのですから、も
のすごい混雑です。この「大山まいり」は落語にも出て
くるほどのブームを呼びました。俳諧では、「大山まい
り」が夏の季題になっているくらいです。ちなみに、旧
暦では6月までは夏で、7月から秋になります。



▼大山阿夫利神社下社【データ】
【所在地】
・神奈川県伊勢原市。小田急小田原線伊勢原駅の北6キ
ロ。小田急伊勢原駅からバス、大山ケーブル駅からケー
ブル利用下社駅下車で阿夫利神社下社。地形図に神社の
文字と建物記号のみ記載。

【ご利益】
・【大山阿夫利神社】:開運招福・商売繁盛・交通安全
・厄除け

【位置】
・阿夫利神社下社:北緯35度25分56.07秒、東経139度14
分16.24秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「大山(東京)」

【山行】
・某年7月19日(木曜日・晴れ)



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編
(角川書店)1984年(昭和59)
・『古代山岳信仰遺跡の研究』大和久震平著(名著出版)
1990年(平成2)
・『新編相模風土記稿』(巻之五十一 村里部 大住郡
巻之十 糟屋庄):『新編相模国風土記3』(大日本地誌
大系21)編集校訂・蘆田伊人(雄山閣)1980年(昭和55)
・『日本歴史地名大系14・神奈川県の地名』(平凡社)
1984年(昭和59)

▼CDブック新・丹沢山ものがたりから引用しました。
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