【本文】のページ
【新・丹沢山ものがたり】(02)
【とよだ 時】

……………………………

表尾根の登山基地・新ヤビツ峠

【概略文】
 丹沢表尾根縦走の登山基地で、大山への裏口登山口としておなじ
みのヤビツ峠。この峠には駐車場やトイレ、売店もあり、冬期以外
はバスの運行があって、多くの人たちが訪れます。

 ところで地図などには、カタカナでヤビツ峠になっていますが、
漢字では「矢櫃峠」と書くという。この峠は新しい峠。本当のヤビ
ツ峠は、ここの西方、(岳の台の中腹)にあり、秦野地区と札掛地
区を結ぶ間道の峠になっていました。

 そこは旧ヤビツ峠ともいい、いまは廃道になっています。かつて
この旧ヤビツ峠を改修中、峠の付近から戦で矢を入れる櫃(矢櫃)
が発掘されたためその名があります。

 このあたりは戦国時代、小田原の北条と甲斐の武田氏との間で、
烈しい戦が何回か交わされ、双方ともおびただしい死者が出たと伝
えられています。

 矢櫃はその時使われたものと思われます。新ヤビツ峠は1934年
(昭和9)に、丹沢林道が開かれたのに伴ってできたものです。
・神奈川県秦野市。


▼御用とお急ぎでない方は下方に【本文】もあります。

表尾根の登山基地・新ヤビツ峠


【本文】

 丹沢表尾根縦走の登山基地で、大山への裏口登山口としておなじ
みのヤビツ峠。西へは丹沢表尾根から塔ノ岳へ至り、東へは「イタ
ツミ尾根」を経て大山に至ります。その鞍部にヤビツ峠はあります。

 この峠には駐車場やトイレ、売店もあり、冬期以外はバスの運行
があって、多くの人たちが訪れます。ところで地図などには、カタ
カナでヤビツ峠になっていますが、漢字では「矢櫃峠」と書くとい
う。

 この峠は新しい峠。本当のヤビツ峠は、ここの西方、(岳の台の
中腹)にあり、秦野地区と札掛地区を結ぶ間道の峠になっていまし
た。そこは旧ヤビツ峠ともいい、いまは廃道になっています。

 かつてこの旧ヤビツ峠を改修中、峠の付近から戦で矢を入れる櫃
(矢櫃)が発掘されたためその名があります。このあたりは戦国時
代、小田原の北条と甲斐の武田氏との間で、烈しい戦が何回か交わ
され、双方ともおびただしい死者が出たと伝えられています。矢櫃
はその時使われたものと思われます。

 新ヤビツ峠は1934年(昭和9)に、丹沢林道が開かれたのに伴
ってできたもの。新しい車でも通れる峠ができれば、古い峠は通る
者がいなくなります。旧ヤビツ峠は廃道になってしまいました。し
かしいまでもその痕跡はあり、旧峠の南には岳の台からの尾根がの
び、中腹には昔の峠道が深い樹林の中に消えています。

 これら丹沢林道開発のなかで、地元の人の涙ぐましい努力があっ
たことを忘れてはなりません。1931年(昭和6)〜1932年(昭和
7)につくられた蓑毛からヤビツ峠への「柏木林道」の開発があり
ます。ヤビツ峠でバスに乗り遅れたりした時お世話になる登山道で
す。

 これがあるのはひとえに、秦野の柏木幹太氏親子の力のたまもの。
代々が大山の先導師であった親子は、秦野町から蓑毛に至る県道や
丹沢林道(県道秦野津久井線)の実現のため、神奈川県に陳情を繰
り返すのでありました。

 同時に私財を投じてついに柏木林道を完成させたのです。これが、
幅2m、全長2412mの柏木林道です。それを記念して蓑毛のバス
停脇には柏木幹太氏の歌碑が建っています。歌碑には、「この山の
 ひとつをぬきて生きがひの ややにありとは みづからもおも
ふ」と刻まれています。

 横の子どもの像は、「東京少年 キャンプ連合発祥の地」のもの。
1958年(昭和33)になり、秦野郷土文化会の呼びかけにより、歌
碑のとなりに顕彰碑が建立されたものだそうです。

 なお、蓑毛橋から金目川沿いにヤビツ峠へ向かって登っていくと
常夜灯があります。この常夜灯は1804年(文化元)に造立された
塔で、右は大山道、左が柏木林道との道標が建っています。

 この林道を完成させた柏木幹太氏は、父の米吉氏とともに、蓑毛
の林道整備に努力したのでした。蓑毛から柏木林道に入り、しばら
く登って行き、沢を渡り右手のわき道を10数分行くと、「髭僧の滝」
があります。

 周辺は雑木林で流れ落ちる姿は神秘的です。「髭僧の滝」はその
昔、秦野市蓑毛の宝蓮寺大日堂の「春獄」という僧が修行した滝だ
そうです。春獄は胸まである長い髭が生えていたということです。

 またさらにヤビツ峠方面に登ると、右側斜面は一面のミツマタの
花で埋まります。秦野駅からのバスは、蓑毛を経由して丹沢林道を
ヤビツ峠をめざして登っていきます。

 途中に「菜ノ花台」という停留所があります。あまりバスから降
りる人はいませんが、ここから見下ろす秦野盆地の眺めが素晴らし
い。サクラの並木が春の楽しみのひとつになっています。



▼ヤビツ峠(新)【データ】
【所在地】
・神奈川県秦野市。小田急小田原線秦野駅の北7キロ。小田急小田
原線秦野駅からバス。(標高761m)。丹沢山地東部の春岳山の山腹
にある。丹沢林道が越える。駐車場、トイレ、売店がある。
【位置】
・ヤビツ峠:北緯35度25分39.97秒、東経139度13分9.66秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「大山(東京)」



▼【参考文献】
・『あしなか9』(会報・総目次)「月報第4号」(山村民俗の会)1948
年(昭和23)
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編(角川書店)
1984年(昭和59)
・「尊仏2号」栗原祥・山田邦昭ほか(さがみの会)1989年(平成
1)
・『丹澤記』吉田喜久治(丘書房)1983年(昭和58)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)



………………………………
▼こんな話がCD本になっています。
『新・丹沢山ものがたり』1500円(送料とも)。
詳細は
こちら(目次)をどうぞ。

 

……………………………………

▼発売中
−山の伝承伝説100を集めた本−

妖怪・鬼・天狗などはみな神サマ。村人は山に神をまつった…。
ヤマケイ新書 『日本百霊山』 税込968円 (山と渓谷社)
▼書店にない時は店員の方にご注文を。

★アマゾン、楽天ブックスなら確実に入手できます)
……………………
▼<アマゾン 広告>
日本百霊山 伝承と神話でたどる日本人の心の山 (ヤマケイ新書)

………………………
▼<楽天ブックス 広告>
https://books.rakuten.co.jp/rb/14400530/?l-id=c-as-img-02

 

……………………………………

−【広告】−
▼こんなCDブック
あります −画と文でつづったCDブック本−

・(01)新・丹沢山ものがたり(山と渓谷社) 既刊のものに大幅加筆改訂。身近な山々が次々に。(送料・税とも1500)
・(02)全国の山・天狗ばなし(自家製作) 各地の山々に君臨する愛すべき妖怪天狗。(送料・税とも1500)
・(03)新・山の神々いらすと紀行(東京新聞) 雑誌「岳人」に連載・出版したものの改訂版です。(送料・税とも1500)
・(04)新・ふるさとの神々何でも事典富民協会)(改訂版) 奇神・変神・おもしろ神。(送料・税とも1500)
・(05)家庭行事なんでも事典(富民協会)(改訂版) 元旦から除夜の鐘まで、その意味と由来。(送料・税とも1500)
・(06)健康(クスリになる)野菜と果物(主婦と生活) 既刊のものに加筆改訂しました。(送料・税とも1500)
(07)ひとの一生なんでも事典(富民協会)(改訂版) 一風変わった冠婚葬祭の本。(送料・税とも1500)
・(08)ふるさと祭事記・歳時記(冨民協会)(改訂版) 忘れていたふるさとの祭りや行事。(送料・税とも1500)
・(09)野の本・山の本(春・夏・秋・冬編)全4巻(誠文堂新光社)全4巻(送料・税とも3500)
・(10)山旅通信【ひとり画ってんの会 毎月、各地の山の伝説伝承イラスト通信が送られてくる。(年間3000)

 

……………………………………

【とよだ 時】 山の伝承探査
………………………………
山旅通信【ひとり画っ展】発行
U-moあ-と】すたじお
山旅はがき画の会
from 20/10/2000
きょう

 

 

 

「峠と花と地蔵さんと…」【トップ】ページへ
………………………………………………………………………………………………