▼山の軽口ばなし
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【とよだ時】(豊田時男
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槍へ槍へとアルプス銀座

【本文】

 北アルプスの登山コースで、よく
表銀座・裏銀座という言葉を耳にし
ます。表だ裏だというのはあまり好
ましくはありませんが、槍ヶ岳を中
心とした登山コースのことのようで
す。

 表銀座コースは長野県安曇野市の
中房温泉を起点として燕岳・大天井
岳の肩・西岳・東鎌尾根を経て、槍
ヶ岳へ至るコース。裏銀座コースと
は同じく長野県大町市の高瀬ダム横
のブナ立尾根登り口を基点。

 そこから烏帽子岳・野口五郎岳・
鷲羽岳・双六岳から西鎌尾根を経て
槍ヶ岳へ至るコースだといいます。
表銀座コースに比べ行程が長く登山
者も少なく静かに歩けるところ。

 また西銀座ダイヤモンドコースと
いうのもあります。これは広義には、
日本海側の剱岳・立山からはじまっ
て、一般的には薬師岳・黒部五郎岳
・三俣蓮華岳から裏銀に合流、双六
岳経由で槍ヶ岳へ向かうコース。表
銀座は長野県側安曇野から見て里に
近い山であり表なのだそうです。

 裏銀座コースは昭和の20年代は、
こちらのコースの方が槍ヶ岳へ至る
メインルートになっていて、いまの
表銀座コースくらいの登山者を集め
ていたそうです。

 そのほかゴールデンコースなどの
呼び方もありかなり混乱ぎみなよう
です。つまるところ、あこがれの槍
ヶ岳へ向かう人気コースで東京銀座
通りのように登山者の多い通りとい
うことなのかも知れません。

 一説に、1922年(大正11)に喜作
新道(表銀座コース・東鎌尾根)を
つくった西岳小屋の小林喜作が、宿
泊客に夕食を出したあと、中房経由
で自宅のあるふもとの穂高町(いま
は安曇野市)まで下山、用事を済ま
せてから、翌朝登山客が目を覚ます
前に小屋に戻り朝食の準備したとい
います。

 その時の格好が、当時銀座で流行
していた草履(ぞうり)履(ば)き
に提灯(ちょうちん)をぶら下げた
という、当時流行していた「銀ぶら
姿」だったのでだれいうとなく銀座
通りの名が定着したとの説もあるそ
うです。

 ちなみに喜作新道ができる前の明
治から大正初期にかけては、槍ヶ岳
を目指すには常念小屋のある常念乗
越から東天井岳を経て二ノ俣谷沿い
に槍沢に下ったといいます。

 そしていまの吊り橋のある付近か
ら槍沢を登りつめて槍ヶ岳に至るの
が一般的だったそうですから、随分
と遠回りをしていたようです。


▼槍ヶ岳【データ】
★【所在地】
・長野県大町市、同県松本市安曇(旧
南安曇郡安曇村)と岐阜県高山市上
宝町(旧同県吉城郡上宝村)との境
(ただし標高点は長野県)。篠ノ井
線松本駅の北西35キロ。松本電鉄新
島々駅からバス、上高地から歩いて
延べ10時間半で槍ヶ岳。写真測量に
よる標高点(3180m)。(二等三角
点は亡失・地形図には記載なし)。
地形図に山名と標高点の標高のみ記
載。

★【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第
54番に選定):日本二百名山、日本
三百名山にも含まれる。
・岩崎元郎選定「新日本百名山」(第
58番に選定・長野県)
・清水栄一選定「信州百名山」(第
68 番に選定)
・田中澄江選定(1981年)「花の百
名山」(第74選定)

★【位置】(国土地理院「電子国土
ポータルWebシステム」から検索)
・槍ヶ岳標高点:北緯36度20分31.0
8秒、東経137度38分51.4秒
・槍ヶ岳二等三角点:二等三角点は
亡失・地形図に記載なし。

★【地図】
・2万5千分の1地形図:「槍ヶ岳
(高山)」

★【山行】
・某年8月15日(金曜日・くもり)


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