▼山の軽口ばなし
本文のページ(08)
【とよだ時】(豊田時男
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▼秩父城峰山の伝説・将門とお猫さま

【略文】
平将門が天慶の乱で城を築いたとの伝説のあ
る城峰山(1038m)。山頂直下の城峰神社に
は将門の守り本尊十一面観音の眷属お猫さま
が、赤い口をした狼のこま犬と共にユニーク
な表情で迎えてくれます。静かな境内はキャ
ンプ場にもなっています。
・埼玉県神川町と皆野町、秩父市との境

★お急ぎでない方は下記本文もご覧下さい。

【本文】
 埼玉県秩父市(旧秩父郡吉田町)と秩父郡
皆野町(合併なし)と児玉郡神川町(旧神泉
村)との境にある城峰山(じょうみねさん)
は標高1037.7m。いま山頂には一等三角点が
おかれています。ここも昔は修験道の道場が
あった山だという。頂上付近に城峯神社奥社
があって、大山祇(おおやまずみ)神と日本
武尊(やまとたけるのみこと)、また平将門
を討った藤原秀郷(ひでさと)などをも祭神
としています。中社は、山頂北側の神川町の
神山(732.0m)の中腹にあります。

 城峯神社は、景行天皇の41年、日本武尊
東征のおり、この山は普通の山ではないと直
感、山頂に矢を納め大山祇神(おおやまずみ
のかみ)をまつりました。そして西に向かっ
て、はるか大和国の畝傍山(うねびやま)に
ある神武天皇陵を拝み、旅の目的である蝦夷
の賊徒評定を改めて誓ったと伝えられていま
す。

 そんなことから、城峰山には日本武尊や平
将門、その一族に関する伝説があり、いまで
も山の中腹を戦度平、周辺には神泉・藤原・
矢納・門平などの地名が残っています。旧神
泉村矢納の名は、武尊が矢を納めたので矢納
布(やなふ)と呼び、のち矢納と改めたとい
われます。また武尊は高峰の頂に祭りの庭で
ある霊畤(れいじ)を設け、加美屋満(かみ
やま)と名づけましたが、これが現在の矢納
字神山になったといいます。


 文政11年(1810)の江戸幕府編纂の地誌、
『新編武蔵国風土記稿』巻之260(秩父郡・15)
石間村(いさまむら)の項には、「村ノ西北
ニアリ、登ルコト凡一里余。此山土人城山ト
唱ヘ、将門ノ弟御厨三郎将平ノ城趾ナリト云。
絶嶺二泰平社・春日社・天狗社アリ。此山上
ヨリ上州辺ヲ眺望スルニ、妙義山・榛名山・
及ヒ利根川・烏川・神流川等ノ景趣イトヨ
シ」とあります。また『秩父志』、『秩父風土
記』などにも平将門の弟将平の居城であった
と伝えています。

 『秩父志』に、は「西南の絶頂ニ大山祇命
ヲ祀リシ小祠アリ。其所ヨリ山ノ下口アリテ
凡一町余モ東北ニ下ル(※ト)平坦ナル所ア
リ。此地ヲ古城趾ト土人伝ヘタリ」とみえ、
この平坦地はいまの秩父郡皆野町(合併なし)
上日野沢(かみひのざわ)にあるそうです。
しかしいま、山頂には小さな祠と展望台が、
山頂直下に城峯神社奥社があるだけです。こ
の城跡から山道を東にたどると中丸の山をへ
て「鐘掛城」に達します。同所の南側に突出
した場所は、見張り場所とも、遠見ともいう
そうです。

 また城峯神社の奥社の尾根道を西に行く
と、天狗山があり岩山がつづきます。北と南
は切り立った断崖で、その馬の背状の稜線に
4つの堀切と、4つの郭(かく・日本の城の
城郭内の小区画)があって、戦国時代北条氏
の境目(国境防備の城)の城であったと考え
られているそうです(『皆野町誌』)。


 さて、お話変わって、平安時代の天慶(て
んぎょう)2年(939)、平将門(たいらのま
さかど)が同族間の争いに端を発した戦いで、
一時関八州を支配するまでになりました。そ
して自ら新皇と名乗り、関東自立の構えでし
たが、やがて藤原秀郷らの連合軍によって下
総(しもうさ)国で敗れます。

 その時、平将門(またはその弟御厨(みく
りや)三郎将平(將頼・門平)ともいう)が
秩父の阿隈(吉田町)に逃れ、この石間ヶ岳
(いさまがたけ)に陣を張って城を築いたと
いうのです。そのことからここを城峰山と呼
ぶようになったということです。将門一門を
追ってきた藤原秀郷軍はいまの秩父市吉田小
学校に陣を張り、将門の軍とにらみ合いがつ
づきます。

 ある日、秀郷は本陣の北側にある椋(むく)
神社に参拝し、将門の捕縛を祈りました。す
ると、城峰山にネズミの大群が発生、鎧(よ
ろい)や兜(かぶと)などのひもをかみ切っ
て使えなくしてしまいました。これでは将門
もお手上げ。将門は捕らえられ秀郷の前に引
き出されました。ところが同じ顔、姿形をし
た将門があちこちから捕らえられてきまし
た。そしてつづいてゾロゾロなんと8人もの
影武者が出てきて、将門を名のっています。


 驚いたのは秀郷。どれが本物かと迷ってい
ると、驚いたことに将門の愛妾の桔梗(きき
ょう)が、「食事のとき、こめかみが大きく
動くのが将門様です」と証言しました。早速
食事が出され、こめかみが大きく動いた本物
の将門がついに発覚。桔梗の裏切りに怒った
将門は、恨みを込めてひとこと「桔梗あれど
も花咲くな」と言い残して、首をはねられた
ということです。以来、城峰山ではキキョウ
の花は咲かなくなり、いまでもこの山ではキ
キョウはないということです。

 またこんな話もあります。愛妾の桔梗はい
つからか、用事もないのにひとり、将門の館
から出て、山の中を歩いたりする不審な行動
が、見られるようになりました。するとまも
なく将門の館が、秀郷軍に囲まれてしまった
のです。さては「藤原秀郷軍と内通していた
のか」と、怒り狂った将門は、桔梗の首をは
ねてしまいました。その怨みで城峰山ではキ
キョウが咲かないとの話もあります。「♪秋
の七草うす紫の、花の桔梗が、ナアソラショ、
なぜ足らぬ、城峯昔の物語」という、秩父小
唄もあります。

 山頂直下の城峯神社はオオカミのこま犬。
赤い口に金色の目が光っています。ここのお
犬さまの魔除け・盗難除けの守り札は、霊験
あらたかで、高崎や前橋市あたりからも借り
に来たという。それより面白いのはお犬さま
のうしろにある「お猫さま」。愛嬌のある表
情でハイカーを迎えてくれます。お猫さまは
十一面観音の眷属。十一面観音は平将門の守
り本尊と聞けば、ここにあるという理由に合
点がいきます。


 また城峰山のふもとにはこんな民話もあり
ます。ある暑い夏の昼下がり、城峰山のふも
との滝壺で、畑から下りてきた農夫がひとり、
昼食をとっていました。涼しい滝の風に吹か
れながら、一眠りしようとしたとき、1匹の
クモが体の上をはい回っているのに気がつき
ました。クモは足につたわってきて親指の先
で止まりました。そして親指に糸をかけはじ
めました。

 妙なことをするなと見ていると、クモはそ
のまま糸を引きながら滝壺の中にポチャンと
落ちました。不審に思った農夫は足の糸をほ
ぐし、そばにあった切り株に糸を巻きつけま
した。その時、滝壺の淵から「ヨイショ」と
大きなかけ声が聞こえてきたのです。そのと
たん、農夫が巻きつけた切り株がメリメリと
抜けて、滝壺の淵へ水しぶきをあげながら沈
んでいったということです。


▼城峰山【データ】
【所在地】
・埼玉県神川町(旧神泉村)と皆野町・秩父
市(旧吉田町)との境。秩父鉄道皆野駅の北
西9キロ。秩父鉄道皆野駅からバス、西門平
バス停から歩いて1時間40分で城峰山(標高
1037.7m)。一等三角点(1037.7m)と、電
波塔、それに展望台がある。山頂直下に城峰
神社がある。

【位置】国土地理院「電子国土ポータルWeb」
・三角点:北緯36度05分51秒、東経139度00
分28秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「鬼石(宇都宮)」or
「万場(長野)」(2図葉名と重なる)。

【山行】
・某年5月9日(水曜日・快晴)


▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典11・埼玉』(角川書
店)1988年(昭和63)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ
出版)2005年(平成17)
・『新編武蔵国風土記稿』巻之260(秩父郡
之十五)石間村(いさまむら)の項:「大日
本地誌大系18」『新編武蔵風土記稿・第12
巻』(雄山閣)1981年(昭和56)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書
房)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004
年(平成16)
・『日本伝説集』高木敏雄(ちくま学芸文庫
・筑摩書房)2010年(平成22)
・『日本歴史地名大系11・埼玉県の地名』(平
凡社)1993年(平成5)


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