▼山の軽口ばなし
本文のページ(08)
【とよだ時】(豊田時男
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▼秩父・両神山

【簡略説明】

両神山は岩峰の山。山頂の剣ヶ峰に立
てば360度の展望。両神山・八日見山
・竜頭(りゅうかみ)山・鋸岳などの
名がある。八日見のヨ(ヤ)ウカミは
ヤオカミのことで、ヤは八、オカミは
オロチ(大蛇・高?、闇?で雨乞いの
神)。八つの頭を持つ竜王(竜頭大明
神)だという。

▼秩父・両神山

【本文】
 両神山(りょうかみさん・1723.0m)
は鋸の歯のような岩峰が特徴で遠くか
らでもすぐ分かる山です。このあたり
には珍しく岩峰の山。くさりに捕まり
ながら山頂の剣ヶ峰に立てば360度の
展望。目を凝らせば遠く北アルプスま
で確認できます。

 この山は両神山・八日見山・竜頭
(りゅうかみ)山・鋸岳などの名があ
ります。山名は伊弉諾(いざなぎ)・
伊弉冉(いざなみ)の両神説や日本武
尊(やまとたけるのみこと)が8日間、
この山を見ながらやってきたという
説。さらに竜神をまつる竜頭(りゅう
かみ・竜神)説があります。

 もっとも、八日見のヨ(ヤ)ウカミ
はヤオカミのことで、ヤは八、オカミ
はオロチ(大蛇・高?(たかおかみ)、
闇?(くらおかみ)で雨乞いの神)。
つまり八つの頭を持つ竜王(竜頭大明
神)だというから、八日見でも竜神で
も同じことではあります。

 両神山といえば八丁尾根。剣ヶ峰か
ら前東岳・東岳・西岳・行蔵坊などの
ピークが八丁峠までつづき、そこに張
られた鎖を頼りに上り下りせねばなら
ず、そのスリルに登山者たちは大騒ぎ、
賑やかな声が響いています。

 この山も御嶽教行者の山です。八海
山(はっかいさん)・三笠山など、木
曽御嶽山の前衛にそびえる山の名が、
ここ両神山にもならんでいます。また
八海山大頭羅神王(おおずらしんんの
う)、三笠山刀利天坊(とうりてんぼ
う)などの天狗の石像もあります。

 ある年の4月中旬、久しぶりに清滝
小屋後ろにテントを張りました。一位
ガタワ(いちいがたわ)近くの刀利天
坊の石像に会いに行きます。格好良く、
とくに長い鼻の持ち上がり具合が、ほ
かでは見たことがないピカイチの天狗
像です。しかし風化が進んできていて、
大分齢を感じさせるのが気になりま
す。

 翌日、八丁尾根は岩の細道が雪がべ
ったりついており、アイスバーンもひ
どい。そこで急きょ梵天尾根を下りま
した。あちこちで木が倒れ、枯れ葉が
積もりどこが道か分からないほど荒れ
ています。岩場を通過し、水がしみ出
る崖にかかった鎖でよじ登り、やがて
白井差峠(しらいさすとうげ)。

 山ノ神を拝して急坂を下ります。群
生するアカヤシオツツジが見守ってい
ます。それをめでながらの下山。双中
里集落はサクラの花が真っ盛り。何と
いう幸運とバス停に。と、ララッ。最
終バスが行ったばかり。バスの時刻表
が変わったばかりというのです。

 こんなことは慣れている、テントで
もう一泊と覚悟を決めました。すると
四駆に乗った一人の青年が近づいてき
て途中まで送ってくれるといいます。
さすが山ヤ青年。バスの最終時間を知
っていたのです。何かお礼を。「貧者
の一灯」と感謝のシルシに小ホームペ
ージに青年の勤め先のアドレスをリン
クさせて貰いました。

 それにしても大峠から西側に下る廃
道を復活させてくれるといいんだけど
ね。地主さんも行政さんも仲良く頼み
ます。しかし廃道になってからすでに
30年にはなるか?期待薄だなあ。


▼両神山【データ】
★【所在地】
埼玉県秩父郡小鹿野町と秩父市大滝と
の境。秩父鉄道三峰口駅の北西14キ
ロ。西武線秩父駅からバス・小鹿野乗
り換え出原から歩いて4時間で両神
山。二等三角点(1723.0m)と両神神
社奥ノ院がある。

★【位置】
・三角点:北緯36度01分24.24秒、
東経138度50分28.75秒)。

★【地図】
2万5千分の1地形図:両神山。

▼【参考】
・『角川日本地名大辞典11・埼玉県』
小野文雄ほか編(角川書店)1980年
(昭和55)
・『郷土資料事典11・埼玉県』ふるさ
との文化遺産(人文社)1997年(平
成9)
・『古代山岳信仰遺跡の研究』大和久
震平(名著出版)1990年(平成2)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカ
ニシヤ出版)2005年(平成17)
・『図聚天狗列伝・東日本編』知切光
歳(三樹書房)1977年(昭和52)
・『天狗の研究』知切光歳(大陸書房)
1975年(昭和50)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三
省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系11・埼玉県の地
名』(平凡社)1993年(平成5)
・『山の憶い出』小暮理太郎:「日本山
岳名著全集2」(あかね書房)1962
年(昭和37)所収
・『両神山・風土と登山案内』飯野頼
治著(実業之日本社)1975年(昭和50)


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