▼山のまん画ばなし【本文】のページ08
 【とよだ 時】

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▼房総・鹿野山南麓の大ぞうり

【略文】
村の入り口に道路をまたぐように縄が張られ、そこにぶ
ら下げられた一足分の大きなぞうりがありました。村の
外から、疫病や邪悪なものの侵入を防ごうとする「道切
り」の民俗行事です。この村には、こんな大きなぞうり
をはく強い大男がいるゾと、悪霊たちを脅かし退散させ
ようとするおまじないだそうです。
・千葉県君津市

※ご用とお急ぎでない方は、下方の【本文】もどうぞ。

【本文】

 房総半島のほぼ中央・千葉県君津市にある鹿野山(か
のうざん)。山上の神野寺(じんやじ)を中心としたそ
の名も鹿野山集落があり、上町(うわまち)と下町(し
たまち)の大字(おおあざ)に分かれています。


 神野寺の四脚門や大桑(おおぐわ)、また住民が継承
する「はしご獅子舞」、「さんちょこ節」などの存在は、
東の丘にある日本武尊(やまとたけるのみこと)と弟橘
姫(おとたちばなひめ)を祭る白鳥神社とともに、歴史
と民俗の宝庫になっています。


 この近くには日本武尊がこの地の王である阿久留王
(あくるおう)を評定したとき、王が泣いて謝ったとい
う伝承から名づけられた鬼泪山(きなだやま)もありま
す。またその墓が塚になっていまも存在しています。


 阿久留王は一名六手王といい、もともとはこのあたりを支
配する製鉄部族の王だと伝えます。製鉄部族の王がこのあ
たりを治め、民たちも平和に暮らしていたものを、なぜ勝手に
侵攻してきた大和朝廷の日本武尊の軍に謝らなければなら
ないのか不思議です。


 ふつう地方の部族の王は「鬼」として象徴されます。オニと
は「陰」で、大和朝廷から見て目に見えぬ恐いものをいうそう
です。また日本武尊は、製鉄部族をねらって平定して歩いて
いたと聞きます。相模国(神奈川県)の大山を経由して、東
京湾の入り口の浦賀水道(走水・はしりみず)を渡った日本
武尊の軍船は上総へ上陸。


 次々に民家を焼きながら進んで行きます。そしてとう
とう鹿野山に到着。そして強大な兵力を誇る武尊軍にあ
っけなく敗れた王は、西方の鬼泪(きなだ)山まで逃げ、涙
(泪)を流して命乞いをしましたが、武尊は許さなかったとい
う。そこで相当残酷なことがあったらしい。


 その証拠には鬼泪山北麓を流れる染川(血染(ちぞめ)
川)は、王一族とその部族の血が3日3晩流れつづけた川。
それが腐敗してそそいだ所が、東京湾の千種浦(血臭浦・ち
ぐさうら・富津市千種新田)だとしています。


 ある年の6月のはじめ、鹿野山神野寺北東下にある阿
久留王の墓塚を見学しました。その後再び登りかえし、
神野寺前バス停右はす向かいの道から鹿野山を南下、君
津市田倉に下りました。


 まさに田倉地区本村集落に入るころ、道路をまたぐよ
うに縄が張られ、大きな草履(ぞうり)が一足分ぶら下
がっています。その下を通りながらぞうりを見上げます。
これは房総に伝わる道切りの民俗行事の時のものとい
う。


 村の外から疫病や邪悪なものの侵入を防ごうとする一
種の呪術で、この村にはこんな大きなぞうりをはく強い
大男がいるゾと、悪霊たちを脅かし退散させる意味がこ
もっているのだそうです。


 毎年正月に新しく取りつけられるらしく草履は半分腐
りかけてはいるようですが、まだまだご利益があるのか
穏やかで平和そうな家々がならんでいました。



▼田倉本村【データ】
【所在地】
・千葉県君津市。JR内房線佐貫町駅からバス30分、歩いて
30分で鹿野山、歩いて2時間で田倉本村集落。

【位置】
・田倉本村:北緯35度14分16.18秒、東経139度57分
23.4秒

【地図】
・2万5千分の1地形図:「鬼泪山(横須賀)」


▼【出典】
・『角川日本地名大辞典12・千葉』川村優ほか編(角川
書店)1984年(昭和59)
・『日本の山岳標高一覧』(1003)(建設省国土地理院)
1991年(平成3)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎(東京堂出版)1984年(昭
和59)

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 明日憂えん。(城山三郎)