▼山の軽口ばなし
本文のページ(06)
【とよだ時】(豊田時男
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▼奥多摩大岳山の申し子・鬼源兵衛こと
目玉のたんじと玉川上水
【略文】
奥多摩大岳山の神の申し子・源兵衛こと鬼
源(目玉のたんじとも)。五百貫(約2トン)
もの大石を持ち上げる怪力が恐れられ「鬼源」
とも呼ばれていた。鬼源は玉川上水の開削
工事に大活躍、工事はみるみるうちに完成。
しかし大岳山が見えないとからきしだめだっ
たという。東京都檜原村の出身だという。


★詳細は本文をご覧下さい。

奥多摩大岳山の申し子・鬼源兵衛こと
目玉のたんじと玉川上水


【説明本文】
 江戸初期の末ごろ、奥多摩の大岳山の麓の
檜原村白岩(しらや)いうところに、鬼源兵
衛と呼ばれるほど強力でならした男の子がい
ました。この男は目玉がなみはずれて大きい
ので、目玉のたんじとも呼ばれました。

 鬼源兵衛の父母には何人かの子どもがいま
したが、どういう訳か、みな早く世を去って
しまったという。両親は悲しみ、また子ども
が授かるよう、ふだん崇める大岳山の大岳神
社にお百度をふみました。

 3、7 21日の間願かけをしたお陰か、
満願の日に元気な男の子が授かりました。男
の子は源兵衛と名づけられ、スクスクと育ち
ました。源兵衛は、大岳山の申し子らしく、
大人になるころには50人力もの怪力が出せ
たといいます。また五百貫というから2トン
近くもある大石を持ち上げたという本もあり
ます。


 そんな怪力が恐れられ「鬼源」とも呼ばれ
ていました。この話は本当のことらしく、「鬼
源」が大活躍した話があります。1653年(承
応(じょうおう)2)(1653・江戸前期)、江
戸の水不足解消のため、玉川上水の開削が行
われました。

 玉川上水は、多摩の羽村地区から都心の四
谷までの全長43kmにおよぶ大工事。工事の
総奉行は、老中で川越藩主の松平信綱、水道
奉行は伊奈忠治(没後は忠克)がつき、玉川
兄弟の玉川庄右衛門・玉川清右衛門が工事を
請負いました。

 この工事で、玉川兄弟から羽村堰工事人足
として、檜原村へ25人の人夫出役の割り当
てがありました。この時、この25人分の代
役を源兵衛がひとりで引き受けたというので
す。驚いたのは幕府の出張役人。たったひと
りで25人分の仕事をするというのですから、
役人は話を疑いました。


 が、一応仕事ぶりを見てみようと考えまし
た。工事はいま、竹林を掘り起こしの真っ最
中でした。人夫はみんな鍬で竹を掘ってはま
た一本掘って取りのぞいています。

 しかし源兵衛は、素手のまま草を取るよう
に、引き抜いてはまた引き抜いているのです。
また堰どめ石の工事では、大きな石の下敷き
になった同僚をなんなく助けたり、大石をひ
ょいと持ち上げ、小石でも投げるように、ポ
ンポン対岸から投げ込んでいます。石を1個
1個持ち運んでいるふつうの人夫とは大違い
です。

 この働きぶりを見て役人は仰天。源兵衛は
幕府から褒賞品刀匠和泉大掾(だいじょう・
江戸時代前期の彫刻家)作の名刀を授与され
ました。


 このほか源兵衛には、「小河内の山姥退治」
の話しもあります。そのころ、この地方では
年貢を上納する途中で盗賊団に襲撃される事
件がたびたびありました。その盗賊団の主稜
は女性で、人々は「山姥」と呼び恐れました。
源兵衛はこの一団を、三頭山近くの風張峠か
ら遠矢で退治したというのです。

 その鬼源兵衛が持ち上げたという力石が、
あきる野市草花地区の八雲神社(通称天王様)
の境内にあるという。ただこの源兵衛の武勇
伝、怪力は大岳山が見える所でないと力が出
なかったというからおもしろい。

 ちなみに玉川上水羽村堰工事は幕府から渡
された費用6000両。しかしこれではとても
まかないきれず、不足分は工事をまかされた
玉川兄弟が出したという。その上、工事が完
成すると、幕府は兄弟から上水役を取り上げ、
江戸払いにしたそうです。どんなことがあっ
たのでしょうか。


▼大岳山【データ】
【所在地】
・東京都奥多摩町と西多摩郡檜原村大字大岳
との境。青梅線御獄駅の南西6キロ。JR青
梅線御獄駅からバス、滝本からケーブル、御
岳山駅から歩いて2時間15分で大岳山。二等
三角点(高1266.5m)がある。直下に大岳神
社がある。

【位置】国土地理院「電子国土ポータルWeb
システム」
・三角点:北緯35度45分54.87秒、東経139度
07分49.5秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「奥多摩湖(東京)」
or「武蔵御岳(東京)」(2図葉名と重なる)。

【山行】
・某年07月02日(日曜日・くもり、ガス)


▼【参考】
・『奥多摩風土記」大館勇吉著(武蔵野郷土
史研究会)1975年(昭和50)
・『角川日本地名大辞典・東京』角川書店
・『日本山岳ルーツ大辞典」村石利夫(竹書房)
1997年(平成9)

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