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山旅通信【画っ展】04)
【とよだ 時】

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▼山旅938号「八つの甲(かぶと)・甲田、耕田、神田で八甲田山」

【短略説明】
「なにを思案の有明山に小首かしげて出たわらび」と安曇節にも歌わ
れ、その形から信濃富士とも呼ばれる山。ここにも天の岩戸伝説があ
り、手力雄命が岩戸を開いて、世の中が明るくなったので有明山とい
うそうです。魏石鬼を田村麻呂が退治したという伝説もあります。
・長野県安曇野市と松川村にまたがる。

▼山旅938号「八つの甲(かぶと)・甲田、耕田、神田で八甲田山」

【説明本文】
 青森県の八甲田山といえば、明治35年(1902)の凍死者197名、「雪
中行軍」の悲劇が有名です。この事件を主題として、作家・新田次
郎が『八甲田山死の彷徨』を書きました。1977年(昭和52)にはこ
れが映画化されます。そのテレビコマーシャルの「天は我らを見放
した」は流行語にもなりました。

 八甲田山は、十和田湖と青森市の中間にそびえる山塊の総称で、
北八甲田連峰と南八甲田連峰に分かれますが、普通八甲田山といえ
ば、北八甲田山群をさすという。

 北八甲田は、主峰の大岳(1584m・酢ヶ湯大岳・八甲田大岳とも。
1等三角点がある)を中心に、赤倉岳、井戸岳、田茂萢岳(たもや
ちだけ)、高田大岳などがあります。また南八甲田には最高峰櫛ヶ
岳(1517m)、乗鞍岳、駒ヶ岳、猿倉岳などからなっています。

 八甲田全体の最高峰は大岳。高田大岳と区別するために八甲田大
岳とも呼んでいます。その頂上南斜面には鏡池という池があり、小
型でかわいいクロサンショウウオが生息しています。西側山腹には
酸ヶ湯温泉があり、1929年(昭和4)創立された東北大学植物園
八甲田山分園もあります。

 大岳は、標高は1600mにも満たない山ですが「おお」は大形の山
ということではなく、山容が立派だという意味の美称なのだそうで
す。

 古くは「耕田嶽」(1700年(元禄13)の『弘前藩日誌』)とか、「糠
壇(コウダン)の岳」(「津軽一統志」1731年(享保 16年)刊行)
と呼ばれ、その後、八耕田山とか八甲田山とか何回も変更されまし
た。

 以前の観光案内書には八甲田山は、八つの甲(かぶと)のような
峰と湿原地帯に小さな田んぼのような無数の池があることからの総
称と説明されています。

 このようにいろいろな説があるようですが、8つの峰と、低地に
発達する高層湿原、池塘を田とみなして「神の田」、「耕田」、「高
田」から八甲田になったという。また「八」は、萢(やち・谷地)
で、湿原をさす言葉だとするものもあります。

 中には、「八」の峰を具体的に挙げ、「山踉(さんろう)豊大にし
て(中略)山峰八に別る。前岳高倉岳こほれ岳井戸岳釜伏山小川の
大嶽砂岳と云(中略)甲田又高田に作る。八耕田とは八峰あるより
の名なる」(明治初年の『新撰陸奥国誌』)と記す文書もあります。
しかし、一峰足らないようですが、ま、それはそれでまいりましょ
う。

 この山は金山伝説もあるようです。江戸時代後期の旅行家で博物
学者の菅江真澄(すがえますみ)は、『万葉集』巻18にある大伴家
持(やかもち)の長歌「陸奥国より金(くがね)を出(いだ)せる
詔書を賀(ことほ)ぐ歌」のなかの、「鶏(とり)が鳴く東(あず
ま)の国の小田(おだ)なる山に金(くがね)ありと……」の歌の、
小田なる山とは八甲田のことではないかと思ったという。

 菅江真澄は1796年(寛政8・江戸時代後期)に、八甲田山に登り
『菅江真澄遊覧記』(すみかの山)を発刊しましたが、これは真澄
のひとりよがりだったようだというのが一般的な見方です。

 しかし、江戸後期、1786(天明6)年の『津軽俗説選』(工藤白
竜(工藤常政)著)には「八耕田(甲岳)むかしは金山なり。今も
金を分けし道具、麓の村里に所持せしものありといへり」とありま
す。また菅江真澄が登った時にも、鉱石粉砕用の金研臼があちこち
に転がっていたというから、あながち思い違いでもないのかも知れ
ません。

 この山は一部の人の関所抜けのルートでもあったようです。同じ
く天明年間(1781〜89)、当地を旅行した橘南谿(たちばななんけ
い・江戸時代後期の医者)は、その著書『東遊記』に「津軽領の青
森といふ処の南に当りて、甲田山といへる高山あり、其峯参差とし
て指を立てるがごとくなれば、土俗八ツ甲田といふ。叡山愛宕杯(な
ど)のごとき三ツも五ツも重ね上げたるがごとき高山なり。…

 …津軽領の人勇気たくましき者、又は罪を得てすがたをかくす時
杯(など)、津軽の関所南部の関所とも抜んとするに、極月より二
月三月の頃までは、此甲田山の絶頂をさして雪の上を真一文字に登
り磁石を立て、南部地は東南の方と志し、其方角のあたる方をさし
て、真っ直にすべり落る事なりとぞ。常なみの本道を廻り行時は、
五十里七十里或は百里にも余る処を、纔(わずか)に一日二日の間
に行著(いきつく)なり」と出ています。

 八甲田山にはこんな伝説もあります。青森市街から見ると、東方
向に東岳(あずまだけ・標高684m)が、南東方向に八甲田山が、
また南西方向に岩木山が眺められます。見ると東岳の頂上が平らで
兜状になっています。そんなことから昔、東岳と八甲田山が山争い
をしたという伝説が生まれました。

 八甲田は東岳の首をはねました。東岳の首は西の方向に飛んで行
き、岩木山の肩にめりこみ、コブになってしまいました。それで東
岳の山頂が平らなのだそうです。また、八甲田山と岩木山が喧嘩を
しました。そのとばっちりを受けた東岳は、首を飛ばされて雲谷峠
になったという伝説もあります。

 八甲田山にも雪形が出ます。先述の菅江真澄も『東遊記』(すみ
かの山)の日記の関係部分に「この峰に種蒔老翁、蟹このはさみ、
牛の頭、などという春の残雪が見える。雪もやや消えてゆき、苗代
を蒔くころになると、山にたねまきおっこ、といって残雪が人の立
っている姿に見え、そしてかにこのはさみに見えるころ田をかきな
らし、うしのくびに見えるころ、早苗をとって植える。農耕のそれ
ぞれの季節に、残雪がそれぞれのかたちであらわれる。そして雪は
六月のなかばに、すっかり消えてゆく。このようなことは岩木山の
場合も同じである。」と書いています。

 ここもチングルマ、ハクサンシャクナゲ、ミネザクラ、チシマザ
クラ、マルバシモツケ、ゴゼンタチバナ、ウサギギク、ミヤマオダ
マキ、シナノキンバイなどの高山植物が登山者を楽しませてくれま
す。また、北八甲田連峰には高層湿原ならではの貴重なトンボもが
多く生息しています。

 顔が白いカオジロトンボ、るり色で美しいルリイトトンボほか、
オオルリボシヤンマなども見られます。深田久弥選定「日本百名山」、
岩崎元郎選定「新日本百名山」、田中澄江選定「新・花の百名山」
のひとつになっています。


▼八甲田山(八甲田大岳)【データ】
【所在地】
・青森県青森市。東北本線青森駅の南東22キロ。・JR東北本線青
森駅から市営バス、1時間15分で八甲田ロープウエイ駅。ロープウ
エイ山頂公園駅から2時間半で大岳。一等三角点(1584.50m)と
がある。
【位置】
・大岳三角点:北緯40度39分32秒.0647、東経140度52分38秒.
0936
【地図】
・2万5千分1地形図名:八甲田山


▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典2・青森県』竹内理三ほか編(角川書店)1991
年(平成3)
・『コンサイス日本山名辞典』徳久珠雄編(三省堂)1979年(昭和5
4)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本山岳ルーツ大辞典』村石利夫(竹書房)1997年(平成9)
・『日本三百名山』毎日新聞社編(毎日新聞社)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳。久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)
・『日本歴史地名大系2・青森県の地名』虎尾俊哉ほか(平凡社)1
982年(昭和57)
・『名山の日本史」高橋千劔破(ちはや)(河出書房新社)2004年
(平成16)
・『山の紋章・雪形』田淵行男著(学習研究社)1981年(昭和56)



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