▼山のまん画ばなし【本文】のページ04
 【とよだ 時】

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▼神奈川県箱根・二子山の伝説

【略文】
その昔、箱根山には「アマンジャク」といって、人間と
も神さまとも分からない大力無双の剛の者がすんでいた
という。この怪人が、自分のすんでいる箱根の山より、
富士山があまりにも美しいのが憎らしくて仕方ありませ
んでした。アマンジャクは、なんとか富士山の形を崩し
てやろうと、山肌を削りとりました。
・神奈川県足柄下郡箱根町。

※ご用とお急ぎでない方は、下方の【本文】もどうぞ。

【本文】

 その昔、神奈川県箱根山には「アマンジャク」という、
人間とも神さまとも分からない大力無双の剛の者がすん
でいたという。この怪人が、自分のすんでいる箱根の山
より、富士山があまりにも美しいのが憎らしくて仕方あ
りませんでした。


 アマンジャクは、なんとか富士山の形を崩してやろう
と、山肌を削りとりました。崩した土をモッコに入れて、
天秤でかついで、相模灘へ持っていって捨てだしました。
その捨てた土からできたのが伊豆の大島などの島々にな
ったという。


 ある晩、都合でもあったのか、遅くから仕事にかかっ
たアマンジャクは、相模灘まで行く途中、箱根のあたり
まで来た時、夜が白んでしまいました。昼間が苦手なア
マンジャクは大慌てに慌て、担いでいた土をそこに捨て、
姿を隠してしまったというのです。


 大モッコから投げ出された2つの泥で出来たのがいま
の二子山で、右も左も同じ名前の二子山になっています
(『日本伝説集』)。


 このアマンジャクはダイダラボッチとも呼ばれ、『茅
ヶ崎の伝説』にはこんなふうに載っています。「神奈川
県茅ヶ崎市の中赤羽地区のそばの菱沼と室田の境に、手
白塚(てしろづか)というのがあったそうだ。……→


 ……→その東北側に「だいの窪」という大きな窪地が
あった。これは昔、怪人が歩いてきた足跡だという。藤
沢市の二ツ谷(や)地区にも同じものがあって、それは
ダイダラボッチの右の足跡で、菱沼にあるのは左足跡だ
という。……→


 ……→二ツ谷とここを一またぎするんだから、よほど
大きな人だったんだろう。なにしろ、かかとのあとだけ
で180坪あったかね。ちゃんと足のかっこうしてたんで
すよ。砂を両肩にかついで歩いてきたけど、ひもが切れ
ちゃった。それで、砂をおんまけてしまったところが、
箱根の二子山という」(『日本伝説大系5・南関東』か
ら)。


 そんなわけで出来た二ツの二子山。この山はそれぞれ、
上二子山(1091m)、下二子山(1064m)と呼ばれるド
ーム型の双子峰。前者は表二子ともいって、山頂に無線
中継施設があります。一方の下二子山は裏二子ともいい、
山頂付近には箱根町天然記念物になっているハコネコメ
ツツジや、ヒメイワカガミなどが生育しています。


 標高800mから上は、特別保護区に指定されています
が盗掘がひどく、いまは山全体を柵で囲んで鍵がかけら
れ、入山禁止のありさま。年1回、町の教育委員会が埴
生調査に入っていますが、いまだ盗掘の跡があるという
からひどいものです。二子山は裏から見ると山頂が4つ
に見えます。このため「表二子に裏四つ子」と呼ばれる
というから面白い。


 また鎌倉時代初頭、建久2年(1191年)の箱根権現
の由来記で、箱根権現別当・行実編纂の「筥(はこ)根
山縁起并序」という文書に、「長生妙術之霊薬籠之。或
筥或盖(※ふた=蓋の俗字)。故號盖子塚。岸脚有二池。
一名精進池」(※長生妙術の霊薬之(これ)に篭(こも)
る、或は筥(はこ)にし、或は盖(ふた)にす、故に盖
子塚(ふたごづか)と号す…)とあり、この盖子塚が二
子山なのだそうです。


 二子山の西ろくにはここに出てくる精進池が横たわっ
ています。このあたりは元箱根石仏群のあるところ。ど
れも二子山からとれた二子石と呼ばれる輝石安山岩に刻
んだもの。「二十五菩薩」には1293年(永仁元)や1295
年(永仁3)の銘があります。


 近くには高さ3.2mの地蔵菩薩像「六道地蔵」があり、
「賽の河原」や「血の池」、「死出の沢」などの地名も
残っています。そしてこの地蔵には「二子岳」と判読で
きるという銘文が刻まれているのが興味を引くところだ
としています。


 『精進池の石造塔』(赤星直忠・箱根町誌第一巻)に
よれば、「ここに六道の辻を想定し、地蔵菩薩の加護を
期待したという。当然のことながら「死出の山」が存在
した。それは「二子山」の銘からみて六道地蔵の背後に
ある二子山が「死出の山」と考えていたのではないかと
推察される」と書かれています。


 精進池の池畔には「火焚き地蔵」もあります。「箱根
山ふた子の山も秋深み明け暮れ風に木の葉散りかふ」
(『好忠集』)。




▼箱根・上二子山【データ】
【所在地】
・神奈川県足柄下郡箱根町。二子山は登山禁止ですが、
右手に二子山を見上げながら甘酒茶屋から旧東海道の石
畳、お玉ヶ池を経て芦ノ湯の史跡探勝路までのハイキン
グコースがあります。JR東海道本線小田原駅からバス、
甘酒茶屋下車、お玉ヶ池まで30分、精進池まで45分、
芦ノ湯まで30分。三等三角点(1090.98m)と、写真測
量による標高点(1099m)と、無線中継施設がある。

【位置】
・上二子山標高点:北緯35度12分53.07秒、東経139
度2分30.73秒
・上二子山三等三角点:北緯35度12分50.52秒、東経
139度2分36.91秒

【地図】
・2万5千分の1地形図:箱根。



▼【参考文献】
・『角川日本地名大辞典14・神奈川県』伊倉退蔵ほか編
(角川書店)1984年(昭和59)
・『かながわの山』植木知司(神奈川合同出版)1981年
(昭和56)
・『山岳宗教史研究叢書17』「修験道史料集1・東日本
編」五来重編(名著出版)1983年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005
年(平成17)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平
成16)
・『日本伝説大系5・南関東』(千葉・埼玉・東京・神
奈川・山梨)宮田登ほか(みずうみ書房)1986年(昭
和61)
・『日本歴史地名大系14・神奈川県の地名』鈴木棠三ほ
か(平凡社)1990年(平成2)
・『山岳宗教史研究叢書17』「修験道史料集1・東日本
編」五来重編(名著出版)1983年(昭和58)

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▼このシリーズは、CD本『山の伝説いらすと紀行に記載してあります。

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