山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼908号 高山植物・キヌガサソウ

キヌガサソウは漢字で衣笠草(絹笠草)です。ハナガサソウ(花
笠草)ともいうそうです。その名前は広がった葉っぱが、衣笠や
踊りに使う絹笠に似ているからといいます。日本に固有種。非
常に古い時代にエンレイソウ属とツクバネソウ属のある種の間に
できた植物と考えられ、1種1属として扱われます。
(本文は下記にあります)

【本文】

北アルプス白馬岳に登るため、白馬駅からバスに乗り終点猿倉で下
車。さらに白馬尻へ向かって歩きます。白馬尻付近で何枚もの大き
な葉を丸く外側に向かって広げ、その真ん中に首をつけたような白
い花を見つけました。高山植物のキヌガサソウ(衣笠草・絹笠草)
です。

ハナガサソウ(花笠草)ともいうそうです。その名前は放射状に広
がった葉っぱが、奈良時代にやんごとなきお人にさしかけた衣笠に、
また踊りに使う絹笠似ているからといいます。

キヌガサソウは、亜高山帯の林の中によく群落をつくり、白い花も
大形で美しい。日本の固有種とかで、東北地方から中部地方の、主
に日本海側に分布する植物とか。ユリ科キヌガサソウ属(またはツ
クバネソウ属)の多年草としています。

しかし、キヌガサソウは染色体数が異質8倍体であることから、ツ
クバネソウ属(あるいはダイスワ属)植物とエンレイソウ属の雑種
起源であるという説や、ダイスワ属あるいはエンレイソウ属の祖先
から倍数花にともない、分化したという説などがあるそうで、その
由来についてはまだ未解決の問題として残されているという(『植
物の世界・112』朝日新聞社)。

さて、キヌガサソウは茎の高さ30〜60センチ。その頂に倒卵楕円
形で長さ20〜30センチ、幅3〜8センチの大きな葉が8〜10枚
輪生(葉が茎のまわりに集まってつく)します。それは直径40〜60
センチで傘を広げたような形です。

6〜8月、その中心部から花柄を数センチ突きだして、先端に径6
センチほどの白色の花を1個咲かせます。花はのちに淡紅色になり、
さらに淡緑色に変わります。地下には径1.5センチ〜2センチの太
い地下茎があるという(掘り出して見たわけではありませんが)。
果実は卵円形で緑色で、のちに暗紫色に熟し甘くなります。

最後に「朝日新聞」(東京本社)の2010年11月9日付け科学面に、
こんな難しいことが載っていましたので転載してみます。「日本の
山岳地帯などに分布する植物のキヌガサソウが、これまで知られた
なかで最長の全遺伝情報(ゲノム)を持つと見られることが、英王
立キュー植物園の研究で分かった。

人間のDNAの50倍の長さ、これまで最長と考えられていた肺魚
の一種をしのぐ。英国の植物学専門誌に掲載された論文によると、
研究チームは長野県白馬岳周辺で採取されたキヌガサソウの葉の細
胞を分析。DNAの長さを示す塩基対の数が、人間の約30億塩基対
に対して、約1500億塩基対あることを確かめた。

塩基対は、細胞に核を持つ生物(真核生物)では、寄生虫の一種が
約230万塩基対程度で最短と考えられている。これまで最長と見ら
れていた肺魚の一種は、その6万倍近い約1300億塩基対で、生物
によってまちまち。

なぜこれほど差があるのかは、よく分かっていない」のだそうです。
ム、ム、ム、ム。難しすぎて分かったような、分からないような…
…。それはともかく、ことしも深山の林で♪ああ、こりゃこりゃ、
と賑やかな花笠音頭が舞われるのでしょうか。

霧はげし絹笠草を敷き憩ふ(本田一杉)という句がありますが、い
まこんなことをしたらパトロールの人にどやされますね。・ユリ科
キヌガサソウ属(またはツクバネソウ属)の多年草

▼【参考文献】
・『高山植物』(野外ハンドブック・8)小野幹雄ほか(山と渓谷社)
1985年(昭和60)
・『植物の世界10巻・112号』(週刊朝日百科)(朝日新聞社)1996
年(平成8)
・『世界の植物巻9・101号』(朝日新聞社)1977年(昭和52)
・『日本の野草』(山と渓谷社)1983年(昭和58)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

ゆ-もぁイラスト・漫画家・
山と田園の画文ライター
【とよだ 時】

山旅イラスト【ひとり画展通信】題名一覧へ戻る
………………………………………………………………………………………………
「峠と花と地蔵さんと…」トップページ【戻る】