山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼885号 八ヶ岳の天狗は赤天狗、青天狗

八ヶ岳の天狗岳は東西2峰に分かれ、東天狗岳の頂上近くは、赤
い岩肌を出しているため「赤天狗」と呼ばれ。西天狗岳は緑のハ
イマツにおおわれて丸みがあり「青天狗」と呼ばれています。山
頂からの展望は雄大で、北、中央、南アルプスをはじめとして360
度の大展望です。三角点は西天狗岳にあります。
(本文は下記にあります)

【本文】

八ヶ岳にも天狗岳があります。ここの天狗岳は東西2峰に分かれ、
東天狗岳(2646m)は縦走路沿いにあり、そこから西へ約300m離
れたところに三角点のある西天狗岳(2645.8m)があります。

東天狗岳の頂上近くは、岩肌を出して赤い岩場をつくっているた
め「赤天狗」と呼ばれ、西天狗岳は緑のハイマツにおおわれて丸
みがあり「青天狗」と呼ばれています。山頂からの展望は雄大で、
北ア・中央・南アルプスはじめ、360度の大展望です。

天狗岳の北西に流れ下っているすりばち池溶岩流は両側のヘリが
高くなって、内側がへこんでおり、いちばん低いところは雨期に
は水がたまり「すりばち池」といっています。

渇水期になると黒いの安山岩が露出、無数に亀裂ができて奇怪な
様子になります。また池の先には「天狗のお庭」と呼ぶ草原が広
がっていて、小さな池があちこちにあり、緑のハイマツが水面に
映えて神秘的です。

天狗岳は荒々しい南八ヶ岳と森林と草原のやさしい北八ツヶ岳の
ほぼ中間。その両方をそなえています。またかつてはこのあたり
にもライチョウがいたらしく、1946年(昭和21)とその翌年、196
8年(昭和43)の3回、天狗岳北の斜面で、ライチョウを目撃した
という報告があったそうですが、その後、姿を見た人がないとい
います。絶滅してしまったのでしょうか。

天狗岳の登山口は奥蓼科温泉郷渋の湯。ここはお湯に淡白色、黄
褐色の沈殿物がついているため「渋」の字があるという。この温
泉郷も武田信玄の「隠し湯」で、武田信玄が上杉謙信との合戦の
時に負傷した兵の湯治に利用したといい、また武田信玄が海ノ口
城(荒船山南麓の南牧村)攻略の時も、ここで軍勢の戦の傷をい
やしたと伝えています。

ところで奥蓼科温泉郷は渋の湯、渋御殿湯、渋辰野館、明治温泉
の4つの温泉があります。渋の湯は、延暦2年というから平安時
代初頭の西暦783年、諏訪神社神官が霊夢によって発見したという
伝説もあります。江戸時代には高島藩の直轄となったこともあっ
て、御殿の湯などと呼ばれました。渋辰野館は、信玄の隠し湯の
中でも薬効があり、とくに信玄の薬湯とされているとか。

さらに明治温泉は、かつては諏訪神社祭神の鹿狩り場と定められ
ていたことから「御射鹿の湯」と呼ばれていました。しかし、明
治21(1888)年に開業の際、「明らかに治る温かき湯」ということ
で「明治温泉」と名づけれたといういきさつもあります。

また一説に元禄年間(1688〜1704)、身ごもった鹿が水を飲みに谷
を下り、温泉にたどりつき温泉を飲み湯に浸かって子鹿を安産し
たのを発見。それから人間も温泉を利用したという話もあるそう
です。

▼天狗岳【データ】
【所在地】
・長野県茅野市と小海町との境。小海線松原湖駅の南西11キロ。
東天狗岳と西天狗岳がある。JR中央線地の駅からバス、終点渋
の湯下車、中山峠経由歩いて3時間30分で天狗岳。山頂は東天狗
岳と西天狗岳(2646m)に分かれる。

東天狗岳(2640m)は何もなし。15分で西天狗岳に二等三角点(2
645.8m・点名東岳)がある。地形図に天狗岳の文字と西岳の位置
に三角点の標高のみ記載あり。

【位置】電子国土ポータルWebシステムから検索
・西天狗岳三角点:北緯36度1分8.9秒、東経138度21分19.5秒

【地図】
・旧2万5千分の1地形図:蓼科(長野12号-4)

【参考文献】
・「角川日本地名大辞典20・長野県」市川健夫ほか編(角川書店)
1990年(平成2)
・「信州山岳百科2」(信濃毎日新聞社)1983年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・『日本三百名山』毎日新聞社編(毎日新聞社)1997年(平成9)
・『日本山名事典』徳久球雄ほか(三省堂)2004年(平成16)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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