山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼874号 「高山植物・タカネバラ」

▼874号 「高山植物・タカネバラ」

【本文】
日本の野生のバラにはいくつかありますが、高い山にはえるものはピンク
の花が美しいオオタカネバラとその変種のタカネバラという種類がありま
す。タカネバラはタカネイバラともいい、高さ1〜2m。中部地方より北の高
山、四国(剣山)の日当たりのよい草地や茂みに、また蛇紋岩、石灰石、
火山岩などにもはえています。とくに富士山に多いとか。

タカネバラはバラ科バラ屬の落葉低木。小枝は細長くて細いとげが多く
生えています。葉っぱは奇数羽状複葉というから小葉が鳥の羽のような
形についています。

小葉は4〜7対。長さ1〜3センチで楕円形で両端とも円形。ふちに鋭い
鋸歯(ギザギザ)があります。7月ごろ小枝の末端に直径4〜5センチの、
淡紅色または紫淡紅の美しい大きな花を1個つけます。花弁は5枚で広
倒卵形でほとんどたいらに開きます。なかに黄色い雄しべがたくさんあ
り、香りがあります。

つぼみのころはもとの部分にある、がくの先が細く長くのび、つぼみを取
り巻くように見えるのが特徴。果実は西洋なしのような楕円形で濃紅色。
照りがあって美しい。日本特産。ある年の6月、八ヶ岳赤岳に登りました。

八ヶ岳は毎年6月第1日曜日が開山祭です。きょうがその日だった
のです。赤岳の祠の前で神職が祝詞(のりと)をあげています。市
長や登山者の代表が玉串(たまぐし)を捧げ、山の安全を祈ります。

そのうち御神酒(みき)がまわってきました。そして思いがけなく
神社のお札とタカネバラのバッジを戴きました。いまでも大事にし
ています。

▼【参考文献】
・『高山植物』小野幹雄ほか(山と渓谷社)1985年(昭和60)
・『植物の世界5巻・55号』(朝日新聞社)1995年(平成7)
・『世界の植物巻5・58号』(朝日新聞社)1976年(昭和51)
・『日本の樹木』山溪カラー名鑑1988年(昭和63)
・『日本大百科全書・14』(小学館)1987年(昭和62)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

 

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