山の伝承伝説に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅通信【ひとり画展】とよだ 時

▼768号 「山の花・黄色い釣船キツリフネソウ」

【概略】
釣船草のようで黄花のキツリフネ。距が渦巻きに巻かない所が違う
という。幕末発行の「草本図説」に「黄のツリフネソウ」として「紫
のツリフネソウ」やホウセンカとともに記載。種小名は「触れるな」
の意味で果実がはじけるところから。
・ツリフネソウ科ツリフネソウ属の1年草。(画は図案化しています)

▼768号 「山の花・黄色い釣船キツリフネソウ」

【本文】
山を歩いていると湿り気のあるところや渓流のほとりに黄色い花
のツリフネソウが咲いています。キツリフネ(キツリフネソウ)
です。

ツリフネソウは釣船草。見たとおりの「黄釣船」です。花の距の
曲がりがゆるく渦巻き状に巻かないところが普通のツリフネソウ
と違うところだそうです。

この種ははじめ閉鎖花(花が開かないまま自家受精を行い結実す
る花)を出します。また葉は長楕円形から卵形で、先がとがって
いません。

粗い鋸歯(ギザギザ)もあります。幕末の1862年(文久2)に発
行された飯沼慾斎の「草本図説」(草部・第17巻)には、「黄のツ
リフネソウ」(いまのキツリフネ)として「紫のツリフネソウ」(い
まのツリフネソウ)やホウセンカなどとともに記載されているそ
うです。

いまのように「キツリフネ」、「ツリフネソウ」と呼ぶようになっ
たのは、「草木図説」新訂版(1875年(明治8)完結)以降のこと
なのだそうです。

ツリフネソウ属は日本にはツリフネソウ・キツルフネ・ハガクレ
ツリフネの3種が分布するだけという。属名のイムパティエンス
は「耐えられない」という意味のラテン語だそうです。

果実に触れると急にはじけることによるという。なるほど、ホウ
センカにも近いんだァ。種小名も「触れるな」という意味で、触
れると急にはじける果実の性質からきているそうです。

以前、北陸白山から下山の際、大雨がやまず、コザクラ平の避難
小屋で閉じこめられたことがありました。3日目、雨の隙を見て
飛び出しました。

小さな沢も増水で流れが荒く渡るのも注意が必要です。やっと林
道についた時は雨も小やみなっていました。ヤレ、ヤレ一安心。
林道の側溝にキツリフネが群生しています。

黄色い花がゆれるのを見ながら歩きはじめました。
道のべの釣舟草や修那羅みち(勝又一透)
・ツリフネソウ科ツリフネソウ属の1年草。

▼小桜平【データ】
地名・こざくらだいら。

★【所在地】
・石川県白山市(旧石川郡尾口村)。北陸鉄道鶴来駅からバス、白山
一里野バス停下車、歩いて7時間20分で小桜平避難小屋。地形図に
は「小桜平ヒュッテ」の文字のみ記載。標高なし。付近に何も記載
なし。

★【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【小桜平避難小屋】緯度経度:北緯36度12分03.4秒、東経136度45
分27.29

★【地図】
・2万5千分の1地形図「新岩間温泉(金沢)」&「白峰(金沢)」(2
図葉名と重なる)。5万分の1地形図「−」

★【参考】
・「植物の世界・3」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「世界の植物・4」(朝日新聞社)1975年(昭和50)
・『牧野新日本植物図鑑』牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・『日本大百科全書・15』(小学館)1987年(昭和62)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・ゆ-もぁ漫画家
【とよだ 時】

 

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