山の伝承伝説に遊ぶ
山旅通信
【ひとり画ってん】とよだ 時

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▼751号 「昔の賑わいいま何処・丹沢鍋割峠」

【略文】
ここ鍋割峠はかつては十字路になっていて寄集落から鍋割沢に入る
猟師・木こり、また塔ノ岳尊仏岩への参拝で賑わったという。いま、
土平方面へ下る山道も崩壊、廃道になってから久しくいまはひっそ
りとして、峠の石仏もすっかり風化してしまっている。
・神奈川県山北町と松田町の境

▼751号 「昔の賑わいいま何処・丹沢鍋割峠」

【本文】
富士山展望抜群の鍋割山から西へ20分ほど下ると鍋割峠があり、馬
頭観音が鎮座しています。

ここはかつて南麓の寄(やどりぎ)集落から林業や猟師たちが北側
にある鍋割沢から熊木沢・箒杉沢に通う重要な道だったという。い
まも残っている石垣が昔を偲ばせます。

また、毎年5月15日の尊仏山(尊仏岩)のお祭りには、この峠から
鍋割山・大丸を経由して塔ノ岳に向かう人たちが登っていったとい
う。

さらに1939年(昭和14)、横浜山岳会が塔ノ岳に尊仏小屋を建てる
時、分解した製材機を寄から峠を越えて尊仏の土平に据え、箒杉沢
の木を切って製材、塔ノ岳へ運んだという。

これほどまでに賑わった峠も土平方面へ下る山道も崩壊、廃道にな
ってから久しくいまはひっそりとしています。人々を見守ってきた
石仏も風化が激しく想像でしか描けなくなっています。

ちなみに鍋割山や鍋割峠の名前は鍋割沢から来ているそうです。珍
しい寄集落は1885年(明治18)近くの7ヶ村が「寄り集まって」出
来た村名だそうです。

▼鍋割峠【データ】
峠名:なべわりとうげ

★所在地】
神奈川県足柄上郡山北町と神奈川県足柄上郡松田町との境。小田急
小田原線渋沢駅の北西10キロ。小田急渋沢駅からバス大倉終点下車
・さらに歩いて3時間半で鍋割山、さらに15分で鍋割峠。地形図に
峠名、標高ともに記載なし。

★【位置】国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索
・鍋割峠:北緯35度26分44.14秒、東経139度08分14.34秒

★【地図】
・2万5千分の1地形図「大山(東京)」

★【参考】
・『アルパインガイド37・丹沢』(山と渓谷社)(羽賀正太郎)1980年
(昭和55)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「尊仏2号」栗原祥・山田邦昭ほか(さがみの会)1989年(平成元)
・『イラスト丹沢・山ものがたり』とよた 時(山と渓谷社)1991年
(平成3)

 

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山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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