山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼667号 「北ア常念岳山麓・満願寺の満願祈願」

【序文】
坂上田村麻呂将軍も一筋縄ではいかぬ魏石鬼八面大王。将軍はいま
の満願寺の十一面観音に魏石鬼退治を祈願します。満願の夜、夢枕
に千手観音があらわれたという。そのお告げの通り、33節(13節と
も)ある山鳥の尾でつくった矢で退治できたという。このお寺は坂
上田村麻呂の創建だと伝えます。
・長野県安曇野市

▼667号 「北ア常念岳山麓・満願寺の満願祈願」

【本文】
その昔、信濃富士有明山に鬼賊・八面大王(魏石鬼)が住んでいま
した。大勢の鬼を配下とし悪行のし放題。この鬼を退治するため朝
廷は将軍・坂上田村麻呂を差し向けました。

しかし八面大王もさるもの、大石を雨や霧のように麓に降らせ田村
将軍も一歩も近づけません。矢を放ってみても当たらない。万策尽
きた田村麻呂は満願寺の千手観音に祈願。

その加護で鬼賊を退治できたため、お礼にこの寺を創建したと伝え
ます。また、一説に困った田村麻呂は水沢の清水観音に祈願し、退
治できればこの寺への参拝者を1日千人に増やしてみせると誓いま
した。

満願の夜、夢枕に観音が現れて33節(13節の説も)ある山鳥の尾で
つくった矢で射れば退治できるとのお告げ。大願成就した田村麻呂
は約束を守るにあたり、寺を都に移し建てたのが東山の清水観音だ
という話もあります。

八面大王が退治されたのは806(大同元)年のことだともいい、鬼
賊の剣は3つに折れその1つはいまでも満願寺にあるともいわれて
います。

▼満願寺【データ】
・信濃三十三観音霊場の第26番札所。

【所在地】
・長野県安曇野市(旧南安曇郡穂高町)穂高町大字牧1812。JR大
糸線穂高駅の西5.5キロ。JR大糸線穂高駅下車タクシー15分で
満願寺。地形図に寺名のみ記載。

【ご利益】
・【栗尾山満願寺】:不明(満願寺のパンフにも記載なし)

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【満願寺】緯度経度:北緯36度19分51.17秒、東経137度49分10.8


【地図】
・2万5千分の1地形図「信濃小倉(高山)」or「有明(高山)」(2
図葉名と重なる)

【参考】
・「角川日本地名大辞典20・長野県の地名」市川健夫ほか編(角川
書店)1990年(平成2)
・「信府統記・第十七」:全32巻・享保9(1724年)(松本藩内の総
合書)鈴木重武・三井弘篤編:「日本伝説大系・第七」所収
・「日本歴史地名大系20・長野県の地名」(平凡社)1979年(昭和54)
・「信州山岳百科・1」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「秘録・北アルプス物語」朝日新聞松本支局(郷土出版)1982年
(昭和57)
・満願寺パンフレット

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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