山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼665号 「長野県・南木曾の泣きびそ岳」

【概略】
南木曾岳も箱根の足柄山(金時山)と同じ金太郎伝説の山。山姥伝
説からアゲロウ山とも呼ばれ、山中には「金時ノ洞窟」、山頂付近
に金時岩もある。気流の関係でいつも霧がかかり雨が降るので泣き
びそ岳(泣き味噌・泣き虫)とも呼ばれている。
・長野県南木曽町

▼665号 「長野県・南木曾の泣きびそ岳」

【本文】
木曽御嶽・木曽駒ヶ岳とともに「木曽の三岳」に数えられる南木曾
岳も金時伝説の山です。江戸時代の本に山中の洞窟に山姥の石座と
いわれる石があるとあり、山姥が坂田金時を生み育てたという伝説
があります。

金明水の近くに「金時ノ洞窟」があって対岸から洞窟が望め、また
山頂付近にも金時岩があります。この山は気流の影響でいつも霧が
かかり雨が降り出すというので「泣きびそ岳」の名もあるそうです。

泣きびそとは泣き味噌・泣き虫のこと。また揚籠山(あげろうやま)
の名もあります。文献にある揚籠山の山名にまつわる坂田金時伝説
というのは、山姥伝説の山・新潟県の「上路の山」にちなむのでし
ょうか。謡曲「山姥」にも出てくる山名です。

この山は大雨が降ると蛇抜け(山津波)が発生する魔の山。こんな
ところから恐ろしい山姥の山という伝説が生まれたのでしょうか。

8月の暑さまっ盛り、アブの大群に襲われます。途中、垂直状の岩
場のクサリ場と巻き道がつくられています。山頂は誰もいない静か
な小平地。見晴台から望む木曽御嶽が雄大でした。

▼南木曽岳【データ】
【山名】・なぎそだけ

【異名】
・泣きびそ岳。揚籠山(あげろうやま)

【由来】
・いつも霧がかかり雨が降り出す。山姥伝説の上路の山にちなむ?。

【所在地】
・長野県木曽郡南木曽町。中央本線南木曾駅の東3キロ。JR中央
本線南木曾駅からバス尾越下車、さらに歩いて4時間で南木曾岳。
二等三角点(1676.9m)と写真測量による標高点(1679m)がある。
地形図上には山名と三角点とその標高と、標高点とその標高のみ記
載。付近に何も記載なし。

【名山】
・日本山岳会選定「日本三百名山」(第261番選定):日本百名山以
外に200山を加えたもの。
・清水栄一選定「信州百名山」(第92番選定)

【位置】
・標高点:北緯35度35分33.14秒、東経137度38分39.9秒
・三角点:北緯35度35分30.45秒、東経137度38分37.05秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「南木曽岳(飯田)」。5万分の1地形図「飯
田−妻籠」

【参考】
・「信州山岳百科・2」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・「遠山奇談」【後編】1801年(亨和元・きょうわ)発行前編より3
年後に著した。(浄林坊辨惠著)筆名華誘居士:「日本庶民生活史料
集成」第16巻(奇談・紀聞)(山一書房)1989年(平成元)
・「日本歴史地名大系20・長野県の地名」(平凡社)1979年(昭和54)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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