山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼648号 「野山の花・長い釣り糸ウラシマソウ」

【概略】
ヘビの舌のような長いものが出ているウラシマソウの花。長いもの
は浦島太郎の釣り糸なのだという。雌雄異株だが多くは雄株。それ
は子球による栄養繁殖を盛んにするため、株が雌に転化するまで球
茎が大きくなりにくいからだと専門家。そのためか1ヶ所にかたま
って生えることが多い。

▼648号 「野山の花・長い釣り糸ウラシマソウ」

【本文】
♪ムカシ、ムカシ浦島が助けたカメに連れられてェ……。浦島太郎
が釣りザオを肩にカメの背に乗り竜宮城へまいります。そんな釣り
糸をたらした浦島太郎にちなんだのがこのウラシマソウ。

4,5月に花を咲かせます。仏炎苞の外にのびる長い糸が浦島太郎
の釣り糸に似ているというわけです。だから漢字で浦島草。湿った
林ややぶなどに生え、ヘビの舌のような糸をふりあげた紫色の花は、
ふいに山中で見つけたりするとちょっとびっくりします。

北海道の南部から本州、四国に分布し、地下の球茎にはたくさんの
子球がついて、茎のような柄のある葉を一枚出します。葉は鳥の足
のような形に切れ込んだ複葉で、高さは40〜60センチ。

葉柄の基の方から出た花茎の先に紫褐色の仏炎苞に包まれた肉穂花
序から付属体を糸のように長く伸ばします。これが釣り糸です。雌
雄異株。果実は秋、太い花軸にぎっしりとついて赤く熟しよく目立
ちます。

この種子は地面に落ちて次の春芽を出しますが、地上には葉を出さ
ず、地下に小さな球茎をつくるだけ。2年目になってやっと地上に
顔を出し、三小葉の葉が日の目を見るという変わった性質がありま
す。

ウラシマソウは薬草でもあります。薬用部は根。生薬名を天南星(て
んなんしょう)といい、漢方では三生飲(さんしょういん)としてア
オマムシグサと共に、気管支炎、偏(へん)桃炎、咽(いん)頭炎、凍
瘡(そう)、神経痛などに応用されます。

民間療法では手足のマメに、水虫に、はれ物のちらし薬に、掻破湿
疹(かきこわし)に利用すると、江戸時代の本にも載っています。子
球で栄養繁殖を盛んにするため、一ヶ所にかたまって生えることが
多い。サトイモ科テナンショウ属の多年草。

▼【参考】
・「牧野新日本植物図鑑」牧野富太郎(北隆館)1974年(昭和49)
・「野外における危険な生物」日本自然保護協会(思索社)1987年
(昭和62)
・「植物の世界・11」(朝日新聞社)1996年(平成8)
・「世界の植物・8」(朝日新聞社)1977年(昭和52)
・「世界の植物・5」(朝日新聞社)1977年(昭和52)
・「日本大百科全書・3」(小学館)1985年(昭和60)

山岳漫画・ゆ-もぁイラスト・画文ライター
【とよだ 時】ゆ-もぁ-と事務所

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