山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼560号 「山梨・大菩薩峠と妙見ノ頭」

【概略】
大菩薩の名前に江戸時代の地誌『甲斐国志』の文がある。妙見菩薩
を祭る社が大菩薩峠(旧峠)に2つ祭られているとある。妙見とは
北極星または北斗七星の神格化したもの。その信仰は中世以降、日
蓮宗で盛んに行われたという。旧峠の東にある妙見ノ頭は妙見岩の
ある峰の意味だという。
・山梨県甲州市と丹波山村と小菅村との境

▼560号 「山梨・大菩薩峠と妙見ノ頭」

【本文】
中里介山の小説で有名な大菩薩峠。峠近くまで大型バスが入ってこ
られ、ツアーのお客でにぎやかです。

大菩薩の名前については諸説あります。平安後期の新羅三郎にちな
む八幡大菩薩説、塩山市上萩原に祭られる観音菩薩説、もう一つは
江戸時代の地誌『甲斐国志』巻之三十六(大菩薩坂の項)・巻之七
十二(熊野権現)に出てくる妙見菩薩に関する文があります。

「巻之三十六」には「峠ニ明見大菩薩社アリ」とあり、「巻之七十
二」には「明見菩薩社大菩薩峠ニアリ山梨郡都留界ノ社ナリ相並ン
デ二社アリ一社ハ山梨萩原村ニテ建立一社は丹波村ニテ建立ス」と、
両方の文ともに妙見菩薩を祭る社が大菩薩峠(旧峠)にあるとあり
ます。

妙見とは北極星または北斗七星の神格化したものといわれ、その信
仰は中世以降、日蓮宗で盛んに行われたという。

旧峠の東にある妙見ノ頭は妙見岩のある峰の意味だという。登山者
がほとんど登らない妙見ノ頭には日蓮宗のお経を刻んだ石碑がひと
つ。奥多摩の山々が見事でした。

▼【データ】)
【山名・地名】
・【異名・由来】:妙見沢につながる山峰(頭)ということで沢名が
山名になった(「日本山岳ルーツ大辞典」)

【所在地】
・山梨県甲州市塩山(旧同県塩山市)と山梨県北都留郡丹波山村と
山梨県北都留郡小菅村との境。中央本線塩山駅の北東10キロ。JR
中央線塩山駅からバス、大菩薩登山口から歩いて3時間30分で妙見
ノ頭。日蓮宗のお経を刻んだ石碑がある。地形図に地名標高ともに
記載なし。付近に何も記載なし。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【妙見ノ頭】緯度経度:北緯35度44分27.3秒、東経138度51分08.6
秒)

【地図】
・2万5千分の1地形図「大菩薩峠(甲府)」

【参考】
・「甲斐国志・3」(巻55〜72・神社部)(巻73〜90・仏寺部)(巻91
修験):「大日本地誌大系・別巻」(雄山閣出版)に所収
・「新日本山岳誌」日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
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