山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼559号 「東北・早池峰山の青グモ」

【概略】
早池峰山で猟師の前に化け物があらわれて化け比べを挑んできた。
「デカすぎのお前には小さくはなれめエ」「なにおッ」。調子に乗っ
た化け物は、とうとう小虫になった。猟師はつまみ上げ、火打ち箱
に入れてふたをしてしまった。夜が明けて、なかをみると、小さな
青グモが一匹転がっていたという。
・岩手県花巻市大迫町と川井村との境

▼559号 「東北・早池峰山の青グモ」

【本文】
いま東北の名山とうたわれる岩手県の早池峰山(1917m)も、太古
の昔はアジア大陸の東端だったともいわれています。この山は高山
植物ハヤチネウスユキソウでも有名です。

この山には次のような伝説が残っています。その昔、山の北麓に「ぬ
え」という名の猟師がいました。ある夜、猟師の前に大きな影法師
があらわれました。「なんだ、ノリコシの大入道か」。

ノリコシとは「ぬえ」が山でよく会うおなじみの化け物。驚きもし
ません。それにしても青くビラビラ光っています。すると化け物は
うなりました。

「オーッ、オレは青入道だッ」「おらに何の用だ」。ぬえがいうと、
化け物はそばまで寄ってきて、「退屈で退屈でしかたねえ、化けく
らべをすべエ」という。

「よしそれならお前からやれ」というと「なんに化けべエ」と青入
道。「お前は少しでかすぎるが、もっと小さくはなれまい」「なにお、
小さくなってやるッ」。

猟師の言葉に化け物は、青い煙をたてながらどんどん小さくなり、
猟師と同じ大きさになりました。

「まだまだ、だめだ。もっともっと小さくはなれめエ」「おお、小
さくなってやるともッ」調子に乗った化け物は、見る見る小さくな
って、とうとう小虫ほどになってしまいました。

猟師の「ぬえ」は、すかさず小虫をつまみ上げて、ホクチ箱(火縄
銃に火をつける火打ち箱)に入れて、しっかりとふたをしてしまい
ました。翌朝、箱のふたを開けてみると、なかには小さな青グモが
一匹転がっていたということです。

▼【データ】
【山名・地名】
・【異名、由来】:早池峰山(はやちねさん)・早池の泉(つねに清
水を八分くらいに湛えていて、甘みがあり、不思議なことに雨が降
っても水があふれず、ひでりになっても涸れないという。ところが
汚れた器で汲んだり、不浄を加えればたちまち水は涸れてしまう。
しかしお経を唱えて祈ればすぐに湧いてくるという。その感応の早
さから「早池峰」の名前がある)

【名山】
・深田久弥選定「日本百名山」(第14番認定):日本二百名山、日本
三百名山にも含まれる。
・田中澄江選定「花の百名山」(第27番認定)

【所在地】
・岩手県花巻市大迫町(旧稗貫郡(ひえぬきぐん)大迫町(おおは
さままち)と岩手県下閉伊郡川井村との境。JR花巻駅からバス・
河原坊から3時間20分で早池峰山。一等三角点(1913.61m)と早
池峰山神社奥宮と避難小屋がある。地形図に山名と三角点の標高と
神社の鳥居記号と避難小屋の記載あり。

【ご利益】
・【早池峰山神社奥宮】:災難除け・豊作祈願・作神

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・三角点:【緯度経度】北緯39度33分30.08秒、東経141度29分20.45


【地図】
・2万5千分の1地形図「早池峰山(盛岡)」or「高桧山(盛岡)」

【参考】
・「日本の民話・7」(妖怪と人間)宮本常一監修(角川書店)1973
年(昭和48)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
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