山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼529号 「上州笠ヶ岳ハイマツベッド」

【概略】
上州笠ヶ岳の小さな避難小屋は超満員。仕方なく雨の中、急斜面の
中のハイマツの上にテントを張った。付近はけもの道らしい。寝返
りを打つたびにテントがユラユラ。でも以外な寝こごち。結局朝ま
でぐっすり。人間どんなところでも寝られるものだ。
・群馬県みなかみ町

▼529号 「上州笠ヶ岳ハイマツベッド」

【本文】
谷川岳東面の好展望台・白毛門(1720m)。秋にはマチガ沢や一ノ
倉沢などの紅葉や新雪に目を奪われます。急坂を木の根に捕まりあ
えいで登ると急に展望が開ける松ノ木ノ頭。白毛門の山頂はもう目
と鼻の先です。

しかしその日はそうはいきませんでした。途中から真っ白なガスの
中。松ノ木ノ頭に着くころは雨が降り出しました。白毛門の山名の
もとになっているジジ岩・ババ岩あたりでは横なぐりの雨。

秋の日の短さは雨天のせいもあってか、4時前にはもう薄暗くなっ
てきました。あと小1時間頑張れば笠ヶ岳の避難小屋。きょうは平
日、まず誰もいないに違いない。早くついて暖かい夕食を作ろう。

刈り捨てたクマザサが坂道を登る足元をすべらせ、前に進ませてく
れません。やっとついた笠ヶ岳山頂。下ったすぐ近くにかまぼこ型
の小さな避難小屋があります。

ドアを開いて「……」。先着の若者4人ですでに満員。雨が一段と
強くなります。近くにテントの張る場所といってもあたりは急斜面。

あちこち探すうち、大倉尾根側に少し下ったところに「一見」平地
が。きょうはそこを宿泊場所と決めました。しかし一面のハイマツ。
しかたなくその上にテントを張りました。

ハイマツの上のテントは地面につきません。コンロの上のコッヘル
が揺れて、手で持っていなければ危なくてしょうがない。降りつづ
く雨。外で料理は出来ません。

それでも何とか夕食にありつけ、アルコールで体を温めます。寝袋
にはいるとハンモックのようにユラユラ揺れます。この付近は、ほ
そい小道らしきものがあり、どうやらけもの道らしい。

動物たちにとってはオジャマ虫。いや、申し訳ない。体が温まりそ
んな余裕も出てきます。寝返りを打つたびにテントがユサユサ。で
も以外に寝こごちがいい。

いつの間にか眠りに入り、結局朝までぐっすり。こんなテントに寝
たのも初めてでしたが、人間どんなところでも寝られるものと感心
しました。

・【データ】
【山名・地名】笠ヶ岳
・【異名・由来】:大倉山・大蔵笠・赤倉山。

【所在地】
・群馬県利根郡みなかみ町(旧利根郡水上町)。JR上越線土合駅
の北5キロ。JR上越線土合駅から白毛門経由4時間で笠ヶ岳山頂
(標高1852.1m)。三角点とその付近に避難小屋がある。そのほか
付近に何もなし。地形図上には山名と三角点の標高、避難小屋との
み記載。三角点より東北方向直線約65mに避難小屋がある。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【等三角点】緯度経度:北緯36度52分11.17秒、東経138度57分46.
67秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「茂倉岳(高田)」。5万分の1地形図「高
田−越後湯沢」

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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