山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼528号 「西丹沢バケモノ沢・荒廃林道のミラー」

【概略】
丹沢湖に注ぐ大又沢上流の地蔵平から北上するバケモノ沢。この支
流にある水晶が盗掘されないよう気味悪い名前をつけタブー化した
という。平行する林道は荒れ放題で大木の茂って薄暗い。割れかけ
たカーブミラーが、くもりかけた反射面に私たちの影を一生懸命映
していた。
・神奈川県山北町

▼528号 「西丹沢バケモノ沢・荒廃林道のミラー」

【本文】
西丹沢・丹沢湖(神奈川県)に西側から注ぐ大又沢上流にある地蔵
平があります。かつては沢の流域に集落があったが、関東大震災に
よる山津波に襲われ、集落は壊滅、多くの犠牲者が出たという。

村人はここに地蔵堂を建立し、犠牲者を供養しました。それ以来こ
の地を地蔵平というようになったという。この地蔵平から北上する
沢にバケモノ沢という気味の悪い沢があって、その左手の尾根上に
信玄平があります。

かつてここは、西丹沢・箒スギから山中湖方面へつづく、東海自然
歩道が通っていましたがバケモノ沢上流の水晶沢、戸沢、赤沢が崩
壊したため、いまでは畦ヶ丸を経由しています。

この支流の水晶沢では昔から水晶がとれたといいます。そこで盗掘
されないよう、バケモノ沢という気持ちの悪い名前をつけ、入って
はいけないというタブーをつくったともいいます。

その地蔵平から林道が二つに分かれ、右への道はバケモノ沢沿いに
北上しています。荒れぎみ林道をしばらく行くとセキノ沢にかかる
橋があります。

橋を渡ると、道は荒れ放題。大岩がゴロゴロ。崖が崩れて積もった
林道に生えた木がすでに大木になっていて、放ってあった年月がう
かがえます。

大量の予算を投じ労力をかけて造った林道、見捨てられてから幾星
霜。いままで何かの役に立ったのでしょうか。

大木の茂った薄暗い林道に何か光っています。見るとクルマ用のカ
ーブミラーです。くもりかけたミラーが私たちの影を一生懸命映し
ていました。

・【データ】
【山名・地名】
・【異名、由来】:かつて支流の水晶沢では水晶がとれたという。盗
掘されないよう気持ちの悪い名前をつけてタブーをつくった。

【所在地】
・神奈川県足柄上郡山北町。小田急新松田駅からバス丹沢湖下車歩
いて5時間でバケモノ沢。地形図に地名標高とも記載なし。付近に
何も記載なし。

【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【バケモノ沢】緯度経度:北緯35度27分17.07秒、東経139度00分5
0.89秒

【地図】
・2万5千分の1地形図「中川(東京)」

【参考】
・「イラスト丹沢・山ものがたり」とよた 時(山と渓谷社)1991年
・「丹沢・桂秋山域の山の神々」(佐藤芝明)(自費出版)1987年(昭
和62)
・「山の神の民俗と信仰」(佐藤芝明)(自費出版)1990年(平成2)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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山旅イラスト【ひとり画展通信】
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