山の歴史と伝承に遊ぶ 【ひとり画ってん】

山旅イラスト通信【ひとり画展】とよだ 時

▼473号 「中ア・南駒ヶ岳の五人坊主」

【概略】
南駒ヶ岳は駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)の南にある山。ここのカールの上
の稜線近くに「五人坊主」とよばれる変わった雪形が現れる。南へ
下ると奇っ怪な岩峰がならぶ仙涯嶺。ガスもあがり、道ばたにガン
コウランの実が熟している。甘酸っぱい実を口いっぱいにほおばっ
た。
・長野県飯島町と大桑村との境

▼473号 「中ア・南駒ヶ岳の五人坊主」

【本文】
中央アルプスのほぼ中央にある南駒ヶ岳(2841m)。かつては、木曽
駒ヶ岳から南へ走る稜線を竜に見立てて、「駒ヶ岳」といっていた
らしく、古い本にはいまの名前の南駒ヶ岳の記録はなく、駒ヶ岳と
してひとくくりにされているそうです。

南駒ヶ岳はその名の通り、駒ヶ岳(木曽駒ヶ岳)の南にあるからつ
けられた名前で、木曽駒が山岳信仰の山だったように、ここにも祠
が建っています。

山頂東面には中央アルプスの南端の氷河期の名残りのカールがあり
ます。夏になるとカールは高山植物が咲きみだれ、その水は断崖を
下り、「オンボロ沢」というおもしろい名前の沢に流れ込んでいま
す。

春先、カールの上の稜線近くに「五人坊主」とよばれる変わった雪
形が現れます。それは同じ間隔をおいた5つの黒い点で、伊那谷の
風物詩とされていて、村人の春の農作業(ダイズなどの種まき)の
季節の目安になっています。

山頂からさらに南へ下ると奇っ怪な岩峰がならぶ仙涯嶺(せんがい
れい)という場所。

ある年の9月、中央アルプス最北からの大縦走。仙涯嶺を過ぎるあ
たりからはりつめていたガスもあがり、道ばたに群生しているガン
コウランの実が熟しています。

さっそく、甘酸っぱい実を口いっぱいにほおばったはもちろんのこ
とでありました。

▼【データ】整理すみ
【所在地】
・長野県上伊那郡飯島町と長野県木曽郡大桑村との境。飯田線田切
駅の西11キロ。JR中央本線倉本駅から歩いて延べ14時間で南駒ヶ
岳。写真測量による標高点(2841m)がある。そのほか付近に何も
なし。山頂直下に摺鉢窪避難小屋がある。地形図上には山名と標高
点記号とその標高のみ記載。標高点より西方向直線約570mに摺鉢
窪避難小屋がある。

【位置】
・【標高点】緯度経度:北緯35度42分05.1秒、東経137度48分38.68
秒(誤差あり)(国土地理院「地図閲覧サービス」から検索)

【地図】
・2万5千分の1地形図「空木岳(飯田)」

【参考】
・「飯島町誌」(下巻)長野県飯島町
・「コンサイス日本山名辞典」(三省堂)1979年(昭和54)
・「山の紋章・雪形」田淵行男著(学習研究社)1981年(昭和56)
・「信州山岳百科・2」(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)

山と田園の画文ライター
イラストレーター・漫画家
【とよだ 時】

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